Loading…

ブッチ血便騒動 その1 「予兆」

Posted by 高見鈴虫 on 13.2013 犬の事情   0 comments   0 trackback
まただ。
夜中の4時に起こされた。

さっきからそわそわと居間と寝室の間をうろついているのは気がついて居たのだが、
どうせまた、ボールどこ?やら、お腹が空いた、なんてこと。
まあそのうち諦めて寝るだろう、
とそのまま放っておいたのだ。

が、なんとなく今夜のブッチは違う。
そのうち、クンクンと鼻を鳴らし初めて、
ついに意を決したように、ねえねえと肩を揺すりはじめ、

その時になって、
え!?どうした?

と飛び起きた時にはすでにうぐうぐうぐと喉を鳴らし始めていた。

思わず顎の下に差し出し両手の受け皿、
ぐえ、っと吐き出した未消化の夕食のかたまりがみるみる溢れていく。

買ったばかりのベッドの上にゲロのしずくを滴らせながら、
そのままトイレに飛び込んで、
両手いっぱいのゲロをトイレの中に落とし込んだ時には、
ブッチは既にベッドを飛び降りて玄関の前。

なんだ、次は下痢か?

ヤバイと手を拭うのも忘れて散歩用のズボンを探すが、
あれどこ行っちゃった?とやっている間に、

バカ! だから裸で寝るなっていってるのに、
と怒鳴ったかみさん、

パジャマがわりの薄手のスエットの上から、ダウンのコートを羽織ったまま、
裸足の足をそのままブーツに突っ込むや、
ブッチ、おいで、とそのまま外に走り出て行った。

あのなあ、夜中の4時だぜ。
しかも俺、ついさっきまで本読んでて、いま寝付いたばかり、なのに・・・

で、まっいいか、あいつが行ってくれたし。
うんちさせたらすぐに帰ってくるだろ。
わざわざ俺が行くことはないか、

とそのまま眠ってしまいそうになった時、

いきなり、おい、と耳元で声がした。

なんだなんだ!?と飛び起きたが、
勿論のこと、深夜の寝室、辺りに人影があるわけがない。

なんか、おい、ってより、オン、
でかい犬の吠え声みたいだったが・・・

と思ったとたんに、なんとなく嫌な予感・・・

まさか、あいつら大丈夫だろうか・・・

慌てて羽織ったジャケット。
ようやく後を追って走り出したが、
いきなり目の前には分厚い白い霧。
72丁目の左右をどう目を凝らしても、
犬の姿どころか信号の灯りさえも届かない。

取り敢えず多分、リバーサイトの公園だろう、
と走り込んだのは良いが、
真夜中の公園は霧雨にどっぷりと沈んで深い靄の底。

くっそ、なんにも見えやしないじゃないか。

いくらニューヨークが安全になったとは言え、
さすがに女一人でこんな中を彷徨っているのはまずかったかもしれない、
と必死で携帯を鳴らすが返答はなし。

思わずいつもの合図の口笛を霧の空に向けて吹き鳴らす。

頼むブッチ、俺はここだ!気づいてくれ!

としばらくして霧の奥からタラタラと響く軽い足音、
え、どこだどこだ、とやっていたら、
いきなり霧の中から飛び出してきた白い塊りが胸の中にドンと飛び込んできた。

おおおブッチ、偉い偉い!
なんだよお前、下痢じゃないのか? 元気そうじゃないか。

さかんにじゃれついていたブッチ、
いきなり、あれ? と首を傾げると、
あ、そうだそうだ、忘れてた!
と、そのままUターンをして霧の遊歩道を走り出すブッチ。

慌てて後を追うと、誰もいない公園のベンチに、
髪を振り乱したままのかみさんがひとり、忽然と座っているではないか。

ホームレスっていうよりこれでは完全な幽霊だ。

凄い下痢なのよ。
なんか水みたいで。
お医者に見せようとしてとっておこうとしたんだけどすぐに染み込んじゃった。

こいつまたいったいどうしたのか、
っていうよりも、
もしかして、俺たち早くここでないとまずいよ。
変な奴だったらまだしも、
警察に見つかったらそれこそ職質受ける前に撃たれるかもしれないぜ。

とかなんとか言ってるそばから、
足元で踊り回っているブッチ、
罰当たりにも、
さあボール投げろ、と勝手にフェンスを飛び越えて芝生の中に走り込んでいる。

大丈夫じゃない?こんなに元気なんだから。
そうね、ああ眠い。
倒れそうだ。この場で寝たい。

と足を引きずりながら歩き始めた俺たちの後ろから、
あれあれ、どうしたの?ボールはまだかな?
とはしゃぎ回る犬一匹。

やれやれ。。

さすがにそんな犬を振り返ることもなく、
夜露に濡れた公園をとぼとぼと引き返すのであった。


  • password
  • 管理者にだけ表示を許可する

trackbackURL:http://shumatsuwotohnisugit.blog.fc2.com/tb.php/1135-62075e76

プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾年月。
世界放浪の果てにいまは紐育在住。
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

©終末を疾うに過ぎて...
無断丸々転載・そのまま転写はご勘弁ちょんまげ

月別アーカイブ

検索フォーム