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「朝日の当たる部屋」

Posted by 高見鈴虫 on 28.2013 音楽ねた   0 comments   0 trackback
バンドマン時代、
生活のほとんどはリハーサルスタジオの中、
あるいは、せっせとバイトに勤しんでいたのか、
と言えば、実はぜんぜんそんなことなかった。

で、学校にも行かずになにをしていたのか、
と言えば、まさに、溜まり場。
そう、溜まり場に溜まっていたのである。

で、その溜まり場、という場所。
かの新宿駅から歌舞伎町を抜けた明治通り沿いの2LDKのマンション。

バンドの親衛隊のひとりであった九州の医者の息子のタケシ君。
親の仕送りで予備校に通う、というのは嘘ばかり。
もうすでに代ゼミ留年3年目という強者で、
今となっては親もすっかり諦めモード。
そのモヒカン刈りを観ても肩の逆卍のTATOOを観ても、
もはや何も言わなかったそうだ。

という訳でその明治通り沿いの溜まり場マンション。
まさにそんなところに住んでいるのもオミズ関係者ばかり。
管理人の爺さんも慣れたもので、俺達のような連中が
赤や黄色の髪をして安全靴の踵をドカドカやりながらやってきもても
新聞から顔をあげようともしない。
という訳で、みなさん、まあフリークス同士、仲良くやりまっしょ~
みたいな訳で、なかなかごきげんな場所であった訳だ。

で、
練習の前後、あるいはライブの打ち上げから、
宿泊からと、完全に楽器庫兼溜まり場となっていた訳で、
ドアの鍵はいつも開けっぱなし。
つまり、365日24時間いつどんな時に行っても必ず誰かがいる、という、
まさに便利この上ない場所であった。

溜まり場という性質上、まさにとっておきのものが集まっていて、
取っておきのCDからそのころはまだ主流であったVHS、
あるいはレーザーディスクなんてものがあって、
皆で持ち寄った最高のCDから、
とっておきの裏ビデオがまさに山のよう。
これだけあればまじで商売できるな、と、
正直それだけはまさに自慢であったりもした訳だ。

という訳で、
バンドマン時代の俺は、実は時間があればたいていその溜まり場にいた。

ゴミだらけの6畳のリビングの隣に、いつも布団が敷きっ放しの寝室。

溜まり場という性質上、家中がゴミ屋敷。
まさに足の踏み場も無い、という状況ではあったが、
壊れた座椅子を枕にいつも床にごろごろ寝転んだり。

窓の外には隣のビルの屋上の、
「武富士」の看板がどーんと広がっていて、
その下にはいつもフィリピン人のじゃぱゆきさんのお姉さん方が、
サンダルつっかけてやっほー、と手を振ったりしている、
とまさにレイドバックな環境。

で、ねえ、お姉さん、こっちきて一緒に遊ばない?
ヘイ、ガールズ、カモンカモン、カムヒヤ、レッツプレー、
とかやってると、
どっも~、おじゃましま~す!とやってくる差し入れガール。

おお、来たきた、差し入れ差し入れ、と一挙に盛り上がる訳で、
まさにその差し入れを待って一日中を過ごしていた、と言っても過言ではない。

という訳でその差し入れガールズ。
いちおう名目上はバンドのファン、ということになっているが、
彼女達が俺たちのやっていたパンクロックという音楽に、
果たしてどれほどの理解があったのか、まったく知るところではない。

ただ、まあ、おしゃれな格好して派手な男の子たちとちゃらちゃらしたい、
というのがその行動原理の全てであった訳で、
いちおう、誰が誰のお目当て、みたいな割り当てはあるにはあったが、
少なくとも俺たち自身はそんなこと面倒くさいだけ、
ぜんぜん気にもしていなかったし、彼女達だってそうだろう。

まあさ、楽しけりゃいーんじゃない?と言うか、
余計なことはとりあえず、
まあ、とりあえずは思う存分ちゃらちゃらしようじゃないか、
という雰囲気が既に暗黙の了解として出来上がっていた訳だ。

