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今夜もしこたま犬に舐められまくった

Posted by 高見鈴虫 on 11.2012 犬の事情
夜の11時にドッグラン、
またしこたま犬どもに顔を舐められた。

クリスマス前だというのに異様なポカポカ陽気、
そんな陽気に当てられて夜の散歩に出た人々、
灯りの落ちた夜の公園に、
それこそワンさか犬どもが大集合。

そんな犬たち、こんな時間だというのに問答無用に元気。
さんざんにボール投げに付き合わされて、
ちょっと休憩とベンチに座ったが最後、
次から次へと犬どもが押し寄せてきて、
右から左から前から後ろから、
羽交い絞めにするようにして
やたらめったらと顔から耳から首から顎からうなじからを舐めまくる。
しまいには行列まで作って、
それにあぶれた奴は足元から抱きついてきて、
やいやい押すな押すなと俺の顔を舐める順番争いで喧嘩まで起きる始末。

なぜ俺がこれほどまでに犬どもに舐められなくてはいけないのか。
それは自他共に抱くなぞの中のなぞ。

以前、犬に顔を舐められるのは、
もしかして口が臭いからではないのだろうか、
と考えてみたことがあった。

確かに、歯を磨いた直後にブー君に口を寄せると嫌そうな顔をする。
ならば、顔中を舐められるということは、

風呂に入ってない、あるいは脂性で浮き出た脂汗を、
おいしいおいしい、しょっぱいしょっぱい、と舐めているわけか、
という仮説を立ててみたのだが、

今日という今日はそんなことは言わせない。

今日の俺は、風呂に入って来たんだよ。
そして、当然のことながら、下着からシャツからジャケットから、
すべて洗濯したてのフワフワ状態にもかかわらずだ、

犬どもと来たらそんなことお構いなしに、
泥だらけの足で飛びつき絡みつき、
膝に乗り上げ頭に足を乗せ、
挙句の果てに顔の前に尻をこすり付けてきたりもする。

あのなあ、お前ら、俺をなんだと思っているんだ。
洗濯代だって馬鹿にならないんだぞ、
と言いながら、
犬の身体についた泥をせっせと撫で落とし、
口元を舐められながら、口の中に指を突っ込んで、
ふむふむこいつは虫歯はないか、とさりげなくチェック。
身体中、背中からお腹からを撫で回しては、
やせすぎていないか、太りすぎていないか、痛いところはないか、
とついつい診てしまうのはこれも性分というもの。
しまいには、向けられたお尻の穴を覗き込んで、
あれ、お前、そろそろ肛門腺絞ったほうがいいぞ、
飼い主に言っておいてやるから、と、俄かの健康診断。

顔中にこれでもかと擦り付けられた唾液が顎に滴り、
頭の上に顔を乗せた犬どものよだれがこめかみを伝い、
ジャケットは泥まみれ、ズボンはそれ以上、
大きいのから小さいのから両手両足に犬どもを抱え込んで、
おらおらお前ら喧嘩するな、好きなだけ舐めさせてやるから、
とため息をつく夜。

という訳で12時近く。

やれやれ、犬に好かれる、というだけで金になるのなら、
いつまでだってこの場にいてやるのにな、とは思いながらも、
さあおいで、帰るぞ、と立ち上がったとたん、
そんな犬どもがいっせいに俺の後について出口の前まで来てしまった。
一緒に飼い主たちもあわてて帰り支度。

さっきまで犬でいっぱいだったドッグランが、あっという間にもぬけの殻。

はいお座り、とやったとたんに、目をらんらんと輝かせた犬たちが、喜び勇んでお座り競争。
この隙に、と身体にリーシュをつける飼い主たち。
いつもながら、お見事さまでした、と拍手もちらほら。
ハーメルンの笛吹き男、ではないが、72丁目の犬男とはまさしく俺のことか。
あのなあ、このぐらいのことで金になるのなら一生でもやっててやるけどね。

という訳で、ようやくブー君と二人きりになれた交差点。
やれやれ、見てくれよ、全身泥だらけだよ、と苦笑いの俺に、
ブー君でさえ呆れ顔。

なんか、くさいぞ、あんた。帰って風呂はいったほうが良くないか?
あのなあ、俺、風呂はいったばかりなんだぜ。
そのよだれだらけの身体で俺の家に入ってほしくないもんだよな。
やれやれだな。

という訳で12時過ぎ。
明日も朝早いんだよな、と思いながらも、
シャワーを浴びたとたん、足元で砂がざらざらと音を立てた。

やれやれ、これで金になるのなら一生でもやってやるのにな。
安易な才能はなかなか銭とは結びつかないもので。

という訳で、ブー君、寝るよ、と一言と同時に、
濡れた髪のままベッドに倒れこむ俺であった。

プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾年月。
世界放浪の果てにいまは紐育在住。
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

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