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春はまだか

Posted by 高見鈴虫 on 12.2013 ニューヨーク徒然   0 comments   0 trackback
「地下鉄の臭気」

凍てついた2月の狭間に、
いきなり転がりこんで来たこのぽかぽか陽気。

なんか今日はやけにお尻の綺麗な子が多いな、
と思っていたのだが、
そうか、この陽気に宛てられて途端に短くなったコート、
その裾から覗くまん丸いお尻たち。
つまり久しぶりのご対面な訳だ。

ラッシュを過ぎた地下鉄、
空いた車内にちらほらと覗く形のよい、
ちょっと大きめのお尻を見比べながら、
一番端のドア側に座って手すりに寄りかかってうつらうつらしていたところ、
42丁目グランド・セントラル駅からいきなりとんでもない怪物が乗ってきた。

ちょっと盛りを過ぎた感のある小太りの東洋系熟女。
まるで仮面ライダーのような巨大な白いサングラスをかけ、
一目でヅラだと判るピンク色のワカメちゃんカット。
足元にはまさにロンドンブーツを思わせる金色の極高のハイヒールのブーツ。

が、しかし、問題は実はその下。
丈の短い真っ赤なダウンジャケットの
その下には上下ともにユニクロのヒートテックを御着用されているのだが、
このヒートテック、当然のことながら肌に密着するピチピチ仕様。
ダウンジャケットの下から覗いた下半身が、
まさに地肌に張り付いた黒いタイツを通してまるっきり丸見えな訳である。
下着の線、というよりもこれは明らかにノーパン。
お尻の割れ目から皺からたるみから、
挙句の果てにあそこの縦筋からがくっきりはっきりと見えてしまっている。

最初はぎょっとした物の、
いやいや拙者とてニューヨーカーの端くれ。
この程度のことで狼狽えるのもしゃらくさい、
としかとを決め込んでいた訳だが、
そのご婦人、耳に突っ込んだイヤフォンからの音楽に合わせて
まるでキャットウォークを踏むように乗り込んできた訳だが、
こともあろうに、俺の座った座席のすぐ脇のドアの横にすっくとお立ちになられた。
結果、手すりに持たれかけていた俺の頭に、
彼女のお尻がもろに、むにゅーっとばかりに押し付けられることになった。

おいおい、これはちょっと、とは思ってみたものの、
それはそう、拙者とてニューヨーカーの端くれとやはりしかとを決め込んでいた訳だが、
イヤフォンからの音楽に揺する身体につられてぶよぶよと動くそのたわわなお尻。
なんだかんだ言ってなんとなく心地がよいな、などと思っていた所、
ふと、むむむ、と異変に気づいた訳だ。

なんとなく臭うぞ、このお尻。

最近ダイエットを初めてからと言うもの、まるで針のように研ぎ澄まされた俺の嗅覚が、
こともあろうにヒートテック一枚を通したこのお尻のそのものの匂いをキャッチしてしまった訳だ。

それはお尻、というよりもまさに、肛門の匂い。
露骨な便臭に加え直腸から分泌されるあのなんとも言えないすえた匂い。
とそれに加え、
つんとくるアンモニア臭の中から、どうにもこうにも生臭いような、
あるいは酸っぱいよう蒸れたような、
つまり遠い昔にどこかで嗅いだことのあるなんとも言えぬ妖しい香り。

これはまさにずばり言ってあそこ、つまりは、膣の臭いなわけである。

ここまで来てさすがに、おっとっと、と引かざるを得なくなった。

若い娘だったらまだしも、あるいは好きな子であったらそれはまさに珠玉の香水にもなり得る訳だが、
こんな場合、つまり地下鉄で乗り込んで来た見ず知らずの、
しかも若くも美しくもない頭のはじけたおばさんの、
それも、言わせて貰えば、この人、少なくとも2日3日は風呂に入っていないように思われる。

この後に及んで、なんで通勤途中の地下鉄の中で、
よりによってそんな物を鼻先に押し付けられなくてはいけない訳なのか。

が、しかし、それはそう、拙者とて男の端くれ。
上げ膳据え膳、武士の名折れか、とばかりに、
いやいや、そうそう、若い頃はこんなものにでさえ興味しんしん。
とりあえずはなににも増してまずは経験。
機会さえあればババアであろうがロリータであろうが、
デブであろうがブスであろうが取り敢えずは押し倒してみて話はそれから、
とやっていた頃には、
そうそんな頃の、うへえ、ハズレ引いちゃったな、それにしてもこの女、臭すぎ、
がしかし、ここまで来てできません、では済まねえしな、
が、ほら見ろよ、この女、もう完全スイッチ入っちゃって、もはや乗り乗りだぜ、
いやはや、まいったな、
などとやっていた頃の、あの妖しい感覚をまざまざと思い出した訳だ。

そうなんだよね。あの頃も、
なんだよこのアマゾンの原住民のような女、
豚まんじゅうのような顔をまっかに膨らませたブス、
大きさだけは一丁前ながら、
ボタン餅のようなボワボワと掴みどころのない胸と、
黒ずんだ乳首、は予想どおりにしても、
今や指の先から髪の中から耳の後ろから、
濃厚に漂うこの見知らぬ生臭い匂い。
おいおい、お前、何が悲しくてこんな女に必死こいて腰振らなくちゃいけない訳?
とつくづく悲しくなってきながらも、しかしそれが生命の神秘というやつか本能のなせる技か、
もっともっと、無茶苦茶に逝かせてデロデロの汗みどろの中で、
もう参りました、あなたなしにはもう生きていけません、
と言わせるまではやめるわけにはいかない、やめずんばか。

そう、あの頃俺は若かった。
そんなものにプライドさえも感じていたのだ。

という訳で朝あの出勤途中の地下鉄の中である。

過ぎ去りし煩悩の日々を思いながら、
果たしてこの女と俺はできると思うか、という疑問の中で、
いや、多分、もういい、と思わず苦笑い。

そう、俺も経験を積んでしまったのだ。
つまり、その先にあるものさえなんとなく予想が着いてしまったりする訳で。
しかも、だ、
言わせて貰えばこの女。
もしかして、ではなく、たぶん確信を込めて日本人。

しかしも、だ、
そのすえた体臭の中に、紛うこともなく漂う露骨な黒人臭。
あの古い機械油のような据えた匂いにまじって、
腐ったイカの燻製の臭気がガツンと後頭部を殴られるような強烈さで臭って来る訳である。

黒人の身体に溺れる私はもう半分黒人、という訳か。

そんな女がこの先に辿るであろう結末さえもスラスラと予想ができてしまったりもして、
いやはや、そんなものに付き合わされるぐらいならば、
そんな女が無茶苦茶に弄ばれる様をHビデオで眺めていた方がなんぼか面白そうな気もする訳だ。

なんてことを考えながら辿りついた会社。
席につく前に寄ったトイレ。
チャックの中から一物を取り出した途端ぷんと漂うイカの匂い。
おいおい、お前もか。
そのほのかな香りの中に、俺もなかなか若いじゃないか、とちょっと安心した気もして。

くっそ、あの女どうしてるかな。久しぶりに電話してみようかな、
などと不穏なことを考えている朝であった。

春はまだか。


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プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾年月。
世界放浪の果てにいまは紐育在住。
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

©終末を疾うに過ぎて...
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