で、その女の子たち。

まあほとんどがプータ。
シンジュクの専門学校やらそこぞのなんとか学校に通っている、
と口で言ってはみても、で、なにをやってるわけ?と聞いて答えられる筈もなく。

訛りもまちまちならば、言ってることもやってることもまちまちで、
まあ、とりあえず、東京に出てきて、
で、とりあえず、それなりに東京らしい暮らしってやつを覗いてみたい、
なんて具合から、すっかり妙なところに足を突っ込んでしまった、
という人々。
下手をするとただの家出失踪人と大して変わらないどころか、
そんな家出半分少女が始終隣りの寝室で寝ていたり、
あるいは、そんなこんなで流れから風俗に勤め始めて、
なんてのもいるにはいた。

とまあ、そんな俺たちにしたところで、
バンド、以外、なにをやっているかと言えば、
一人残らず正体不明。

しかもそのバンドと言ってみたところで、
ライブの前だというのに練習もせずにこんなところでゴロゴロ差し入れを待っている訳で、
まあ、そう考えただけでも、知れたものだったに違いない。

という訳で、そう、
この溜まり場には、まさにそういったどうしようも無い人々が、
来る日も来る日も次から次へと集まってきては、
日がな一日なにをするでもなくだらだらしていた。

という訳で、なんだかんだと言いいながら、
四六時中のべつまくなし人がやってきた。

バイト帰りに学校帰りに。昼休みに中休みにずる休みに、
誰々の紹介で、と、とりあえずありとあらゆる人たちから重宝されて、
仕舞いにはハワイで噂を聞いてきた、なんていうヒッピーや、
下手をすると日本語のまったく喋れないどこぞの色黒の輩やら、
大久保あたりから迷い込んできた南米娘、なんてのまで、
まさに、溜まり場の醍醐味の全て、といった状況を呈していた訳だ。

という訳で、そうやって溜まり溜まった溜まり場の人々。
ああ、腹減ったなあ、誰か下のローソンに買い出し行ってこない?
とか言っているうちに、

チリーン!ヤッホー、誰かいる?差し入れ持ってきたよ!

の声が響くわけだ。

という訳で差し入れガールズ。

部屋に入るなり、なにこれ、と眉を顰めて、
まるで挨拶代わりのように、きったね~!と大笑い。

ねえ、もう、座るところも無いじゃない、食べ物どこ置けばいい?
なんて言いながら、
下手に腰など下ろしたとたん、
うわ、なにこれ、と座布団の裏にぶちまけられた吸殻やら、
あるいは、ジューズやビールやそのたもろもろ。

げええ、買ったばっかりのスカート、と半べそをかく前に、

待て、待て、待て!

その前に、その服、脱げ。
ほら、そっちの箪笥に、バンドのTシャツとか入ってるから、それに着替えろ、
となる訳で。
そんなライブの物販用のTシャツをばんばん配ってしまっては、
そんな差し入れガール達、
みんな揃いも揃ってうちバンドのロゴ入りのTシャツ一枚。
わーい、貰っちゃった、と喜ばれたりもしたものなのだ。

という訳で、午後の3時も過ぎれば、
さあ、そろそろ出掛けるか、と重い腰を上げて、
その時ばかりは一同、起きだしてよいしょよいしょ、と荷物運び。
今日はどこだったっけ?
さあ、ロフトか屋根裏かクロコダイルか、
と首を傾げながら、ま、いっか、行けば演らせてくれんじゃない?
とかなんとか。

で、おはよーございまーす、と箱入り。
で、対バンにちーっす、と挨拶しながらマイクチェック。
がらんとしたフロアにヒデボーのギターがガガガガと響いて、
じゃあ、バスドラお願いしまーす、次スネアお願いしまーす、
じゃタムタム一個っつ、では、なんかリズムお願いしまーす、
とやりながら、
チェック・ワン・ツー、チェックチェック、ワンツー、
と馬鹿みたいに繰り返すユージ。
で、ボンボンボン、とケンちゃんのベースが響き初めて、
じゃあ一発、と初めて、1-2-3-4、おっとっと、あれ、出だしから間違えた、
と大笑い。

