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「クローンドッグ・ベア その一 クローンドッグ・ベア登場」

Posted by 高見鈴虫 on 28.2013 犬の事情   0 comments   0 trackback
久々の自宅勤務の昼休み。
いつものように12時ジャストに、よし、行こう、とせがまれてドッグラン。
普段から通いなれたドッグランと言えども、その時間帯によって集まっている犬の顔ぶれがまったく違う。
と言う訳でブー君。またいつものように問答無用のボール遊び。
途端に他の犬たちも飛び入り出演して、瞬く間にドッグラン中の犬が参加する大ボールボール大会。
とそんな時、あれ、と思わず。
なんか目の前にブッチ。
あれ、お前、ボールはどこへやった?と聞けば、怪訝な顔をして首を傾げている。
なんだお前、その首輪。いつもの青いのどこへやった?
とふと見れば、なんと目の前に息を切らしてボールを咥えて走り寄ってくるブッチの姿。
あれええ、と思わず。
なんだなんだなんだ、ブッチが二匹いるぞ!
と言う訳で、まさに驚愕である。開いた口が塞がらないとはまさにこのこと。
目の前に顔を並べたブッチ。
そのアーモンド形の瞳も、ちょっと神経質そうな茶色い眉毛も、
額に走る白いラインから、その上にべたりとつけたベントレーマークから、
まさに、なんというか、ただの生き写し。
そしてなによりその視線。
まるで人の眼の中を覗き込むようなえぐる様な、そのブッチ特有の直線的な視線が、
まさに今、4つの目から発せられている訳だ。
なんだよお前ら、と思わず。
なんだなんだ、なんてこった。
飼い主の俺が、四六時中、まさにブッチ以外はなにもないような暮らしをしている俺でさえ、
思わず見間違えてしまうほどになにからなにまでそっくりなのである。

おい、お前、ちょっと来い、と呼ぶと、訝しげな表情のまますりすりと擦り寄って来て、
ちょっとおい、こっち向け、と顔から歯型から、そして胸の張り方から手足から、
お尻の穴から尻尾から、とどこをどう見ても、まさにブッチ。ブッチそのものな訳である。

強いて言えば、顔の模様のずれ方がちょっと違うこと、
尻尾の形とそして身体の黒の入り具合が若干違う、ぐらいである。
さすがにブッチのトレードマークである、そのどてっ腹の大きな黒い丸。
これだけは絶対に誰にも真似されない、といったところ。
が、しかし、この黒い丸さえなければ、
まさにブッチ、ブッチのクローンそれ以外の何者でもない訳である。

思わず呼び寄せたクローン君。ブッチにやるように胸の中に抱え込んで身体中を撫で撫で。
うーん、この感触。このまるで猫のように柔らかい滑らかな肌触り。
これはまさにブッチ。ブッチ以外の何者でもない。

と言う訳でいきなり登場したブッチのクローン君である。

名前をベアと言う。
どうも最近このあたりに越して来たらしい。
あれまあ、噂には聞いていたけど、まさにそっくりね、と思わず笑い出している。
そう、このドッグランに来た時から、
本当に色んな人たちからブッチブッチって言われてねえ。ついに御対面という訳ね。

と言う訳でクローン君のベア君。
生後一年半。つまりブッチの弟という訳か。
そのあまりにも生意気そうな表情から、その鋭い視線から、なにから何までがブッチな訳である訳だが、
いざ顔をあわせた二匹のそっくりさん。
クローンのベア君がクンクンとブッチ君のお尻に鼻を寄せてご挨拶を始めたところ、
ブッチ君、いきなりこの野郎、と襲い掛かってねじ伏せて得意顔。
あらまあ、と飼い主。
ベアがやられてるわ、と。
この子が他の犬におなかを見せるなんて、始めてみた、と助けるどころか写真を撮っている始末。

