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兎狩りにあったウィペット

Posted by 高見鈴虫 on 23.2013 犬の事情   0 comments   0 trackback
シャーリーの飼っている2頭のウィペット。

グレーハウンドの身体をそのまま小さくしたような、
全身を肌に張り付くような滑らかな短毛に包まれた、
実に美しい犬である。

白と黒が一頭づつ。
その気品あふれる容姿とは裏腹に、
その二頭が揃いも揃って無茶苦茶にきかん坊である。

ドッグランのゲートが開いた途端、
よーいドンとばかりにドッグラン中を走リ回るのだが、
その足の速いこと速いこと。

ブッチでさえもが思わず目を丸くしてしまう程に、
その俊足はまさに目を瞠るものがある。

で、この二頭のウィペット、
己の足の速さに物を言わせて、
他の犬達の遊んでいるボールというボールを
片っ端からかっさらっては、

おらおら、取れるもんなら取ってみやがれ、
とやる訳で、
その華麗な見た目とは対照的に、
言うなればちょっとした鼻つまみ。

そのこましゃくれた態度が鼻につくのか、
ブッチを筆頭に、彼の友人たちからは、
目の敵にされていたり、
と言うのは知っていた。

と、そんな時、
ねえ、知ってる?あのシャーリーのウィペット、と噂を聞いた。

ああ、あの白黒二頭の。

そうそう。

あれちょっと苦手だなあ。ブッチもあいつらが居ると途端に機嫌が悪くなって。

そう、そうよねえ。そういうところがあったわよね。

サリーもレミーもうちのブッチもあいつらを見ると眼の色変えて怒り初めてさ、ほんとう、ちょっとね・・

そうよねえ、やっぱりね、と妙に意味ありげな表情。

え、で、なにがあったの?

ええ、それがね、と聞いた話。

私も見たわけじゃないんだけどね、どうもひどく噛まれちゃったらしいのよ。

あのウィペットが?

そうなの。

で?

それでね、もう噛まれ方が酷くで、医者に連れて行ったら、なんと2200ドルだって。

2000ドル?なにがあったの?

それがね、私も見たわけじゃないんで詳しいことは言えないんだけど、もう相当に悪かったみたい。

だって2000ドルもかかったぐらいだからね。 で、誰がやったの?

それがねえ、実はね、犯人が誰か判らないのよ。

誰が噛んだか判らない?見てなかったの?

いえいえ、みんな居たそうなのよ、ただね。あんまり沢山の犬が・・

つまり、巻狩りにあったの?

そう、そうなの。もうドッグラン中の犬から追いかけられた挙句に、ベンチの裏に追い込まれてね。

うひゃあ。うさぎと間違われて、狩られちゃったんだ。

そう、まさに、それなのよ。うさぎと間違われちゃったみたいなの。

でね、飼い主のシャリーさんが怒り狂って、でも誰が噛んだかなんて判らないじゃない。

なんか話を聞くだけでも凄惨な話だね。

そう、なんか、酷かったらしいの。首を噛まれちゃって気管支に穴があいちゃったとか・・

首を噛んだ?犬が同士が?それはそれは。まるっきり犬とは思ってなかった証拠だね。

そうなのよ。まさにうさぎ捕まえたぞ~、っていう感じだったらしいの。でね、なんかそれ聞いてドッグランに来るの怖くなっちゃって。

え、まさか。このレミーを噛めるなんて、熊ぐらいなもんだろう。

そうじゃないのよ、だから、その場に居たら、多分この子も一緒になって、ってより、

ああ確かに、先頭切ってただろうね。

それなのよ・・

でね、いまシャリーが、その場に居た犬の連帯責任って言い出してるんだけど、
どうも覚えている犬が一頭しかなくて、大きなジャーマンシェパードが一匹入っていたって、それだけ。

ジャーマンシェパード?この近くで?

そう、あんまり見ないでしょ?

だって、ほら、この辺り、ジューイッシュの人ばかりだし。

そうなのよ。なんで、ほら、

ああ判った。うちのアパートに住んでる奴だ。確か11階のお医者さん。

そう、それらしいの。それ以外は判らないらしくて・・

見分けが着かない?まあ確かにねえ。そう言われて見ればどこにでも居そうな犬ばかり、というか。

でね、ほらうちのレミーとか、ブッチとか、見誤り様がないでしょ。こんな、お腹の真ん中に大きな丸つけちゃったら。

そうなんだよな、うちの犬を見誤る人はいないよな、確かに。

なんでね、気をつけなくっちゃと思って。

逃げ隠れできないね。

そうそう。

でもその場にいなくて良かったね。

そうなのよねえ。本当に。シャーリーには悪いけど。

と言う訳で、その可哀想なウィペット。被害者もユダヤ人なら加害者もユダヤ人で医者もユダヤ人。
治療費2200ドルの支払いから、慰謝料だなんだということになると、これはもう相当なことになりそうで。

まったくな、と振り返ったブッチ。

確かにこのお腹のどでかい黒い丸。こいつをいちど見れば誰でも決して忘れない筈。

用心せねば、と思った次第。


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プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾年月。
世界放浪の果てにいまは紐育在住。
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

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