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という訳でアカデミー賞であった

Posted by 高見鈴虫 on 25.2013 ニューヨーク徒然   0 comments   0 trackback
という訳でアカデミー賞であった。
友人夫妻が遊びに来ていて、
飯を食った後もなんだかんだダラダラとしているうちに
結局は最後まで観てしまったのだが、
なんだろうなこの脱力感は、と苦笑いで終わる、という、
まあ毎度のパターンである。

という訳でアカデミー賞である。

俺的にはダントツでZERO DARK THIRTYであった訳だが、
当然のことながらZETがオスカーを取れる訳がない。

何と言っても、
ごく限られた当事者たちを除いては、
誰一人として誰も幸せになれなかった戦争の後始末の話
つまりほとんど全てのアメリカ人、及びあの戦争を知る者たちにとって
もっとも忌々しい史実の話である。

しかもその内容は、まさにBASED ON THE TRUE STORY。
つまり、生々しい戦争の、それも現場作業の一番厄介なところに突っ込まれた人々の
まさに血の滲む苦労の数々の話。

繰り返される拷問。
いまさらなんだよこれは、と思わず目を逸らすどころかため息である。
まさに拷問を受ける人質ではないが、古傷に塩をすりこむような所業である。
で、この拷問である。
受ける方も大変であるのだが、やる方も大変だっただろう、と実はそんなことを考えていた。
仕事とは言え、これを毎日やらされていたら人間がぶっ壊れてしまうだろうな。
いったい幾ら貰っているのだろう。

あるいは、

無期限の戦地出向。いったい家族や友人はどうしているのだろう。

つまり、いないのである。
頼れる者など誰も居ない状態で、
徹底的に孤立無援のままに業務を遂行するのである。
これはきつい。
俺だったら多分半年も続かない。続かないどころか、やはりどこかが壊れてしまうに違いない。

それに加えて、唯一心を開ける友人が非業の死を遂げる。
果ては、自宅のガレージで襲撃に会いマシンガンで滅多撃ちにされる。

これは金ではできない。あるいは仕事ではできない。
が、しかし、仕事でなかったらできない。

まさに人生そのもの、人格から命までを丸ごと持っていかれる訳である。

それが10年続いた訳である。
やるせない、と言うにはやるせなさ過ぎる。
徒労と言うには徒労過ぎる。

そしてこの戦争の本質である。

あれだけ色々と言われていた戦争である。
いまとなっては
共和党であろうが民主党であろうが、
CであろうがNであろうが兵隊であろうが、
少なくともあの戦争にコミットせざるを得なかった人々にとって
この戦争の本質についてはとっくに察しがついている筈である。

何にもまして調査官としてあの戦争を調べまくっていた主人公たちにとって
どういう訳か敵と味方がおかしな具合に絡み合っていたり、
あるいは、明らかに味方側が仕掛けたトラップがそこら中にみつかり、
嫌がらせがあり妨害が始まり予算が減らされ口封じに向けての包囲網がひかれ
つまり、
この仕事は、敵からも見方からも、
言ってみれば世界中の誰からも望まれていない仕事な訳であることには
とっくの昔に気づいていただろうし、
同時にこの戦争のからくりにも気がついていた筈だ。

しかし、彼女は仕事の本質を見誤らなかった。

彼女の仕事はジェロニモを見つけ出すこと。
それ以上でも以下でもない。
そこには意味さえも失っていたに違いない。

あれだけ多くの人間が、ジェロニモなどいない、実在しない、
と言い続けていたのである。
彼女自身、その可能性を考えなかった訳ではないだろう。
あるいは、世界中の誰よりもその可能性について考えていただろう。

が、彼女は諦めない。つまり能書きに甘えない。

そんな疑惑の霧の中をさまようような仕事をたったひとりで10年間に渡ってやり続けた訳である。

これを執念と表現するにはあまりにも凡庸である。
がしかし、そこに狂気はない。
狂気で仕事はできない。
彼女はそれを徹底的に仕事として、
冷静沈着に事実を積み上げて一歩一歩対象に近づいていく。