で、そんなマイクチェックが終わって、
じゃ、本番よろしくお願いしまーすとか言われて、
で、本番までどーする?とか言いながら、
またそのあたりぶらついてると妙なのに絡まれて喧嘩、
あるいは下手をすると職質を食らって、なんてことになることは見え見え。
そういやああの子どこ言った?またどっかに拉致られてんじゃない?
とか洒落にならない冗談を言いながら、
じゃあ、まあ、いったん引き上げますか?
と溜まり場に帰ってくれば、人の居ぬ間に、
誰かさんと誰かさんが本番中。

あっあっあっ!と真っ最中の声が響く中、
いやはや、なんか今日モニター甘くね?
とか、
なんであそこおまえとっちたの?あれはさあ、
なんて話を平気でしている訳で、
で、間に挟まった女の子たち。

ねえねえ、あれ誰と誰?
さあ、知らないけど、まあどうでもいいじゃん、
とか笑いながら、
そう言えばさあ、とか言いながら
しっかり隣りの女の子のパンツの中に手が入ってて、
おい、お前、ギグの前にやんなよ、ステージでダレるぞ、とか。
いや、一発抜いておいたほうが肩の力抜けていいんだよ、
なあ、とか言いながら、
それってやっぱ楽器によりけりでしょ?
やっぱ、ドラムとボーカルは抜いちゃうと駄目だよな。
そうそう、ギターとベースはね、体力系関係ないし、
とかなんとか。
でもさ、こないだのクロコの前とかさ、
あれだけやっててもステージ割りと良かったでしょ?
ばか、あの時のテープ、後で聴いたらメッチャクチャでさ、
なにそれ、俺まだ聴いてないぜ、
うそだろ、こないだ聴いたじゃんかよ、
あ、こいつ、ほら、なんてったっけ、あの、ミカだっけ、チカだっけ、
ユカだろ、ユカ。
そうあの紫のウィグの子、とさ、ずっとそっち籠っててさ。
ああ、もうあの子来ないかな。
次ユカちゃん来たら俺行っちゃお。
あ、俺も。俺も行くからよろしこ。
誰も連絡先知らないっていうかさ、顧客リストっていうかファンの連絡先リストとか、作ってないってなにそれって感じでさ。
でも連絡先とか知ってたら、ガンガン電話しちゃって大変じゃない?ねえ、いまひまー?とか。
でもさ、事務所のギンさん、ファンとはすんな、とか言ってたじゃん。客なんだから、とか。
そんなの言わせておけよ。馬鹿かってさ。糞ヤクザの分際でさ。

とかなんとか言ってるうちに、
やべ、出番何時ってったっけ?
あ、8時?9時?10時?
あ、やべ、8時だよ。まさか、なんで?俺ら今日一発目?
まあ取り敢えず行って見るか。
行ってみますか。
さあ、みんな出掛けるよ~!

という訳で、打ち上げやら打ち合わせやらを終えて12時過ぎ。
ただいま~と機材を運び込んで。
したら、あれ?なんだよ、またかよ、と奥の部屋からあんあん声。
俺らが労働して帰って来たってのにけしからんなあ。
とか言いながら、どっも~、お邪魔しまーす、と上がり込んで。

ああ、まじ風呂入りてえ。
なにお前着替えなかったの?
いや着替えたけどさ、なんかすっげえ臭えって感じ。
あじゃあどうせなら、これ洗濯しといてよ。
とか言いながらまた湯船ん中に突っ込んで忘れちゃうんじゃね?
ねえ、私も。汗ビチョビチョ、ねえ、一緒に入っていい?
ばか、いいよ狭いんだから。
背中流してあげるから、ね、一緒に入ろ。

