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Zero Dark Thirty を観てきた

Posted by 高見鈴虫 on 03.2013 読書・映画ねた   0 comments   0 trackback
遅ればせながら、ゼロダークサーティを観てきた。
午後のスーパーボールまでの時間つぶしのつもりだったのだが、
スーパーボールへの気持ちが削がれてしまうぐらいに、
完全に持っていかれてしまった。

重い映画だった。

宿敵オサマビンラディンを倒すの行け行け戦争ヒーローもの、
と思いきや、
そこに描かれていたのは、2001年9月の雲ひとつ無く晴れあがった朝から始まった、
あの暗く長いトンネルの話。

アメリカという国が、猜疑心と自己欺瞞と分裂と不安恐怖症と、
抗鬱剤の濃霧の中で息を詰めていたあの時代。

アメリカ人がアメリカ人であることにとことん嫌気がさしたあの時代。

先の見えぬ戦争。
繰り返されるテロ警報。
嘘ばかりのニュース。
訳もわからずはしゃぐ百姓。
共和党基盤を支える無知と貧困とキリスト教原理主義。

映画には極力描かれていなかったが、
あの期間、いつも頭の上からは、
ジョージブッシュの百姓ヅラの悪魔の高笑いが響き渡り、
バーバラブッシュのあの焦点のずれた瞳が、「神に祈りなさい」と繰り返していたのだ。

映画はあの時代の陰鬱な苛立ちを見事なぐらいに思い出させてくれた。

話題になった拷問シーンも、あの時代を生き抜いたニューヨーカーにとっては
ショッキングどころかただただ忌々しいだけだ。
むしろあんなものを喜ぶ安易なゲテモノ趣味こそが
ジョージブッシュを支えた基盤であったこともよくわかっている。


というわけでこの映画だ。

何よりも哀れに思えたのは、オバマが大統領に代わり、
アメリカがようやくあのブッシュの暗黒時代から解放された後も、
あの時代を引きずらざるをえなかった事件の当事者の人々の苦悩だ。

あの戦争の虚しさ、重さ、苛立ち、悲しさ、を一生引きずらざるを得なかった人々。

つまりそこで、冒頭のシーンの意味が重さを増して行くのだ。

2001年9月11日の、あのワールド・トレード・センターで死んだ者達、
あるいは、家族や恋人や、大切な人を失った人たちにとって、
今や誰からも忘れられようとしている、あるいは、忘れたがっている
あの忌まわしい気持を引きずらざるを得なかった人々にとって、
オサマ・ビン・ラディンという人物がなにを象徴していたのか。

そして最後のシーン、
誰もいない軍用機に一人乗り込んだマヤの流す涙がそこにつながるのだ。

あのマヤの流す涙の意味するものを知り抜いていたニューヨーカーたちは、
映画が終わってしばらくは椅子から立ち上がることができなかった。

改めていう。

2001年以前にこの国にやってきたものと
2001年以降にこの国にやって来た人間は基本的に違う。

つまりあの映画が終わったときにさっさと席を立てたのは、
2001年以降の人々だ。
つまりあの戦争の本当に意味するものがまるでわかっていないのだ。

という訳で本題である。

オサマビンラディンは海に捨てざるを得なかったのだ。

世界中からどれだけ非難されようと、
あの人間の死体だけは海に捨てた!と言わざるを得なかった。

その本当の意味がこの映画にはある。

目的を果たし、ようやくあの10年以上に渡る長い長いトンネルを抜けたマヤが、
行き場所を失ったまま流す涙の意味がまさしくそれなのだ。

あわよくば、
ジョージブッシュとディックチェイニーと
ラムスフェルドとカールローブとポールソンの射殺したいも
一緒に海に捨ててくれたらな、と思ったのは俺だけではないだろう。

あいつらの死にざまを見ない限り、
アメリカは神も悪魔も信じる気にはならないに違いない。

良い映画だった。
誰かが撮らなくてはならず、
それを撮った者は必ず逆恨みを買い、
しかし、誰かがその憎まれ役を買って出ないことには、
あの戦争が残したものがなんだったのか、
誰にも理解されないではないか。

2時間半という長い映画が終わって、
あああ、面白かった、と伸びをして、
そしてにこやかに光の中に歩き去っていくカップル達の後ろで、
あの戦争を忘れられない人々が、そっと涙を拭っていたことを知る人はいないだろう。


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プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾年月。
世界放浪の果てにいまは紐育在住。
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

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