と言う訳でベア君である。
話を聞くところ、どうにもこうにも手の付けられないやんちゃ坊主。
そう話している今も、いきなり顔を出したロットワイラーに襲い掛かっては、
ワンワンと吠えながら追いかけ回している始末。
とそれを見たブッチ君。いきなりロットワイラー君の行く手に周り込んでは退路を塞ぎ、
二頭のキャトルドッグに挟み打ちを食ったロットワイラー。
いきなりお腹を見せて降参モード。
その上からかさに掛かって飛び掛ろうとする二匹、
慌てて、おい、やめろ、こっち来い、と呼び戻した途端、
ブッチと、そしてベア、その後ろからおずおずとしたロットワイラー君がしかし喜び勇んで駆け寄って来る。
凄いなお前ら。出合ったとたんにいきなりの巻き狩りか。
これはもうまさにいきなりのバンド結成である。

おいで、と二匹を呼び寄せるや飛び込んできたブー君。
その後ろからもじもじとするベア。
お前もおいで、と呼ぶと思わず、赤い舌を躍らせて飛び込んできて、
まさに両手に花、ではなく、両腕にキャトルドッグ。
両側から顔中を舐められて、思わず、イヒヒヒヒと大笑い。

うちのブー君も可愛いけど、ベア、お前も可愛いな、と思わず猫かわいがり。
なんだよ、お前ら本当にそっくりだな。

と言う訳でボールボール再開である。
ベア君、どうもボール遊びには慣れていないようで、
それでも夢中になって兄貴分の後を追いかけている。

あれまあ、と飼い主。
なんかベアがこんなに喜んでる姿、始めてみるわ、と。
ねえ、まさに最高の犬でしょ?運動神経抜群。頭もずば抜けて良くて。ちょっと気が荒いのがたまに傷だけど。
まあねえ、となぜか微妙な表情の飼い主さん。
そういう飼い主さんの膝の上にはなぜか場を間違えたように赤い舌を出すボストンテリアが二匹。
あれ?その子たちは?
ああ、これも。
まさか、ベアと一緒に飼っているの?
そう。一緒に。合わせて三頭。
????と思わず。
ボストンテリアとキャトルドッグ?
そう。
なんか随分とタイプが違うというか違いすぎると言うか。
だってほら、チワワとグレートデンを一緒に飼っている人もいるでしょ?
いや、でも、それとこれとは話が別というか。。
ふと見ると二匹のキャトルドッグ。ロットワイラーに続いてラブラドルからシェパードからと
いい気になって追い回しては暴れまわっている。
なんかそう言えば、こんなにはしゃいだブー君を見るのも実に久しぶりと言うか、
まさになんというか、無法者時代のブッチ、そのもの。
と思った途端、いきなり響き渡る甲高い悲鳴。それと重なるキャトルドッグたちの不穏なうなり声。
次に餌食になったのはまさにアメリカンブルドッグ。そのいかつい顔つきからまさに無法者の鏡のような不敵なアメリカンブルドッグ。
それがいきなり両側から体当たりを食らい、追えば逃げられて後ろから飛び掛られとまさに錐揉み状態。
溜まらず頭だけをベンチの下に突っ込むも、むき出しになったお尻を好き放題に噛み付かれている。
おい、バカ、辞めろ、おい、そこまで!そこまでだ。
と言う訳で駆け戻ってきた二匹のキャトルドッグ。肩で息をしながらもうこれ以上ないというぐらいのゲラゲラ笑い。
なんかお前ら、最低最悪のギャング団と言った感じだな、と思わず頭を撫で撫で。
と言う訳で、ご傷心のアメリカンブルドッグ。
お詫びのトリートを片手に身体中の埃と涎を払ってあげて、ごめんね、と思わず。
とそんなことをやっているそばから、じりじりとにじり寄ってきたキャトルドッグギャング団。
おい、バカ、お前ら辞めないか、と言った途端に、へへんだ、と飛び跳ねて二匹並んでドッグラン中を走り回っている。

