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日系蟹バケツの悪夢

Posted by 高見鈴虫 on 14.2013 とかいぐらし   0 comments   0 trackback
どうしたのだろう。ここのところ夜更けに目が覚める。

悪い夢を見るせいである。

辞めた会社の悪夢にいまものたうっているのだ。

もう半年以上も前の話だというのに。
そして今の仕事は以前の会社との絡みはいっさいない。
つまり綺麗さっぱり縁が切れたというのにである。

忘れたくても忘れられないあの怒りに悶々として過ごした日々の記憶が、
夢の中でまざまざと蘇ってきてしまうのである。

できることならすべて綺麗さっぱり忘れ去りたい。
ようやく忘れ去れる状況に辿り付けたというのに、
である。
蜘蛛の糸



自分でも結論は出ている。
つまり長く居過ぎたんのだ。

俺の育ての親である旧経営陣から、
持ち株売却の知らせを聞いた時、
という訳で、そろそろ潮時と考えたほうがいいな、
と言われたあの時に、
その言葉の意味をもっと素直に受け取っているべきだったのだ。

そう、あの時点では、
まさか会社そのものが売り飛ばされてしまうようなことになるとは
思っても見なかったのだ。
あるいは、
そういう状況に置いて、自らがどんな状況に追われて行くのか、
はっきり言って想像もつかなかったのだ。

ただ、怖いもの見たさで、そういうものも見ておいたほうがいいのかな、
なんて馬鹿な好奇心があった。

会社の潰れるところというのを一度見ておきたいものだ、
というのがその理由だ。

結果として、それはこれ以上無く屈辱的なものであった。

丹精込めて作って来た庭をパワーショベルで掘り返さた上に、
家の中にまで土足で上がり込まれて、
見ている側から箪笥の引き出しから本棚からを、
一切合切に荒らし回られ床中にぶちまかれた挙句、
け、ゴミばかりじゃねえか、と手鼻をかまれるようなもの。


あまりの狼藉に堪忍袋の尾が切れて、
ちょっと来い、まとめて相手してやらあ、
とやった途端に待ってましたとばかりに
座敷牢に閉じ込められた挙句に島流し。

という訳で、
人里離れたニュージャージーの奥地から、
飛ばした伝書鳩が天国に届いたのか、
奇跡としか言い用のない幸運が重なって、
そして今、
俺はかねてよりの希望であった米系一流企業への転職を果たした
という次第。

正直なところ、
転職の際には気が競った。

焦るな、焦るな、と自分自身に言い聞かせながら、
焦らないわけには行かなかった。


早いところこの状況から抜け出さなくては、
と焦るあまり、
オファーを貰った時点から藁をもつかむ思いで
スピード転職を決めた訳だが、
正直に言ってあの時思ったのは、
どんな方法でもよい、
例え、
サメの泳ぐ海に乗り出すようなことになっても良い。

とりあえず、ここよりも他の場所に逃げ出さなくては、
であったのだ。

大丈夫。
喧嘩上等のヤンキーあがり、その後はライブハウス・ロッカーとして
毎夜毎夜のステージに立っていた俺だ。
土壇場の一発勝負こそが俺の見せ場という奴だ。

馬鹿野郎、サメでも熊でもかかって来やがれ、ぶっ飛ばしてやる。

その後、入社して半年の間、
怒涛のように押し寄せた研修ラッシュ。
出張から出張を繰り返す狭間に、
講習と試験を繰り返した末に、
ようやくオフィスの自身の机に戻った所で、
試用期間の終了を知らされた。
改めて行われた給料レビューでまさかと思った増額を提示され、
中途入社社員に対しては異例とも言えるボーナスまで用意してもらったのである。

合格だ。
これからも末永く一緒にがんばろう。

その言葉を聞いた時、正直に言って、喜びはなかった。

ただ、助かった、と思った。

つまりこれで、あの悪夢からようやく逃げ切ることができたのである。

これでなにがあっても、あのドブの底のような連中の下に、
引き戻されることはなくなったのである。

そしていま一年が経とうとしている。

その間にも、やれ人事異動だ、オフィス移転だ、
とまあ色々あるにはあるにしても、
例えどんなことがあろうとも、
この環境は昔の職場とはまさに比べようにもならない。

今になって俺は初めて、ようやく、もしかして、
成功という奴を手に入れたのだろうか、と感じ始めている。

が、である。

それなのにである。

そう、あの昔の会社のことが、
毎夜毎夜夢に出てきては、
俺をあの悪意のどん底の底に引きずり込もうとするのである。

夜更けに訪れる悪夢の中で、
俺は怒涛のように押し寄せる怒り中で
あの糞どもにこの世で最も残忍な仕返しを考えているのだ。

両手両足を切り落とし、犬のように四足にしてやった末に、
豚小屋に放りこんでやるか、
あるいは、カルカッタのスラムで乞食でもやらせてやろうか、
と考えながら、日々あくせくと今日中にやらねばいけない仕事に
駆けずり回っているのだ。

あの会社をやめたと同時に、俺の中からそんな悪意の蟠りを、
すべて払拭した筈であったのだ。

悪いな、みなさん。俺は一抜けた。じゃな。お幸せに暮らしな、
と鼻で笑ってあばよを決めた筈であったのだ。

考えられうる限り、もっともスマートで、もっともかっこよい方法で
会社を後にしのに、なのである。

どうして今になって、思い出したくも無い悪夢に悩まされるのか。

あるいは、人間の心理とはそう言ったものなのであろうか。


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プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾歳月
世界放浪の果てにいまは紐育在住
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

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