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「ボブマーレー」

Posted by 高見鈴虫 on 22.2013 音楽ねた   0 comments   0 trackback
ボブマーレーの憂いを含んだ歌声を聴くたびに、
ジャマイカのスラムに生きるやるせなさ、

というものよりは、

無茶苦茶にこき使われるバンドマンの
終わりなき巡業の旅への嘆きを歌っているような気がしてならないのだが。

ああまた移動か。
着いて楽器の搬入して
組み上げてマイクチェックとリハ。
終わって本番まで軽食済ませてちょっと一息。
本番前に楽屋で衣装合わせをしながらくだらない冗談を言っているうちに
ほらよと背中を押されてスポットライトのど真ん中。
フライパンの真ん中で豆でも炒るように弾け飛び飛ばされて、
アンコール2回も含めて終わりまであとどのくらい。
それは昨日と一昨日とその前とそのずっと前とまったく同じ構成。
あれそう言えば昨日も一昨日もこのパートで同じことを考えていたな、
と歌の内容とはまったく違うことを思いながらなんてくすっと笑ったりして、
おっとそうそうそう言えば次の展開から新しい展開を試してみることになっていたな、
と顔を上げると、ふと同じことを考えていたかのように目が合うメンバー。
示し合わせたように笑い合いながら、
あいついったいなにを考えて笑っているのかな、などと思わずまた笑ったりして。

という訳でまたいつものおきまりの熱狂とともにステージが終わる。
気分の良い日もあるが悪い日もある。
出来の良し悪しと気分の良し悪しはまるで違うということが判っている以上、
そんな気分の上がり下がりももはや気にすることもなく。

でようやく灯りが消えて着いて12時近く。

汗の滴る衣装を脱ぎ去った後は力の抜けきったまま
スカスカになった身体のままで片付けをやって搬出済ませて1時過ぎ。
その後ようやく打ち上げがてらの深夜の晩飯。
酒を飲みながらだらだらしているうちにホテルに着いたら3時過ぎ。
暗い廊下から部屋のドアを開けようとすると、
どこぞの部屋から女たちのはしゃいだ声。
やれやれあいつら本当によくやるよと思いながら、
ドアの開けた途端に暗い部屋の中からるるると鳴る電話のベル。
いや俺ちょっとまじで疲れているから、の一言が言えずに
ああ何号室だっけ?と言ってしまってまた元の木阿弥。
荷物を下ろしたまま灯りもつけぬままにタバコ一箱持って、
おおここだここだ、と開けたドア。
タバコとガンジャの煙に霞がかった空気。
よおよおよおと入った時にはすでに奴らはベッドの上でことの最中。
手持ち無沙汰のまま、揺れるベッドに背を向けてタバコに火をつける。
ところでここはなんて街だったっけかな。
どころでこの娘達はなんて名前だったけかな。
などと思っていたところで、
ほい、と肩を小突かれて、お前の番だよ、好きなの取りな、
と火を着けたばかりのタバコを取りあえげられて。
そのままなんだかんだで昼近く。
ようやく寝付いた頃に叩き起こされて、
さかさかシャワー浴びて荷物まとめてまたバンに乗り込む。
どこがどこやら今日が何月何日か
自分がどこにいるのかなにをしている挙句に
ふと気がつくとステージの上。
いまどの曲をやっているの構成のどのあたりかもすっかり失念したまま
ただただ身体が勝手に動いているこの不思議。
ふと気がつくとまた移動。
バスの窓から見知らぬ街を眺めながらうつらうつら。
着いて搬入リハから本番。
アンコール片付け搬出仮眠移動を繰り返す日々。

という訳でボブマーレイである。

そんなやるせない巡業の旅を続けながらも
来る日も来る日も気を抜かず手抜きもせず切々と魂の歌なんてのも歌い続ける。
挙句に死の直前までステージに立っていた、
なんてまったく凄い。

ステージへの熱情というよりは、
嫌と言えない事情に押されてのこと。
これはまさにコーヒー農園の農奴たちと大差ない。
つまりこれ全てジャマイカ生まれの悲劇な訳である。

ああトレンチタウン・ロック。


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プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾年月。
世界放浪の果てにいまは紐育在住。
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

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