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「日曜日のドッグランに来る人々」

Posted by 高見鈴虫 on 19.2013 犬の事情   0 comments   0 trackback
このところのぽかぽか陽気で、日曜日のドッグランは犬と人で一杯。

嫌な予感はしていたのだが、どうしても、とがんばるブッチに根負けして中に。

普段から顔見知りの連中、
つまりは筋金入りの猛犬に鍛えられた、
これまた筋金入りのドッグラバー同士とは違って、
この「日曜日のドッグランに来る人々」
まあそれが人間としては普通なのであろうが、
我ら犬バカ達の目からすると、
どうも犬の躾が甘い、というか、
ちょっとドッグラバーの常識からは逸脱した人々も多い訳で。

例えば、犬のうんこを片付けない。

公園のゴミ箱と一緒で、どこかの誰かがうんこを掃除してくれる、
と思っているらしく、

あのー、すみません、この黒いラブラドールの飼い主の人、
うんち、片付けてください、と言ったりすると、
はいはい、と明るく笑って無視したり、
なんで私が、とばかりにむっとしたりする訳だ。

あるいは、
人のボールを勝手に使って、
まあ、犬が喜んでいるんだからいいだろう、と思っていると、
そのまま持って帰ってしまったり、
あるいは、ゴミ箱に捨ててしまったり。

どうもドッグランにあるものは全て共有のもの、
と思っている節がある。

で、そんないたいけな飼い主に飼われた犬達。

もう見ているこっちが微笑ましいを通り越して、
痛々しくさえなってくるぐらいに、
ドッグランに連れてきて貰えたことが、
もう嬉しくて嬉しくて嬉しくて、
と、そのはしゃぎ方が尋常じゃない。

そんな犬達の狂騒ぶりを、目を細めている飼い主たち。

あるいは、せっせと写真など撮り始めたり、と、

おいおい、あんたたち、
いったいぜんたいいつこの犬を外にだしてやってるんだよ、
もしかして、ずっと檻に閉じ込めたままで、
散歩にでるのは週末のこのドッグランだけ、
っていうんじゃないだろうな。

という訳で、普段から、
お散歩もドッグランもうんざり、
というぐらいにお散歩三昧で暮らしている常連犬たちは、
ともするとそんな週末デビューの新参者たちが、かなり迷惑そう。

ねえねえねえ、遊ぼう遊ぼう遊ぼう、と絡みつかれるのがうざったいらしく、
ブーはもうずっとベンチの上でボール咥えたままだ。

という訳で、知らない犬達だらけのドッグラン。

中にはまさに「今日買ったばっかり」なんていう子犬も混ざっていて、
もう見るからに可愛い可愛い、ぬいぐるみなような輩たち。

飼い主もさかんに写真を撮っていて、
そんな子犬が大きな犬達にじゃれ付くたびに、それやっちゃえ、やっつけろ、
と犬も呆れる程の大はしゃぎぶり。

で、そんな子犬、走り回って飛びかかって、転がって、と大騒ぎなのだが、
そんな子犬を珍しがって集まってきた犬達。

くんくんくん、おお、こいつはどこの子だ?
やれ可愛いねえ、くんくん、とやっては、
犬は犬でみな目を細めて子犬が可愛くてしょうがない。

子犬にじゃれつかれるままに任せているのだが、
そんな中には、まだ子犬の抜けきれてない輩なんてのもいて、
まるで兄弟のプロレスごっこ、さながらに、
おっしゃ、来い、俺が新しい技おしえちゃる、
とばかりにじゃれかかるのだが、

そんな犬同士の微笑ましい格闘ごっこ。
周りの人々も思わず笑顔笑顔、で見守っていたところ、

いきなり飛び上がったその子犬の飼い主、

わああああ、やめろ、やめさせろ、なんだよ、なにすんだよ!

と騒ぎ始めた。

どうも子犬が押し倒されて、キャンキャンと鳴いたものを、
悲鳴を上げている、と勘違いしたらしい。

周りの人々は、いや、大丈夫、大丈夫、遊んでるだけだから、と
笑っているのだが、
その子犬の飼い主、やおらに犬達の輪の中に飛びこむや、
自身の子犬を抱え上げると、それでもじゃれかかる犬達を、
こともあろうに蹴りつけ始めた。

おい、お前、なにすんだよ、とやにわに殺気立つ飼い主たち。

お前の犬が俺の犬を噛んだからだろ。飼い主のくせになぜ止めないんだ。

馬鹿か、お前は。ただ遊んでいただけだろ。

これが遊びか。噛んでたじゃないか。うちの犬が怪我でもしたらどうするんだ。

そう言って、俺の犬を蹴りやがって。俺の犬が怪我したらどうしてくれるんだよ、この野郎。

と、飼い主同士がいまにも掴み合いを始めそうな怒鳴り合い。

で、まあまあまあ、とやって来た仕切りたがり屋。

だから、大丈夫。おたくの犬も噛まれてないし、この子たちも噛んだりはしないから。

したところ、その新参者の飼い主、

うるさい。お前に何が判る。すっこんでろ、と偉い剣幕。

と言われると、言われたほうも、なんだよお前、いまなにを言った?もう一回言ってみろ、

と売り言葉に買い言葉。

そんな飼い主たちの怒鳴り合いを心配そうな顔をして見守る犬達。

みな一様に耳を伏せて、目を見開きながら、なんだなんだ?と遠巻きに見ているのだが、
当の飼い主の胸に抱かれた子犬、かわいそうに怯えきって身体中を縮こまらせ、
いまにもおしっこをちびりそうな風である。

