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チャーリー・ホースは真夜中に疾る そのよん 試合中は水を飲め

Posted by 高見鈴虫 on 02.2013 チャーリーホースは真夜中に疾る   0 comments   0 trackback
パンゲアのじいさんとの試合の後、

身体中にこれでもかとスポーツクリームを塗りたくった
泥人形状態でコートの隅のベンチに寝かされたまま、
ポカンと広がる青空を見ながら、やれやれ、とため息をついていたのだが、

果たしてこれはいったいなんなのか、とつくづく首をかしげた。

これまでどれだけ無茶をやっても、
まさか足が攣った経験など一度もない。

勝ちの見えてきたここぞ言うところでのいきなりの痙攣。
これはさすがに、ちょっとこたえた。

まさか俺があんなジジイに負けたなんて。
この痙攣さえなければ。くそったれ、7ドル返せ。
と舌打ちするたびに、いてててて、とどこかが攣る。

やれやれ、だな、と思わず溜息しか出なかった。

おまえ、水飲まなかっただろ?
あんな糞暑い中で水も飲まずにぶっ続けでやっていたら、
そのうち本当に死ぬぞ、と口々に言われ、
馬鹿野郎、テニスコートで死ねれば本望だぜ、
と憎まれ口を叩きながら、
痙攣の最中には実はまじで、
このまま心臓まで痙攣を起こしたらどうなるのだろう、
なんてことを考えていたのだ。

これで学んだろ?
試合中は水を飲む。飲みたくなくても飲む。
コートチェンジの時にはバナナを食う。これも食いたくなくても食う。
どうだ、プロみたいだろ。忘れるなよ。

が、しかし、だ。
憎きはあのパンゲアのジジイだ。
もしかしたら水を飲まない俺をみて、
走るだけ走らせて痙攣を起こさせるという作戦だったのかもしれない。
ろくでもねえ疫病神め。

くそったれ、次に会った時にはただじゃおかねえ、
とか、なんとか思いながら、
いつの間にかそのままベンチの上で寝てしまっていた。

とそれがきっかけ、というのではないのであろうが、
どういう訳か俺はそのチャーリー・ホースにすっかり気に入られてしまったようだ。

パンゲアのオヤジとの例の全身痙攣の名残りで、
いまだに身体中のそこかしこに疼痛が残ったまま、
しかし次の日も朝の7時を過ぎると電話が鳴り続け。

やろうぜ、と言われれば断るわけにも行かず、
という訳で再び来る日も来る日もテニステニス。

がしかし、どういう訳かあのパンゲア以来、
足の指やら脹脛やらが始終ピクピクと不穏な動きをするようになっていた。

まさかまさか、もしかしこんな時にまたチャーリー・ホース?
そう思うと無性に恐くなってきて、
試合を焦り初め、ダッシュに迷いが生まれ、
バカ打ちが減ったお陰で自滅は減ったがその分、
ゲームに精彩を欠くようになった。

プレイの後、まさに筋肉の中を馬が走り回っているような、
ピクピクという不気味な痙攣の予兆に耐えながら、
そんな状態で無理に整理体操を始めると、
いきなりガチン、と来る。

とりあえず、ゆっくりゆっくり、やさしくやさしく。
力を入れず、急がず、そうそう、ゆっくりゆっくり。

これまでにも筋肉疲労の蓄積でまるで石のようだった筋肉が、
ここに来てまるで罅が入りそして亀裂が入ってしまったような気がしていたものだ。

その後、何度かの痙攣を繰り返しながら
筋肉の硬直化がますます進み、
そしていざと言う時の突如の緊縛がすっかり癖になり、
ここに来てさすがにこのチャーリー・ホース、なかなか侮れないぞ、と悟った訳だ。

という訳で、言われるままに、思いつくかぎりの痙攣防止方法を試し始めた。

水分。
バナナ。
ストレッチ。

それでも足りずに、ビタミンショップに飛んでいき、

マグネシウム。
カルシウム。
ビタミンE
の錠剤を買い揃え。

朝な夕なにエプソムソルトを入れて長湯。

食事の量を減らし、肉食を断ち、
一日中暇さえあればストレッチばかり。

と思いつく限りのことを試したのだが、
果たしてどうにもこうにも目立った効果がない。

と言う訳で、薦められるままにジムに行くことにした訳だが、
そのうちにジムでも足が攣り始め、
一度などバーベルを上げたところで両足が攣ってそのまま動けなくなり、
と恥の上に恥を重ねる醜態の数々。

そうこうするうちに、会社へ向かう自転車で太ももが攣り、
挙句の果てにぎっくり腰にやられて敢え無くダウン。

ここに来て、心の底から辟易することになった。

ぎっくり腰の静養中、ふと妙なことを考えていた。

もしかしてこれは、
一生分の運動エネルギーを使い切ってしまったのか、
ということなのだろうか。

が、しかしだ、
なまじ筋肉があるから痙攣など起こすのだろうか。
もし、筋肉をそぎ落としてしまえば痙攣する筋肉もないではないか。

ギックリ腰から立ち直った後も、さすがに朝練夜練は控えるようになったのだが、
それでも休日は朝から晩までテニスコート。
そしてその度に、帰りの道筋で度々に足が攣って自転車を転げ落ち、
とやっているうちに、果たしてこれはもうテニスどころではないな、
と思い始めていた訳である。


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プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾歳月
世界放浪の果てにいまは紐育在住
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

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