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「罰」

Posted by 高見鈴虫 on 29.2013 日々之戯言(ヒビノタワゴト)   0 comments   0 trackback

物心ついた時から徹底的に金が無かった。
タバコを吸い始めてからはタバコ代が、
バンドを始めてからはスタジオ代が、
女を知ってからはホテル代が、
当然のことながら親に相談できる訳もなく、
寸暇を惜しんでバイトに精を出すことになる訳だが、
そうこうするうちに寸暇どころではどうしようもなくなり、
結果学校を休み休み、あるいは、
もっと割りの良い方法を見つけるしかなかった。
もっとも割りの良い資金調達方法はと言えば、
人から借りることな訳だが、
周りにはそうそうと金回りの良い奴は見当たらない。
加えて、そんな俺の事情を知れば知るほど、
借りた金がいつ返ってくるとも判らない状態を、
そうと知って貸してくれるようなお人よしも居らず。
強いてはあまり俺の事情に通じていない人、
あるいは、名前どころかまだ会ったばかり、
のような人から、
凄く悪いんだけど金貸しくれないかな、必ず返すから、
とやると、これは立派なカツアゲな訳だが、
先の事情により、これをせざぬを得ない状況というのが多々あって、
追って俺は地元の鼻つまみとなった。
その後、良き先輩を見習って、
女に借りる、という方法を周到するようになった。
いつか必ず返す。お前しかいないんだ、とやれば、
まあ大抵の女は貸してくれる訳で、
そんな俺に金を貸すことに一種のロマンを感じている輩も居たことから、
いつしかこれが常套化し、
生きること、つまりはバンドを続けることは、
まさに金を貸してくれる女を見つけること、
と直結するようになった。
と言う訳で色々な女から金を借りた。
飯を奢ってもらうことは当然のことながら、
タバコを買ってもらったり、
バンドのスタジオ代を立替てもらったり。
こちとら、好きなバンドを続けるため、
という大義名分があったから、
臆面もなく女とみるや次から次へと声をかけ、
デートしよう、先ずは飯を食いに行こう、
そのまえにタバコ一本頂戴、とやった末に、
悪い、俺これからバンドの練習なんだ、
良かったら一緒に来る?と電車賃をお願いし、
バンドのメンバーに紹介した後はスタジオの外でほったらかし。
終るまで待っていてくれたらそれはそれで覚悟はするが、
大抵の女はその放置の意味するものを感じ取って、
終ったらそのまま消えていてくれたものだ。
と言う訳でバンドの練習が終ったと同時に、
いやあ参ったなあ、帰っちゃったよ、と白々しく頭をかき、
バンドのメンバーの部屋に転がり込むか、
あるいは、今日の空き部屋を探して
片っ端から電話をしていくことになる。
すっげえ悪いんだけどバンドの練習してたら終電終っちゃって、
ちょっと今から遊びに行ってもいい?
というのもまた常套手段で、
あ、そう言えばおまえんち、風呂あったっけか?
なんていうことをさりげなく聞いた後、
じゃね、うん、これから歩くから、1時間以内かな、
おっけ、近くに来たらまた電話するから、とやる訳だ。
で、その夜は、良い匂いのするピンク色のシーツの上ですっぽんぽん、
いやあ極楽極楽と朝まで高い鼾。
朝に起きたら女はすでに外出中。
これ食べて、とお味噌汁とごはんが用意されているかと思えば、
ねえ頼むから起きて、とたたき起こされて、
寝起きの頭をかきながら駅のホームで、じゃね、と別れた後に、
下り線の空いた電車の中で睡眠補給。
がしかし、
さすがにそれを年下の女の子にしてしまうと、
下手をすれば、年少の女の子からカツアゲ、
というどうしようもない不名誉な状態も連想させることから、
さすがに狙いは同級生か、さもなくば年上。
と言う訳で俺がこの歳になっても年下の女とどうして仲良くなれないのは、
つまりはこういう過程にあったことの後ろめたから、
つまりは罰があたったのだ、と自分でも思っている。
と言う訳でバンドを辞めるまでの間、
本当に本当に色々な女の子たちの世話になった。
この罪滅ぼしはいつか売れっこになった時に必ず、
と思っていたのだが結局泣かず飛ばずで俺のキャリアは終った。
と言う訳で
今でもなにか悪いことがあるたびに、
ああ、これはあの時の罰なんだろう、と思ったりもしている。
あるいはそれは、借金の取立てなのだろうか。
まだまだ日本には帰れないな、と思う訳である。


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プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾年月。
世界放浪の果てにいまは紐育在住。
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

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