とかなんとか、で、ねえ、あつら、風呂入ったまま出てこねえじゃん。
中でやってんだろ?
なにを?
洗濯。

という訳でも頭も身体もすっかすかになったライブの後。

じゃあさっそく、とさっきのギグのテープを聞き返し始めた途端、
まった~!と風呂場から飛び込んで来るユージ。
最初から、最初から聞こうぜ、と、また巻き戻し。

で、最初の一回目、誰も口を聞かず。
で、ようやく二回目から、うーん、と顔を見合わせて苦笑い。
で、三回目になってようやく、

ま、どう?
ま、こんな感じ?
ま、そうだね、って。
ま、良かったんじゃない?ノリだけは。
ノリだけはね。
そう、ノリだけは。

とようやく息が抜けて。

で、ねえそういえばさあ、
この間またロンドンから届いたあれ観てみようよ、
なんてことになって、
で、まさにホームシアター。
大音響で鳴り響く虹色の映像を見ながら、

おおおお、すっげええ!とかみんな素直に驚いて。
やっぱ違うよな。おいおい、次、あれ、やろうぜ、あれ、かっちいじゃん。

で、
あ、そういえば、と誰かが置いていったガンジャの吸いさし。
これまだちょっと残ってない?
とかほじくっては空き缶を改造した簡易パイプですぱすぱ。

ゲホゲホ、なんかアルミの味しかしねえけど、ま、どーぞ、

なんて感じで、回し飲みしているうちにみんないつしかドープモード。

で、そうこうするうちに、ああ、くっそ、俺なんであそこまた間違えたかな、
とかむかむかしてきて、
でもなんとなく、やりきったな、という達成感みたいなものはあって、
で、俺もう疲れたから寝よかな、
なんて感じで隣りの寝室に移動すると、
ねえ、一緒にねよ、といつものミナ。
いいよ、暑苦しいんだからよ、
とは言いながら、
なんだかんだいいながらTシャツの裾から入れた手でお尻のあたりをもぞもぞ。
しながら、ちょっとわりい、と既に寝ている人々の間に入り込んで、
としていると、うーん、とか悩ましげな寝言。
だれこれ?さあ?とかミナとクスクス笑いながら、
ねえ、とか言いながら股間に置かれた手、
おっと、なんか、良い感じ、としているうちになんかまじ気持ちよくなってきて。
で、隣りで寝ている女の子、寝返りを打ちながらしっかり聴いているのは知りながら、
ちょっと失礼、とばかりにシーツ被ってそのままミナに乗っかって。

なんてしているうちに、
隣の部屋の連中も一組み二組と寝室に流れて来て、
で、あっちこっちに隙間を見つけてはあんあん大会。
とかなんとか言いながら、ミナがトイレに行った隙に、
隣りに寝ていた女の子、
ねえねえ、寝てるの?あなたは誰ですか?答えないならいれちゃうよ、
とか背中からにじりよって、でふと見れば、
おっと、パンツ履いてないじゃんよ、と。

で、帰って来たミナの舌打も尻目に二回戦。
で、自棄糞のミナがまたどこかの隙間であんあんやりだした頃、
なんか閉めきったカーテンの間から薄日が刺して来て。

ああ、眠い、今日もバイトぶっちかあ、と生欠伸をしながら、
今日もどこの誰とも判らぬ女の子を腕に抱えて眠りに着くのである。

という訳でバンドマン時代。
今となってはもう思い出すのもためらわれるのだが、
この歳になってようやく、あれはあれで良い思い出だったのか、
という心の余裕も出てきた訳だ。

がしかし、ふと思う。

あいつらまさか、いまだにそんなこと、やってるわけ・・・ねえか、さすがに。


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プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾年月。
世界放浪の果てにいまは紐育在住。
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

©終末を疾うに過ぎて...
無断丸々転載・そのまま転写はご勘弁ちょんまげ

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