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「YC」

Posted by 高見鈴虫 on 25.2013 ニューヨーク徒然   0 comments   0 trackback
知人の誘いを預かって、
ひょんなことからかのイエールクラブなるところに御招待を頂いた。
このイエールクラブ、まさにエンブレムは、YC。
イエール大学の卒業生たちによって構成される、
まさに由緒正しき伝統と格式を重んじる会員制のクラブ。
イエール大学と言えば、1701年に創立されたアイビーリーグの筆頭。つまり名門中の名門。
がしかし、この名門のイエールである筈のイエール大学、
でありながら、ひええ、イエールかよ、と思わず口走ってしまうのは、
なんと言ってもかの、米国史上例を見ないほどの無知無能最低最悪の大統領であった
かのジョージWブッシュ様の御出身大学。
そして彼の8年間に及ぶ米国史上例を見ないほどの陰湿な暗黒時代に、
ジョージWブッシュ、及び、彼の父親たるパパブッシュ、
そしてまさに、そのGWB政権の影の大幕であり、
その邪悪さの全てを司っていたと言われた、ミスター・ハリーバートン、
ディック(ちんぽこ)・チェイニー副大統領とまさに、
このイエール大学出身者における影の秘密結社の存在が誠しやかに囁かれ、
邪悪なアメリカ帝国主義のその中枢のような扱いされされていたのが
まさにこのYC。イエール・クラブ、な訳である。
と言う訳でこのイエールクラブ。
ちょっとした腐れ縁の友人から、
ちょっとしたお祝いのそのまたなんとかでクラブ内のレストランにお呼ばれした訳だが、
やはり思ったとおりドレスコードなるものが存在し、
つまり日曜の夜でありながら、渋々と会社用のスーツに着替えて御参上仕ることになった訳だ。
という訳でこのYCである。
秘密結社だ、海賊旗だ、と聞いて、さぞやおどろおどろしい所かと思えば、
その場所たるや、なんとニューヨークの中心たるグランドセントラル駅、のその真横。
まさに東京駅ステーションホテルの内、という感じ。
で、その異様にあっけらかんとした場所、ではあるのだが、
いざYCの旗印の扉を入ろうとしたところ、
いきなり来ましたパスポートチェック、ならぬ御紹介者チェック。
やはりさすがだな、と思わず。
まさに、このビルにいる人々は掃除婦からウエイターからコートチェックのおさんに至るまで
まさにドアマン視線、というか、訪問者の格式を一瞬に査定する鋭い視線に満ち満ちている。
まあね、と思わずその足元のフカフカのカーペット。
グラセンの地下街に寝泊りするホームレスが入ってきたらそれこそまさに最高の隠れ家になりそうだものな。
などと憎まれ口を叩きながらも、
やはり天下のイエールの人々が、果たしてどんなところでどんな物を食らい、
そしてどんなところで糞を垂れているのか、とちょっと興味は深々であった訳だが、
同行した我がかみさん。そんな俺の隣りでなんとなとなくちとーっと俺を見ているばかり。
どうも聞くところに寄ると、かみさんは仕事関係で何度もここに足を運んでいるらしい。
と言う訳で近所の居酒屋の定食メニューを語るように、
そうねえ昼のバッフェは実はいまいちで、などと聞いたようなことを抜かしているではないか。
だからなあのな、ここはまさに米国政治の悪の中枢のと言ってもまったく聞く耳持たず。
まるでメイシーズとまではいかなくても、ブルーミングデールの中をそぞろ歩き、
するような調子でスタスタと歩いている。
と言う訳でディナーである。
まさに歴史と格式のディナールームである。
これまでに経験した貴族的なディナー、そのどれにも共通するのは、
まさにその静けさである。
耳障りなヒップホップも酔っ払いの嬌声もカレッジバスケットボールの喚声さえもそこにはない。
まさに無音。
膝に白いナプキンを広げた人々が、背筋をピンと伸ばしたまま、
フォークにぶら下げたレタスやハムをいかにも食いづらそうに口に運んでいる訳だが、
見た限りほとんどの人々がなんとハンバーガーを食っている。
このハンバーガー。言わずとしれたアメリカでもっとも一般的な食い物。
丸いバンズに牛の挽肉のパテが挟んである訳だが、
この伝統と格式の人々、まさかハンバーガーをナイフとフォークで食っているのか、
と思ったらやはり両肘を張り出してはかぶりついている。
やっぱりな、と思わず。ハンバーガーのお上品な食べ方など見たことがない。
と言う訳でまあ所詮はアメリカな訳である。
それがイエールであろうがハーバードであろうがハンバーガーはハンバーガー。
しかも15ドルであったにも関わらずその味としては、
近所のNICKSやらフェアウエイと大して変わらなかった訳で。