という訳で、そんな騒ぎをちとーっと見ていた常連達。

まさに、犬のじゃれあいの引き際ではないが、
喧嘩の分け時の呼吸だけは熟知している、と見えて、
あちこちのベンチから立ち上がったのはまさに同時。

おいあんたら、とおもむろに。

喧嘩なら外でやってくれないか?犬を置いてさ。犬が怖がるだよ。迷惑なんだかな。

なんだと、他人事だとおもって、と振り返る飼い主に、

ほら、お前、自分の犬を見てみろよ。そんなに怯えきってかわいそうに。
お前の声に怯えてるんだぞ。ヘタするとトラウマになるぞ。
ほら、喧嘩するならその子を預かっといてやるよ。あとはその辺の野原でいつまでもやってろ。

なあ、と振り返られた途端、いきなり飛びついて来たブッチ、

喧嘩はやめて、喧嘩はやめて、とまさに必死の形相。

それを見た常連達、まさに爆笑である。

ほら、こうなっちゃうんだよ。飼い主が喧嘩ばかりしてると。

判った判った、ブッチくん、喧嘩はしない、喧嘩はしないから大丈夫、と頭を撫で撫で。

さあ、お前ら、喧嘩は終わりだ、さあボール遊びだ、用意はいいか、

と途端に色めきだった犬達。待ってました、とボールの下に全員集合。

あんたの気持ちは判るよ。誰でもそうだ。俺もそうだった。みんなそうだった。そのうち判るよ、としか言えないがね。

みんな自分の犬が可愛いんだよ。だから自分の犬を愛するみたいに、人の犬も愛さなくっちゃだめだよ。犬を蹴るなんて最低だ。次にやったらまじで警察よぶぞ。

あんたはあほなのはいいけど、その犬には罪はないわよ。犬が可愛いならあんたもその臆病でヒステリーな性格を早く直すべきね。犬を不幸にするわよ。

と常連達のそんなこんなの優しいお言葉に、

うるせーばか。お前らもそのクソ犬どももみんな死んでしまえ、と捨て台詞を残して帰っていく子犬の飼い主。

やれやれ、と皆、顔を見合わせて。

俺達にもそういう時期があったよな。ああ確かに、と思わずニヤニヤ。

まあいいじゃないか、誰でも自分の犬は可愛いんだしさ。犬を愛しているってのはまあそれだけでもいい事だ。

まあね。それがいつまで続くか、なんだけどさ。

ああいうのに限ってすぐに飽きちゃったりとかするんだよな。

あるいは、あの犬が飼い主そっくりの性格になって、やれやれ、半年後が目に浮かぶな。

とかなんとか。

で、とトッドが笑っている。

お前、なにやったって?

なにが?

だから、俺も同じようなことやってたって、言ったろ?

ああ、まあな。こいつが子犬の頃な。

なにやったんだよ。

ピットブルに襲われてな。飼い主が止めるどころか、やっちまえ、殺しちまえ、とか言いやがって。

殺しちまえ?そリャ凄いな。闘犬かなにかか?

いや、知らねえ。ピアスした生意気な餓鬼。後で聞いたらただのドッグウォーカーのアルバイトだったんだけどさ。

で?

なにが?

で、お前どうしたよ。

まあな。まあそういう時期もあったんだよ。

だから、どうしたんだよ。

ブッチを柵の外に逃がして、

で?

まあ文句を言ったよ。

殺しちまえ、ってか?

まあ、そんなんだな。死ぬのはてめえだ、ちょっと来い、ぐらいのことは言った。

で?そいつは謝ったのか?

いや。調子に乗って、うるせえ、チャイニーズ、かかって来いとかなんとか、言うからさ、まあ下は砂地だったしね。

で?

顔洗ってやったよ。うんこまじりの砂で。ピットブルに舐めてもらってたぜ。犬は可愛いよな。どんな奴でも泣けば必ず慰めてくれる。

途端に大笑いするトッド。やったやった、そうこなくっちゃ、と大はしゃぎである。

で?

あ、まあ逃げたよ。お巡り呼ばれると面倒くさいからな。捨て犬を貰い受けたのは拾ったのはいいが、その為に俺が刑務所入ったらこいつはまたシェルターに逆戻りだ。

まあ確かに。

で、そこのドッグランにはしばらく行けなくなった。ブッチにしたらいい迷惑だ。馬鹿をやったよ。

が、しかし、そう、あれからブッチの態度が変わったのである。
それまで、まさに暴虐武人の限りを尽くしていたこの暴れん坊ブッチが、
確かに確かに俺に対して一目置くようにはなったのだが、
それと同時に、ちょっと声を荒立てるととたんに身を丸めて怯えた仕草を見せるようになってしまった。

大人の喧嘩は、子供には見せちゃいけない。それは絶対だ。絶対の絶対にだ。
子供にまず教えなくっちゃいけないのは、暴力はペイしない、ってこと。
あるいは、暴力は強さでもなんでもないってことだ。

いやあ、経験者の言葉は深いね。いやあ、はははは、深い深い。

うるせえ、なんとでも言え。

という訳で、日曜日のドッグラン。なんとも微笑ましいばかりである。


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プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾歳月
世界放浪の果てにいまは紐育在住
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

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