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「15664人のフルーツバスケット」

Posted by 高見鈴虫 on 07.2013 とかいぐらし   0 comments   0 trackback

入社から半年。

いまだに日々は研修ラッシュ。

次から次へと新しい仕事を覚えねばならず、
と大変なことも多かったがとにかく全てが真新しくそしてそれはとても面白かった。

と言う訳で半年が過ぎた。

水曜日の午後、ついに初めてのパフォーマンス・レビューを終えた。

いまだ研修中と言うことで通常の評価はできないが、
まあこれまでのところとてもよくやっている、
つまりこれからも伸びるであろうとの判断から、
と前置きして、
なんと入社半年目にして早くも給料もアップ。

加えて異例のボーナスさえも支給されたってなことで、
まさに驚き桃の木の嬉しいことずくめ。

実は入社以来ずっといつクビにされるか、
と日々戦々恐々であったのだが、
今回のこのレビューで、ついに正式入社、
つまりはようやく列記とした新前社員として認めてもらえたということ。

これはまじめに嬉しかった。

この半年我ながらよくがんばったなあ。
よしちょっとお祝いしようか、などと思っていた水曜日の夜。

朝の会議でも、と言う訳ではい執行猶予は満期です。
これからは晴れてお仲間の仲間入り。
これからもよろしくね、と暖かい言葉を頂いていた、
まさにその最中、

突如その手元に妙なメールがひとつ。
見慣れぬ宛先をよくよく見ると、
これはなんと俺の上司の上司のその上司のそのその上司のそのそのその上司みたいな人から、
タウンホール、とある。

なんだその、タウンホールってのは、
と辺りの人々に聞いてみるが、

つまりはそれ、社員全員集合の大会議だという。

なんの予告もなしにいきなりのタウンホール・ミーティング?

皆一様に、むむむ、なんだこり、と首を傾げるているばかり。






で、まあ、よく判らんが、
とりあえず11:30のテレカンに参加してみましょうぜ、
ということにはなった。

で、そのテレカン。

いきなり、ボストン支店の閉鎖が決定、から始まり、
今後3年間の間にメインオフィスの移転を決定。

それもよりによって地の果てのような土田舎。
及び、それに伴い大規模は組織の再編成を実施する、ってな話。

んんん、なんだこれ、まさか俺の聞き間違い?
と傾げながらまさに雲を掴むような話に目をぱちくり。

唖然とするうちに、ま、詳しくは各部署のボスに聞いてちょんまげ。
じゃね、といきなり会議を終わられて、まさに口あんぐり。

で、ねえ、いまの話、いったいなんだったの?
結局どういう意味なの?
とチームの面々にメールをしていたら、
ふと顔を上げると机の周りから廊下から、
同じように口をあんぐり開けた人々が右往左往している。

で、そんなゾンビーのような奴ら、
ふらふらとさ迷いながら、すれ違う者同士で、
ねえ、どういうこと?結局どういう意味なの?
とやはり同じことを言っている。

つまりみな俺と同じレベル。
としている間に、緊急電話会議の招聘状がポンポンと届き始め、
で参加をしてみても、
部長から課長から係長からクラスからが、
ねえこれどういうこと?結局どういう意味?
と結局誰もなにも判っていない。

で、まあとりあえず情報を集めながら今後の展開を待ちましょう、ってなことに。

いやはや、入社半年、いまだに非常口がどこにあるのかも知らないうちからいきなり船が沈没かよ、と。

あのなあ、俺は昨日正式入社のオファーをもらったばっかりなんだよ、と。
そのあまりのタイミングにまさに神さまの悪意さえ感じるぐらいだ。

まあしかし、この半年間ずっと考えていたことは、
つまりでかい会社は違うなあ、だった。

とにかく気前が良い。
つまり無駄が多いなあ。

これまでの職場ではまさに一分一秒たりとも無駄にするなとばかりに、
次から次へとまさに息もつけないほどに仕事を重ねられ、
休暇が取れないどころか土日出社もあたりまえ。
毎日毎日これでもかとばかりに残業を繰り返していた俺にとって、
9時5時ですかっと帰る社員や、
2週間の休暇で世界一周やら、
果てはビジネスクラスで日本出張。
おまけにホテルはハイヤット、なんて、
まさにまさに、いやあ、でかい会社は違うなあ、と。

俺ねえ、この間まで、飛行機は無駄だから夜通し車で走れ。
ホテルは街道沿いのモーテルで十分、なんて出張を繰り返していたんだぜ、と。

やることなすことなにもかもがまさにエグゼクティブ待遇。
いやあ大会社、やっぱりいいなあと。
なんと言ってもIT部門だけで15000人。
俺一人がいなくなったところで誰もなにも気づかない、
つまり、バックアップ体制が完璧であるゆえに、
きちんと働いてきちんと家に帰って家族を大切にして休暇も取れて、
というまさに人間様の暮らしが保障されている、という奴なのだ。

