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雨のBERCLAYS CENTER 男同士のツーショット

Posted by 高見鈴虫 on 12.2013 ニューヨーク徒然   0 comments   0 trackback
金曜の午後、そろそろ仕事も落ち着き、
さあ、今週末はなにをしようか、
久しぶりに誰かに連絡でもしてみるかな、
と思っていた矢先、
ふと私用の携帯にテキストのメッセージ。

さてはまたかみさんが、
友達とご飯に行く事になって、ブー君の散歩お願いね、
みたいなことかと思ったら、

あれ、なんだこれ、と友人のPAULからのメール。

BBNETS TONITE?

おお、BROOKLYN NETSか。

そう言えばあいつ、シーズンチケットがどうのこうのって言ってたよな。
と思っていたら、

Y or N?

という訳で、取り急ぎ SG とだけ。

K 730 CU@SB

という訳で雨の金曜の夜、
いきなりBROOKLYNのBERCLAYS CENTERでNETSの試合を見ることになった。




BarclerysCenter.jpg


なあにあいつのことだどうせ遅れるだろう、とたかを括っていたら
なんと時間通りのご参上。
しかも、おっと、仕事帰りでスーツ姿と来た。

なんだよ、お前のスーツ姿初めて見るぜ。
で、元気か?正月どうだった?
なんて挨拶もそぞろに、
急げ、飯食おうぜ、と走りだす。

おいおい、この行列だぜ、急いだって変わらねえって、
と渋々後を追うが、いきなり入り口までの長蛇の列を全てスキップして、
先頭の係員によお、と一言、そのままバッグチェックもチケット切りもスキップしてご入場。

BERCLAYS CENTERは先日のデイブ・マシュー・バンドを観た時から2回目。
いまだにこの新品の建物が目新しくて、あちこちをキョロキョロしていたら、
おい、こっちだ、こっちだ、と腕を引かれながらたどり着いたのはVIPラウンジ。

腹減ったろ?なんでも食えよ、全部ただだぜ。

という訳で、最近初めていたダイエットもぶっちぎり、
いきなり、ブルックリン名物のオンパレード。

ホットドッグからチリからハンバーガーから厚焼きピザから
山盛りのナッチョにざく切りフレンチフライからフィッシュ・アンド・チップスからローストビーフまで。
つまりダイエットの逆を行く反健康的ジャンクフードのてんこ盛り。

普段はかみさんの手前、見向きもしない、風に見せかけてるジャンクフード。
もちろん本当は大好物。

この時とばかり思わずお代わりを繰り返しては、これが全部ただ?食い放題?まるで天国だ!

おいおい、いったいこれどうしたってんだよ。なんかファーストクラスラウンジって感じだな、
なんて今更ながら目を白黒。

いい加減、ズボンのボタンがはちきれるぐらいまで食いまくって、
それでも足りずに皿いっぱいにホットドッグとナッチョスを盛り上げて、

おい始まるぜ、さあ行こう、と駆け下りる会場の階段。

おいおい、どこまで降りるんだよ、と行っているうちに、
なんとコートサイドのすぐ後ろじゃねえか。

という訳で、NBAの試合をこんな特等席で観るのも初めてながら、
もう、ピザとホットドッグとフライとハンバーガーで腹もパンパン。

タイムアウトにチアリーダーが登場するたびに口笛を吹き鳴らし、
客席をカメラがパンする度に大騒ぎ。

なんか楽しい。本当に楽しい。思わず笑いが止まらない。

こんなにはしゃいでいる自分はまったく久しぶりだ。
こんなに笑っている奴らに囲まれるのは本当に久しぶりだ。

で、あらためて凄いな。
まあ消化試合だからな。さすがにPHOENIX・SUNS相手ではチケットが売れなくてよ、
の言葉どおり、試合はNETSの圧勝モード。

シュートが決まる度に飛び上がってガッツポーズ。
そのまま前の奴とも後ろの奴ともHIGH FIVE!

なんか俺たち凄く幸せそうじゃねえか?