とそんなとき、ねえ、とベアの飼い主。
ねえ、オタクのブッチ、いつもこんな感じ?
いや、ここまで暴れるのは久しぶりだけど。
ああとなぜかため息。そうなんだ。これが普通なんだ。
そう、それがキャトルドッグ。ここに来たばかりの頃は毎日片っ端から大喧嘩してたよ。
で?と飼い主。で、どうしたの?
だからね、このキャトルドッグっていう犬種は一日最低でも4時間のトレーニングが必要な犬種でさ。
なに?一日4時間?
そう。それもただ歩くだけなんかじゃなくて、徹底的に走らせなくっちゃいけない。
で?まさかあなた一日4時間も犬の散歩をしてるの?
そうだよ。そうしなければ本当にとんでもないことになる。
とんでもないことって?
だから、ドッグランで喧嘩したり、留守番中に部屋を滅茶苦茶にしたり、或いは気に入らない奴に襲い掛かったり。
やれやれね。飛んだ猛犬だわ。
そう、身体は小さいけど、まさに猛犬。こいつも子犬の頃から本当の本当に苦労したんだよ。
で、どうやって手懐けたの?
だから、とりあえず徹底的に走らせる。徹底的に運動させてやるしか方法なんかないよ。
4時間も?
そう。朝に自転車でテニスコートまで走って。昼にドッグランでボール遊び。走らせて。
会社から帰ってリバーサイドパークを端から端まで。夕食の後はセントラルパークで好きなだけ
それだけやらなくっちゃ普通の犬にならないの?
それだけやればまさに世界で一番の名犬になるんだよ、こいつらは。

と言う訳で時計を見ればすでに2時近く。やばい午後の会議始まっているじゃねえか。
じゃな、とベアに別れを告げた途端、
ふと走り始めたかと思うとゲートの前に先回り。
まるで置いてかないでと訴えるようにじっと俺たちを見送っている。
じゃあなベア、今度はボールを教えてやるからさ。セントラルパークにも一緒に行こう。それからそれから。
と言いながら、ベア、ゲートの前にがんばってがんとしても動かない。
と言う訳でやれやれ、と言った感じで腰を上げた飼い主さん。
その膝から下ろされたボストンテリアはまるで身を寄せ合うようにベンチの下に隠れている。

まあ苦労は多いとは思うけど大丈夫。こいつらの頭の良さはぴか一なんだから。きっと良い犬になるよ、
とベアの頭を撫で撫で。
あ、それからなにか困ったことがあったら、と思わず俺の携帯の番号。
なんでも電話してくれ。キャトルドッグ飼いは言うなれば運命共同体。みんなで協力すればどうにかなる。
コアポレイト?
そう。この犬はまじで一人で飼うのは無理だ、と思わず真実を告げてしまう。
だから、いつでも電話してくれ。さもないと・・・と思わず。大変なことになると思う。

じゃな、ベア、とゲートを出た途端、飼い主の手をすり抜けたベア。まさに一緒に行く、という感じ。
やれやれ、と顔を見合わせて。また今度ね、と。
だから、一匹で散歩するのも二匹連れるのも一緒だからさ。いつでも電話してくれ。

振り返るとベアはまだ俺たちを見ていた。このベアの表情どこかで見たことがあるぞ、
と思い返していたところ、そう、それはまさに、かみさんを見送るときのブッチの表情そのものだった。

なんかあいつ、寂しそうだったな、とブッチに。
え?なにが?とブッチは人の気も知らずに幸せ一杯。
まあないくらそっくりでもお前は俺の犬。ベアはあちらの家の子だからね。

がしかし。。そうなんか気にかかるのはなにかと言えば、あのベアの表情である。
あいつ、ちゃんと可愛がってもらっているのだろうか。。
あの別れ際の妙に切羽詰った表情に、
なんとも不安な気持ちがよぎったのである。


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プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾年月。
世界放浪の果てにいまは紐育在住。
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

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