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シンジ ザ・メンヘラ・キラー

Posted by 高見鈴虫 on 23.2011 嘗て知った結末   0 comments   0 trackback
知人のやっているバンドのおっかけであるシンジ君は、
30を過ぎてジャパレスのウエイターだが、
だからと言ってバンドをやってる訳でもダンサーを目指している訳ででもなく、
言うなればただのウエイターである。

がそう言えばシンジ君、
バンド系やらダンサー系に特有な、トンガリ、のようなものが一切なく、
誰でも気楽に話しかけられう実に和やかな雰囲気を持っている。

そういうタイプは俺の周りには珍しので、思わず面白半分に聞いて見れば、
一応こちらには留学でやってきていてそれなりの大学も卒業しているらしい。

通常、ESLのクラスで数年ぶらぶらとしながらウエイターをして口に糊し、
で、大学卒業後もそのままウエイターというケースが多いのだが、
このシンジ君の場合、大学は地方だったのでわりと真面目に勉強してすんなりと卒業、
その後ニューヨークに来て某不動産屋に入社したが、
そこで「病気」にかかって休職。
病気療養中にいつしかクビになり、いまはこうしてウエイター稼業。

まあウエイターでもなんでも食っていくには困らない、という話。

ほら、俺、余計なことやってないし、というのは、つまり、バンドやダンスなど、
余計な夢を見ていないから、ということらしい。

が、このシンジ君。それではいったいなにをして暮らしているのか、
とよくよく聞いてみれば、つまりはこれ、おんな、いわゆるセックスがしたかったそうである。

だって、バンドやってる奴だってダンスやってる奴だって、
偉そうに言ってるけど、それって結局、女にもてたいって、いうか、
つまりはせっくすがしたいからそういうことやってる訳でしょ?

というのが彼の考えである。

そうか?と聞けば、そうっすよ! と即答するあたり、
かなりの確信を込めてそう信じているらしい。

でも、ほら、俺とか、割りと特殊技能とかあって、そんなバンドとかダンスとか、
そんな余計なことしなくても、おんなをGETできるんすよ、なそうなのである。

が、そう、そういうシンジくん、確かに人当たりは良さそうなのだが、
トンガリが無さすぎ、というか、まあ言ってみれば見るからにヘタレ系、
どう見えても女にもてそうには見えない。

が、そう、蓼食う虫も好きずき。こんなのにひっかかっちゃう女も居ない訳ではないのだろう、
と思っていれば、
いや、実はそうでもないんだよね、というのが、彼と同じレストランでウエイターをやる我が友、
バンドマンのたけしくんの話。

割りとさ、え!?っていうタイプの子とか平気でGETしちゃってさ。
俺まじでちょっと尊敬してたりすんだよね、という話。

で、よくよく話を聞いてみたところ。

それはね、つまりは、メンヘラなんすよ、という。

メンヘラっていうのはつまりは、そう、メンタルヘルス、つまりなんとうか、精神病まで行かなくても、
うつ病とか、神経症とか、まあそういう心を病んだ女達、それをまあ、狙えば百発百中。

実はね、というシンジくん。

大学来てこっち来て、不動産屋辞めた理由ってのがこのメンヘラ。

実は地方大学に居た時からまじうつ病で、日本帰る度に薬貰って帰って、
ってのを繰り返していて、で、大学卒業したら治るだろ、とか思ってたら、
仕事初めたら尚更悪くなって。

で、保険もないし、で、どうしよう、とか思ってたら、
周りを見ると、割りとそういう人って沢山いるっていうか、
同じ病気の人って、すぐに判るんすよ。

で、ごめん、あの、薬、ちょっと分けてくれない、って頼み込んで。
で、高くでも買うから、とか言って電話とか聞いて、
で、そう、最初はそういう、なんというか、止むに止まれぬ事情だった訳。

で、ほら、メンヘラの子たちって薬ないともうどーんって落ちちゃうんだけど、
薬飲むとその反動で、カキーンてはねちゃったりとか良くあるんだよね。
で、そのはねちゃった時って無性にせっくすしたくなっちゃったり、とかあってさ。

で、俺とかも同じ病気でそういう事情良く知ってるからさ。
で、そう、なんというか、同じ病気の患者同士で、お互いに治療の延長、助けあい、
みたいな感じで。

で、ウエイターを始めた後、同僚のウエイトレス、及び、そのお客たちの中でも、
同様の病気を抱えた人々をリストアップしていって、
で、あの、あんた、◎◎でしょ?実は俺もそうなんだけどさ、
なんて話をすると、もう、これ、百%、ぜったいに乗ってくる。
で、医者の話とか薬の話とかしてると、もうその子がどれぐらいの症状か、
とか判って、で、お兄さんとして相談に乗ってやるよ、
とか言うと、もうイチコロなんだよね、これが。まさに面白いぐらい。

という訳で、人呼んで、シンジ ザ・メンヘラ・キラー。

そのレストランの同僚達もなんだかんだでお世話になっているらしく、
いやあ、まじで、怖くなった。感じるとか、悶えるとか、そんなレベルじゃない。
もう、なんていうの?キチガイっていうかさ。

でもさ、と老婆心の俺。
でも、そんなキチガイっていうか、精神薄弱の女、しかもらりってんだろ?
そんなのとやって面白いのか?

だって、とシンジくん、それ言ったら、AV女優なんてみんなメンヘラですよ。
メンヘラだからAVなんか出るのか、AV出たらメンヘラになったか、
たぶん両方だろうけど、あんなのに出る女、まともじゃないっていうか、
まさにメンヘラの巣窟でしょ?
みんなそれ観て抜いてるんだから結局そうでしょ?

そういうもんか?

そうっすよ。そういうもんすよ。

なんかちょっと違わね?とは思いながら、やけにスコーンと明るい顔でそう言い切るシンジ君を観て、
まあ俺の知ったことじゃねえし、と思って、まあがんばんな、と言っていたのだが。

で、そうこうするうちに、思った通り、というかなんとういうか、
いつのまにかシンジ君は店を休むようになって、そしていつの間にか辞めてしまったらしい。

もっと稼ぎの良い店に移ったのか、あるいはもっとメンヘラの客の多い店を見つけたのか、
と思いきや、日本に帰ったのだという。

つまり、もうやりきった、というわけか、と笑えば、そうでもないらしい。

まあぶっちゃけ、メンヘラこじらせて、ほぼ日本に強制送還。

うへええ、と俺。
でも、やはり、ああ、やっぱり、とも思う。

つまり罰があったんだろ、と言えば、それ洒落にならないっすよ、と言われた。

よほどとんでもないことになっったのか、まあ自殺未遂とかそんなんだろ、
と言った途端、まじでねえ、ほんと、洒落にならなくて、という話。

よりによってあいつ、店の厨房で手首切りやがって・・・

まじかよ。

が、そんな話聞きたくもないので、聞かないことにしたのだがな。


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プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾歳月
世界放浪の果てにいまは紐育在住
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

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