レストランそのものとしては味も彩りも今一二三。
そこがイエールにあるから、という以外にはなんの変哲もない普通のアメリカ高級料理、
というところ。
で食後の後に、なんとなくそのクラブ内を案内してもらった訳だが、
結婚式で有名な大広間やら、いったいどんな人がこんなところでわざわざ本を読んでいるのか、
という無駄に格式高すぎの図書館。
ああ果たしてこんなところでイラクの大量破壊兵器のでっち上げが行われたのか、という怪しい会議室。
スポーツジムに娯楽室に、と各階を見ていくうちに、
おっと、といきなり出くわしたのが、かのジョージWブッシュ先生の肖像画。
しかもこんな目立つところに、というよりもまさに主役クラスの扱いである。
まさか、こんなところに、恥も外聞もなくよくも抜けぬけと、と思わず笑い出してしまった訳だが、
ふとその双璧を見れば、そこにはまさに、我がアイドル、ビルクリントン氏の姿が。
えええ、ビル・クリントンもイエールだったの?
そうだよ。ヒラリーもイエールだ。
ってことは敵と見方が同じ秘密結社だったりした訳?
敵も見方もないさ。イエールはイエール。イエール出身である以上、民主党だ共和党だ、なんて大した問題じゃない。
そうなのである。
つまり、そういうこと?つまりはそういうことらしいのである。
やられたなあ、と思わず。なんだよ結局はみんな同じ穴の狢なんじゃないか。
まあそう、つまりはね、イエールなんだよ。それがイエールのイエールたる所以というか、
だそうである。
なんかお前、偉そうだな、と思わず。なんだよお前、そんな偉そうにするならお前も大統領ぐらいになってみろよ、
と思わず口走ってしまったら、我が友、なぜか妙に寂しげな顔をして、
まあな、うちの家族の中では俺は完全な黒い羊。どん尻の落ちこぼれも良いところだな。まったく恥ずかしいよ、と一言。
がな、と思わず俺。
俺の友達にも東大卒で売れない劇団やってる奴もいれば一ツ橋卒のバンドマンやら、
京大出たのに下着泥棒で捕まったり北大卒のマリファナ不法所持なんてのもいるしさ。まあ気にするな、と。
と言う訳で、まあイエールにも色々、ピンからキリまである訳なんだろ?と。
が、しかし、それがそうでもないようなのである。
まあな、でも、まあ正直言ってしまうと、しかるべきところに言って、しかるべきところでイエールである、
ってなことを言えば、まあ大抵のところがどうにかなってしまったりもするんだよな、実は、
だそうなのである。
例えば?
まあ例えば、と口をにごらせながら。
つまりは、政治から司法から経済から、このイエールのご威光たるや凄いものがあって、
つまり、まあイエール出身で、と言えば、まあ、
それだけでおいしい話がある、と。
まあね、それなりに辛い思いもしなくちゃいけないんだけどさ。
と。
と言う訳で、へえ、お前がイエールだなんて知らなかったぜ、と言ったところ、
いや違うんだ、と。
え!?なんだって、とここに来て大きなどんでん返し。
だから、俺はイエールなんて出てない。大学なんて出てないんだ。そう言ったろ。
じゃあ何で、と思わず開いた口がポカン。
だから、俺の親父とその親父とお袋とその親父と、ついでに言えば兄貴も姉貴も弟もが、みんな揃いも揃ってイエールな訳でさ。
ええ、そういうこと?
そう。で俺はガキの頃からここを遊び場にしていたという、ただそれだけの話なんだよ。

と言う訳で思わず顔を見合わせて笑い出してしまった。
そういうことか。
そういうことだ。ただちょっと珍しかったろ?
まあ確かにな。
おい、今度スカッシュやらねえか?ここにいいスカッシュコートがあるんだよ。
うっし、金賭けようぜ。ぶちのめしてやる。

と言う訳で、
なんとなくそのまま犬の散歩まで付き合わせた後に、世も更けた地下鉄の駅に、
たった一人カシミアのコートの肩を丸めて消えていく我が友であったわけなのだ。
良家のおぼっちゃまにも色々と苦労があるんだな、と思わず。
次にあったときにはもうちょっとやさしくしてやろう、と思った次第。


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プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾年月。
世界放浪の果てにいまは紐育在住。
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

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無断丸々転載・そのまま転写はご勘弁ちょんまげ

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