仕事をやる人間として、この姿勢にはまさに頭が下がる。

そしてその仕事が終わった時、
彼女はそこになんの達成感も爽快感も存在しないことに気づく。

あの戦争がまさにそうであったように。

あの馬鹿馬鹿しい戦争の結末のように、
それはあまりにも愚かな徒労、あまりにも逸脱した浪費、
憎しみも狂気も怒りすらも感じられない、
ただただ、重い疲労感。

あの戦争とはまさにそんなものであったのだ。

まさに湯水のように国家予算をつぎ込んで、
砂漠の砂の中から亡霊、あるいはラクダの糞を探しだすような仕事であった、
誰のためになんのために、など誰も判らなかった。

それこそがこの戦争の本質である。

ただひとつ言えることは、

副大統領であったディック・チェイニーの所属するハリーバートン社は
この戦争で巨額の富を得た。

その悪巧みのすべての罪をブッシュに押し付け、
後ろ足で砂をかけて勝ち逃げを決めたカール・ローブは、
いまや共和党の顔役。

アメリカの国家予算は空どころか世界中に巨額の借金を押し付け、
おまけにインチキ株屋の悪巧みに乗って、世界中に金融危機を引き起こし、
そんなインチキ株屋を救済するために、再び天文学的な額の国家予算をつぎ込んだ。

その立役者たるポールソンはあれから5年経ったいまも笑いが止まらないに違いない。

そしてジョージWブッシュ。
いまやテキサスの金融マフィアとして君臨しているらしいが、
それは多分ジョージ・ブッシュが望んだことではないだろう。

彼はただ、そんな世界最悪のマフィアたちに担ぎ出され、
なにも判らず何も聞かされないままにつんぼ桟敷にされたまま、
勝手にことを運ばれ、そののちに、ありったけの罵声の中から、
ほらよ、とその分前を投げ渡されただけ、だと思う。

つまり、ジェロニモこと、オサマもまさに存在であったのだろう。

が、しかし、
今となってはもうだれもそんなことを口に出したりはしない。
あの戦争に直面せざるを得なかった者たちにとっては、
それさえもが二次的な問題なのだ。

今はそう、ただたんに、なにも思い出したくない、と願っているに違いない。

そうして戦争は終わった。

亡霊の死骸は、亡霊らしく、訳の判らないままに海に投げ落とした、
と発表された。
勿論、生け捕りにしようとすればできた筈である。が、それを敢えてしなかったのだ。
敵は死んだ。死体は捨てた。

おしまい。さあもう忘れようじゃないか。

あの戦争に人生を狂わされたほとんどすべてのアメリカ人達にとって、
それは忘れたくても忘れられない、しかし思い出したくない、
最低最悪の経験であったのだ。

そして、さあ、忘れなさい、と言われ、一人取り残されたマヤが最後に流した涙。

俺たちニューヨーカーは、あの映画が終わった後も、ずっとずっと席を立てなかった。

見なければよかった、と誰もが思ったに違いない。

が、見ないわけにはいかなかった。
そして、いまどうしても見たくない、見れないであろう人びとも、
いつかはこの映画を見ることになるに違いない。

そしてたったひとり、ただ重い重い疲労感の中で、ふっと長い溜息をつくことになるだろう。


この映画がアカデミー賞を受賞できなかったことで、
ほとんどすべてのアメリカ人がアカデミー賞を見限ったに違いない。
そして、そんな脳天気なアカデミー賞をちょっと見なおしたに違いない。

映画は夢を売るものだ。
それが悪い夢であってもだ。
が、やはり、そう、この映画は映画史に残すべきではない、と判断したのだろう。
映画はやはりまやかしであるべきなのだ。

そんなことまるでなにも知らないふりをしてデザートをつつく友達と妻を観ながら
つくづくそう思った訳だ。

ディック・チェイニーとジョージ・ブッシュの死のニュースを聞くときも、
たぶんこんな感じなんだろうな、と思っている。

最後に、ZDTに変わって作品賞を受賞したのはALGOである。

誰もがわかっているであろうが、あの映画は糞だ、と言わせて貰う。

あれはただの70年台の昔懐かしアメリカンTVドラマのリメイクである。

スタスキーアンドハッチやら、チャーリーズ・エンジェルやら、
覚えている人間は覚えているだろう。
それをちょっともっともらしく、悪乗りしてでっち上げただけだ。

その駄作の大賞受賞を発表したのがよりによって、
ホワイトハウスのファースト・レディであるミッシェル・オバマ であったのが、
まさになんとも皮肉である。

少し知恵の回るやつであれば、
おいおい、イラクとアフガンが終わったと思ったら、
次は・・・イランか? もういい加減にしてくれよ、と思っているにちがいない。

夜12時をかなり過ぎて、
アカデミー賞のことなど一言も話題にあがらないまま、
ああ、明日からまた仕事か、と帰って行く友を72丁目の駅で見送りながら、
ZDTが終わってくれて本当に良かった、と心から思った。

次はイランか・・馬鹿馬鹿しい。


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プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾年月。
世界放浪の果てにいまは紐育在住。
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

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