という訳で、コートをバックに思わず二人並んで記念撮影。

男二人の2ショット。なんか妙だな、そういうの。

BROOKLYNいいな。
ああ、BERCLAYS CENTERは本当に良いよな。
BROOKLYNにこんな場所ができたなんて、本当に凄いことだ。
ああ、本当の本当に凄いことだ。
働いている奴らもなんか違うよな。
ああ、あの係員たち、観ろよ、あんなにかしこまってさ。あたかもプライドを持ってるみたいだぜ。笑わせる。
プライド持ってるんだよ、この場所に。なんてったってBROOKLYNだからな。
ああ、もうマンハッタンまで行かなくていいんだからな。そりゃ嬉しいよ。
BROOKLYNもついにやったな。
ああ、NETSもPLAYOFF行けそうだし、また儲かるぜ。
いい投資だったな。
ああ、BROOKLYNに賭けて良かったぜ。
ああ、BROOKLYNで本当に良かった。

という訳で改めて会場を見下ろすバーのカウンター。
二人ともスーツ姿でなんかちょっと偉そうだ。

夢だったんだよ。こうしてBROOKLYNでさ、コートサイドでビール飲みながらNBA観るのがさ。
実現したじゃねえか。
ああ、長い道のりだったぜ。
お前もBROOKLYNもな。
そうそう。俺とBROOKLYNの腐れ縁もようやくここまで漕ぎ着けたってことだよな。
なんかお前、ストック・ホルダーのVIPみたいだぜ。
シーズンチケット・ホルダーのVIPなんだよ、俺は。
偉くなったなあ。
ああ、そういうお前も今日はなんか偉そうだぜ。

という訳で通りかかったウエイターに頼んで改めて2ショットの記念撮影。

考えてみると、奴とはもうかれこれ20年近くの付き合いだ。
90年台の初頭から、タンネルだ、ネルズだ、サウンドファクトリー・バーだ、
と夜の街を朝まで駆けずり回った遊び仲間。

とは言うものの、昼の生活はといえばお互いにドン底のその底。

ジャマイカ生まれのPAULは、
幼い頃にブルックリンに移住はしたものの、
その直後に父親は蒸発。お決まりの母子家庭で糧は生活保護。
頭は良いつもりなのだがなにしろジャマイカの移民、つまりは黒人。
その後、ブルックリンにさえ居られなくなって
ハーレムのプロジェクトからブロンクスの集合住宅に転がり込み、
と流転を続けながら、なんとか大学までは出たものの、
思った通りその後は泣かず飛ばず。

黒人だからな、大学なんて出たってろくな仕事なんてねえんだよ、を口癖に、
結局、ろくに仕事を探そうともせず、かみさんの収入を宛てにする半ジゴロ暮らし。

仲間内から、お前もそろそろセトルダウンして、と言われるたびに、
俺は黒人だからな、なにをやったってダメさ、と皮肉に笑うばかり。

そんなこんなで911。

不安な夜に集まった友人のフラットで、
果たして俺たちの行く末はどうなってしまうのか、
まあとりあえずは互いに助けあってだなあ、
なんて朝まで語り明かしたり。

俺も日本からの移民、お前もジャマイカからの移民。
お前は市民権はあるが黒人で、
俺は俺で日系会社にぶら下がるばかりの現地雇い稼業。

深夜の地下鉄のホームで背中を丸めながら、
なんか俺たち、このまま取り残されていくんじゃねえのかな、
なんて顔を見合わせながら、目の前でゴミ箱を漁るホームレスを見て思わずヘラヘラ笑い。

大丈夫だろ、お前だって大学出てるしさ。
ああ、お前も試験勉強がんばれよ、なんてね。
と言いながら、いつまでたってもいたずらに年の瀬を重ねるばかり。

ニューヨークだよな。
ああ、いつか、なんとかしてこの街を脱出するんだ、と思ってたんだけどな。いまだに籠の鳥だ。
でもまだこうしてニューヨークで生き延びている。
俺にはニューヨーク以外には行く場所がねえからな。この街は俺にとっちゃあまさに監獄だぜ。
くそったれ、宝くじでもあたらねえかな。
タクシーにでもあたった方が早いんじゃねえのか?

