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健康診断だって

Posted by 高見鈴虫 on 22.2013 ニューヨーク徒然   0 comments   0 trackback
先の週末、代休を貰ったついでにどうせならと健康診断に行ってきた。
健康診断は実に2年半ぶりである。

犬の健康診断は年に2回も行っているのに
飼い主がいざ自分のこととなるとやたらと面倒くさい。

俺は大丈夫。ちゃんと口もきけるし、
痛いところがあれば自分で判るから、などと言っていた訳なのだが。

と言う訳で代休のついでにと出かけた健康診断。
で、やれなんだかんだと身体中をまさぐられた挙句、

あれまあ、あんたやっぱり、アトピーだよ、と言われた。

アトピー?アトピーってあの子供とか女の子がなるやつ?
と言うと、いきなりむっとした表情で、
女子供ばかりの問題ではない、とのこと。
現にあなたがそうだから。

でも俺、こんなおっさんになってからなんで今更、
と首をひねれば、

いや、あなたはもともとアトピーだった筈。
ほら背中にも胸にもお腹にもこんな痕が残っている、と。

あ、これは汗疹で、と言うと、
そう、昔はみんなそう言っていたの。それがいまは、アトピーと言われている、と。

ほら、ここ痒いでしょ?と背中をこしょこしょ。
そうそう、汗かくからね。
だから、それは汗が痒いんじゃなくて、アトピーに汗が沁みて痒くなるの。
ならここは?と顔をつんつん。
あ、それは犬に舐められて、
アトピーだから犬が舐めるんじゃない?
え!?
ならここは?と胸をとんとん。
ああ、これ多分、ダニかな。犬のせいで部屋中が毛だらけで。
ダニならそんなところ刺さないよ。ダニなら脇の下とかパンツの中とか、もっと柔らかいところを刺されるはず。

え、だとすると。。。
だから、あんたはアトピー性皮膚炎患者。それも割と重症。

というわけでアトピーである。

この年になってそんなことを言われてもなあ、とまさに唖然。

え、だとしたら、と、改めて質問。

だったら、普通の人って、
仕事中に背中が痒くなったり、
夏に汗かいたところが真っ赤に腫れちゃったり、
海に行ったら全身ミミズ腫れになったり、
辛いもの食ったら頭が痒くて死にそうになったり、
とか、ぜんぜんしないの?

だから、と医者。
それはすべてアトピーの為せる技。

え!??と今になって大驚愕である。

ってことは、普通の人って、そんな苦労もなく、
もっと楽して生きていたってこと?

とそんなことを言われたとたん、
あれもこれも、とこれまで不思議に思っていた人間社会の数々の謎が、
一挙に、するすると解決に向かって紐づき始めた訳である。

なああああんだ。

え、じゃあ、とあらためて。

スーツは?
スーツ?

スーツにYシャツにネクタイ。

それがどうかしたの?

だから、普通の人って、スーツ着ても背中痒くなったり、
ワイシャツに血の後がてんてんついたり、
胸にボツボツできたり、
ネクタイ締めた襟元が赤く腫れちゃったり、
なんて、ぜんぜんしないわけ?

だから。。と医者。

それもすべて、アトピー。

ふざけんなよ、と思わず。

俺さあ、この年になるまで、
なんで世の中の人って、こんな辛い思いしてまで、
スーツなんてものを着ているんだろうって、
ほんと、不思議に思っていたのだが、
なんだ、普通の人は、痛くも痒くもなかったのか。。。

というわけで、今更ながら目から鱗なわけである。

そっか、俺の社会人生活がどうも不愉快でならなかったのは、
実にこれが理由であったのか、と。

あるいは、それがアトピーのせいであるとわかっていれば、
もっと対処方法もあったように思うのだが。

でもね、先生、俺ってご存知のように、アトピーだなんて、
そんなデリケートな人じゃぜんぜんないはずなんですよ。
と言うかそんな軟弱者とは対極のキャラ。
仕事場では鉄人と言われていたし、
これまで世界中のゲットーで切った張ったやりながらも、
こうしてピンピンしている訳で。

はいはい、だとしたら、と医者。
そんなゲットーなんかでわざわざ切った張ったやりたくなるぐらい、
アトピーの背中が痒かったからなんじゃないの?

あのなあ、と。。

でね、あんたも年をとって、だんだん免疫力が落ちて来たから、
いままで抑えられていたものがだんだん出てくる訳ですよ。

ってことはこの先どんどん辛くなる、と。

ま、不摂生を続けていればね、どんどん悪化の一途。
錆が回っちゃ機械も動かなくなる。

うへええ。

でもね、いいニュース。

血圧も、血糖値もコレステロールも、
心臓も内臓も上も下も、まったく問題なし。
普通ならそっちの方からやられていくんだけどねえ。
よほどストレスと無縁の生活してるんじゃないの?うやらましい限りだね。。
などと余計なことをおっしゃる。

ああ、そうか、もしかして、お酒飲まない人?
そう、実はまったくの下戸。
すごく飲みそうに見えるけどね。
まあ日常性酔っ払いって奴で。
それだけは感謝したほうがいいよ。お酒飲めなくて命拾いしたってさ。

とりあえずね、おくさんの言うことをちゃんと聞いて、
隠れてタバコ吸ったりしないでね、若い子との外食を控えてね、
毎日お弁当ちゃんと作ってもらえば、じきに治りますよ。

え、俺って若い子と外食なんて最近ほとんどご無沙汰だけど・・・

だから悪いことは言わない。奥さんを大事にしなさい。
あんたの奥さんね。この間、健康診断来たけど、ほんと完璧。
クリスタルクリアに健康体。どう見たって30代の前半にしか見れないでしょ?
うらやましい限りだよ。

普通のおばさんってあんま見たことないんで良くわからないけど。

またまた、若い子しか目じゃないって?あんたその年でよく言うよね。

だから、俺は若い子なんて、といくら言っても聞く耳持たず。
あ、そうか、このひと、もう十年も前にパナマで遊び過ぎて、
後輩たちから、頼むから検査受けてくれ、と拝まれた挙句に受けに来たエイズの検査、
そのことをまだ覚えていらっしゃるという訳か。
うーん、医者のデータベース、侮れないな。

と言う訳で、診察の終わり。

はい。結果は良好。何ひとつなにも問題なし。
検査の結果を見ないうちになんでそんなことを言い切れる?
だからね、病人なんて一目で判るの。顔色で。病人は顔色が悪い。
あるいは顔色の良い病人はいない。
逆、つまり顔色の悪い健康な人はいるけどね。でも顔色の良い病人はひとりもいない。
つまりね、そう、健康診断なんてしなくったって、こっちはひと目で判るのよ。幸か不幸か。
だったら、来た時にそう言って来れればいいのに。コーペイ代返せと言いたい。
お互いそんな憎まれ口が聞けるのもお互い健康だって証拠な訳でね。贅沢税だよ。
やれやれですね。
という訳で、問題なし。まあ精進しなさいな。タバコをやめてね。
アトピーを除いては。
アトピーは病気じゃない。体質。それを混合してはいけない。
でもね、そう、歳。老化。これも病気じゃない。が、それが現実なの。
あんたももういい年なんだから、妙な女とはきっぱり手を切ってね。精進しなさいな。
とりあえず、あんたの奥さんとおなじもの食ってれば間違いないってことなんだからさ。

と言う訳で、またまたなんか騙されたような気がして、
頭をかきながら医者をあとにしたのであったが、
毎度ながら診察室を出たとたん、
なんだか凄く損をした気分になってしまう健康診断であった。


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プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾年月。
世界放浪の果てにいまは紐育在住。
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

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