なんだかんだ言って、これがまさに一番驚いた点だった。

へえ、うちとまったく同じようなことをしている部署が、
社内にあと2つも3つもあるのか。

前の会社では俺がひとりでやっていたネットワーク系の緊急対応係だけでも250人。
いやもう、まさに規模が違いすぎるというかなんというか。

と言うことであまりのことに息を呑んでばかりのこの大会社。

それまでの俺の常識はまったく通用せず、
俺がこれまでどれだけ狭い世界で生きていたか。
どれだけ貧乏であったのか、とまざまざと実感することになっていた訳であるのだが。。。


と言う訳で今回の発表である。

当然ながらこのクィーンズのゲットーに建つ我がオフィスも移転の対象。
だが問題はオフィスの移転ではなくむしろ大規模組織改編のほうなのだ。
会社側の意向としてはそもそもオフィス移転は口実、
寧ろ目的としては大規模組織改編、
つまりは余剰の部署を極力減らし、
そして余剰人員を極限までカットするというのが本筋。

新オフィスへの移転に伴い、
全社員は新しい場所で新しく再編された関連部署に改めて職を申請すること。

その際、職種及び待遇条件は新地の新部署における新しい条件にそう形になること。

つまり物価の安い地の果ての土田舎におけるど田舎の物価水準に合わせるということ。
とここまで来てようやく事態を飲み込めた人々。

つまりこれって、社員全員をいったんは解雇して、
そしてもう一回入社面接からなにからをやり直すってことなの?と。


当然のことながら社員のほとんどには家族がいる。
家族がいる以上は、かみさんの仕事があったり子供の学校があったり、
あるいは家のローンからご近所付き合いからといろいろなシガラミの中で生きている、
つまりはそれが生活というものなのだが、
今回の発表はそれをいっさい無視。

会社が移転します。
ついて来たい人は来てください。
その代わりそのときはまた新しく契約しなおしてね、
ぶっちゃけ、給料は最低でも30%カットだけど
それでもあんたの職が新しい場所で空きがあってのことだけどね、

という訳で、まさにこれは正気の沙汰とは思えない。

少なくとも社員の生活を保障するつもりがまったくない、
つまり現実的には不可能に近い、
ということで、つまりはこれ、実質的にはまさに全員解雇、なのだな、
と気付かされた訳だ。

と言う訳で、改めてこれは凄い。
凄すぎる。

あまりの現実感のなさに、はーい、ドッキリカメラでした~!
といつ言われるか、と思わずニヤニヤもしてしまうわけだが、
それぐらいに凄い、つまり現実的ではなさ過ぎる。

このまま行くとほとんどの社員が辞める。
会社としては辞めたっていい、と思っているに違いない。
つまり全とっかえな訳だ。
年取って給料が増えて言うこと生意気になったからこのあたりで全員とっかえますか、
というところなのだろう。

がしかし、だとすると既存のシステムはどうなるのだ。
機械はスイッチ入れたらあとは勝手に動いてくれる、
とでも思っているのではないだろうか。

そう思っているに違いない。
思っていなければこんなバカな真似はできるはずがない。
つまり、この会社のシステムは今後ガタガタになるに違いない。
システムがガタガタになったら会社そのものがガタガタになる筈。
それが判っていてどうしてと思う。
ハーバードやらMITやらを優秀な成績で卒業された御人が、
まさかそんなことを正気で考えているとも思えない。

のだがどうもそこまでも考えていないようだな。

つまり経費削減のためにはなんでもやれ、
という鉄命がくだされたのだろう。

つまり下さざるを得ないほどにてんぱっている、とみるべきなのか。

廊下の机のそこかしこに固まってはひそひそ話をする人々。
が誰にもなにもわかっていないのは周知の事実。
塞ぎこむもの。
やけに気楽そうな定年間近の人々。
我関せずと机に向かい続ける派遣の人々。
がすべての人々の心に無常、
つまりは明日をも知れぬ境遇がありありと浮かんでいる。

なんか911の時みたいだな、と思った。
あの時もそうだった。
これからどうなるんだろうと思いながら、
でもなんとなくとりあえずは目の前のルーティーンから開放された妙な心地よさ。

5時を過ぎて表に出ると外は雪が降っていた。
3月を過ぎた名残雪。
あああ、せっかくようやくいい仕事が見つかって、
あとは釣りでもして暮らすか、なんて言ったばかりだったのにな。

と積もり始めた雪を蹴りながら、
ふと辺りを見回すとまさにあっけらかんとした人々。

この雪が明日まで降り続けば明日は休みになるね、
なんてことでうきうきしている。
なんともお気楽なことで。
内心は明日は我が身と判っているくせに。

と言う訳で、かみさんと晩飯を食いながら、
いやあまるでギャグ、お笑いのネタみたいだね、と。
こうして一緒に揃って晩飯を食べれたのも半年限りか、儚かったねえ、と笑っている。

まあでも、今日明日のことじゃないんでしょ?
ああ、2015年をめどにって言ってるからあと3年かな。
いずれにしろその会社、ろくなことにはならないというか、
もう終わってるってことじゃない?
あんたらITだからそういう実務面の情報って誰も知らないんだね。
おめでたいことで、と皮肉まで言われる始末。

まあどうにかなるよ。これまでどうにかなったんだからさ。

と言う訳で再び我が家は気楽な非常事態体制に逆戻りしたわけであった。



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プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾年月。
世界放浪の果てにいまは紐育在住。
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

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