これまでそんな会話をどれだけ交わしてきたことか。

という訳で、2013年の1月。

どういう風の吹き回しか、
俺たちはいまこうしてBROOKLYNに建った新品のスタジアムのVIPラウンジ。

長かったよな。
ああ、ちょっと長すぎたがな。
が、しかし、まだこうしてニューヨークで生きている。
ああ、NETSもPLYAOFF行けそうだしな。
嬉しいね。
ああ、本当に嬉しい。こんな瞬間が俺の人生に訪れるなんて、まさに・・・夢みたいだ。
このBERCLAYS CENTERにいるほとんどのBROOKLYの奴らがそう思っているんだろうな。
ああ、そうなんだよ。そう、みんなそう思っているんだよ。
なんて素敵な場所なんだ。
ああ、ここに来る度にそう思うぜ。ついにやったな、ってさ。ここは俺たちの場所だ。俺たちが作っていく場所だ。
BROOKLYN万歳。
BROOKLYN万歳。

千鳥足で歩く地下鉄のホーム。

YO!なんかさ、俺たち、ちょっとした成功者みたいじゃねえか?
成功者?よく言うぜ。成功者なら地下鉄になんか乗らずにリムジンにでも乗ってるだろう。

そんな俺達の前をゴミ箱を漁るホームレスが一人。
おい、おっさん、と一言。
ほら、これで美味いものでも食えや、と、思わず5ドル。
なら俺も、ともう一枚の5ドル。

そんな紙幣をゴミ袋の中に無造作にねじこむホームレス。
二人顔を見合わせて苦笑い。

お前、この街が監獄みたいだって言ってたよな。
ああ、それはお前が、この街は宝石箱みたいだ、って言うからさ。
で、どうなんだよ。
え?なんだって?いや、俺にとっては今も昔もこの街は監獄さ。
マイアミにでも行くか。
なんのために?
新天地を目指してさ。
馬鹿言うんじゃねえよ。せっかくここまでやって来たのに。
だろ?ならもうニューヨークは監獄じゃねえよ。
ああ、この街以外には俺は行く場所がねえからな。
俺もそうだ。もうどこにも行けないし行きたくもねえ。
おい、次の休みにマイアミに行かねえか?
車でだろ?
そう、車。JETBLUEじゃねえ。車で行くんだよ。
だったら早く免許を取れよ。
なんだったらリムジンでいってもいいんだぜ。
ヘリコプターとかな。
ああ、自家用ジェットとかな。
先は長いな。
ああ。まだまだ長い道のりだ。

14丁目についたところで、ふとネルズにでも行くか?と呟いて、そして二人で笑った。

お互い皺が増えて薄くなった頭。
こいつも、そして多分おれも、すっかり歳を取ったもんだ。

今年はテニスをやろうぜ。教えてくれ。
ああ、夏になったらUSOPENも見に行こう。
学校にでも行って資格でも取るかな。
その前に免許取れよ。
ああ、マイアミだもんな。
ああ、キーウエストにも行こうぜ。久しぶりにも潜ってみたいし。
俺、泳げねんだよ。
ああ知ってる。ジャマイカ生まれの癖にな。
この街じゃあ黒人はプールに入れないんだよ。
コニーアイランドで泳げばいいじゃねえか。
お前、昔もそう言ったぞ。
水泳教室にでも通うか。
ああ、ジムにも入ろう。
偉そうに。
お前こそ。

という訳で、俺は72丁目で地下鉄を降りた。
じゃな、NFLのPLAYOFFを観るなら電話してくれ。一緒に見ようぜ。

雨の交差点を見上げながら、くそったれ、久しぶりにいい夜だったな、と思った。


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プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾年月。
世界放浪の果てにいまは紐育在住。
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

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