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オーストラリアンキャトルドッグという犬 その八

Posted by 高見鈴虫 on 03.2013 犬の事情   0 comments   0 trackback
オーストラリアン・キャトル・ドッグという犬種が、
日本でも名前が知れてきたのであろうか。

そしてこのオーストラリアン・キャトル・ドッグというとんでもない犬種が、
いったいどういった形で日本では紹介されているのだろう。

ちなみに俺は、我が家のブーと知り合うまで、
そんな犬種があることを知らなかったのだが、
犬種:オーストラリアン・キャトル・ドッグ・MIXと書かれた書類を前に、
アニマル・シェルターの係員から念を押された事がある。

もしもオーストラリアン・キャトル・ドッグと言う犬に興味がある人のために、
ブーを貰い受けた際、アニマル・シェルターで言われたことを書いておこうと思う。
参考にして頂ければ、とおもう。

まず、オーストラリアン・キャトル・ドッグは特殊な犬である。

確かに、このシェルターでも、まさにこれほど可愛い子犬は見たことがない、
と誰もがいう。
その姿は元気の塊。
問答無用にじゃれまくるそのいたいけな姿に
誰もがもうメロメロ。

が、しかし、その可愛さに騙されてはいけない。

確かにオーストラリアン・キャトル・ドッグは世界で最高の犬だが、
オーストラリアン・キャトル・ドッグが世界で最高の犬であるためには、
飼い主も世界最高の飼い主である必要がある。

果たして最高の飼い主とはなにか、

ベタベタと身体を撫で回すこと、
美味しいトリートをお腹いっぱい食べさせるうこと、
可愛らしい服を着せたり、一緒に寝てあげたりしてあげること。

そう思っているなら、まずはこの場でご辞退頂きたい。

オーストラリアン・キャトル・ドッグにとって最高の飼い主とは、
まさに、一緒に「運動」をしてくれる人、である。

オーストラリアン・キャトル・ドッグは他に例を見ないほどにアクティブな犬である。

そのタフさは並の人間ではとてもじゃないが付き合い切れない。

この犬はもともとオーストラリアの牧場で牛を追うために作られた犬である。

その強靭さ、運動能力、そして知性は他のどんな犬と比較しても群を抜いている。

そんなオーストラリアン・キャトル・ドッグを操るためには、
飼い主は、それ相応の覚悟が必要となる。

まずは運動である。

少なくとも、そう、最低でも一日4時間は、激しいトレーニングを必要とする。

その辺りをだらだら歩いているだけではダメだ。

走ったり、登ったり、何かを追いかけたり、そこまでクタクタになるまで運動をさせて、
初めて、オーストラリアン・キャトル・ドッグに満足を与えることができる。

と、そこまで、聞いて、さあ質問です。

あなたは、一日4時間、この犬の散歩をすることができますか?

そしてそれを、少なくとも、そう、少なくとも5年、10年、いや、15年、
ことによると20年間、

毎日毎日、続けてやることができますか?

この犬が幸せになるか、ならないかは、まさにその一点に集約されます。

一日4時間の散歩をしてやれるか。

もしそれが無理、と思うのであれば、悪いことは言わない。
いまのうちに諦めた方がよい。

さもなくば・・・・まさに・・・・とんでもないことになる・・・・

とんでもないこととは?

と思わず息を飲んで質問をすると、ふっと笑った係員。
まさに、とんでもないことよ。
つまりは、そう、ここに帰ってくることになるような・・

噛み付いたり、とかしますか?とうちのかみさん。

いいえ、と即座に係員。

飼い主は、そう、飼い主だけは、絶対に噛みません。

ただ・・・とむっと口をつぐんで、まあ、後のことはじゅうじゅう勉強してください。
本屋に行けば、この犬、そうオーストラリアン・キャトル・ドッグ向けの専門書が出ているぐらいだから。

さあ、心の準備ができましたか?
あるいは、二三日よく考えて、そして戻ってきても良いですが。

それまで、取っておいて貰えますか?と俺。

いや、その間に、飼い主として適切である、という方がいらっしゃったら、
その方にお譲りすることになります。

うーん、と思わず。
が、しかし、すでに心は決まっていた。
どんなことがあっても、この犬だけは離さない。

という訳で、この犬を飼うことができるのは、まさに本物のドッグ・ラバーだけ。
あなたは正真正銘のリアル・ドッグ・ラバーになる覚悟がありますか?

いいですか?一日4時間、この犬のためにだけに費やすんですよ?
それがなにを意味するか判りますか?

毎朝、祝祭日も関係なしに、毎朝必ず5時に起きて、
そして毎日、仕事が終わったとたんに家に飛んで帰って、
そして寝るまでの間はとにかく散歩。

雨の日も風の日も吹雪の日にも炎天下の日にも、
10年間15年間、さもなくば、20年間。
夜遊びもパーソナルライフもなにも無し。
つまり、あなたはほぼ全人生をこの犬に捧げることになるんですよ。

あなたはそこまでして、この犬のために尽くしてあげることができますか?

うーん、と思わず、かみさんと顔を見合わせて。

ちなみに、と別の係員。

この犬種は、別名クイーン・オブ・リターン、と言われているんです。

クイーン・オブ・リターン?

そう。一度貰い受けられて、そして帰ってくる率がとても高い。
キングはダントツにピットブルテリア。そしてこのオーストラリアン・キャトル・ドッグがダントツの2位。

それはなぜ?

そう、つまりは・・・

取り敢えずは元気過ぎて、
そのために毎日の運動が大変で。
毛が抜けたり。
ちょっと気難しいところがあって、
子供が苦手で、
喧嘩が多くて

そんなに大変な犬なんですか?

いやだから、と係員。

散歩さえしていれば大丈夫なんです。一日4時間の散歩さえちゃんとしていれば。

だが、それがなかなか・・毎日となるとね・・身が持たない・・・

で、ギブアップして・・・

でもね、ここに戻ってきたオーストラリアン・キャトル・ドッグは、もう既に、元のキャトル・ドッグではないのです。

それはなぜか?

つまり、キャトル・ドッグはともて飼い主への依存度が高い犬で、一度飼い主との信頼が崩れると、多いそれとは別の飼い主を信用しなくなってしまうんです。

はあ。

まるでこのこのように天使のように可愛かったキャトル・ドッグが、一度飼い主がギブアップしてシェルターに戻されてから、たった一人にさえも身体を触らせることを許さずに、そのまま餓死した例をいくつも見ています。

つまり、そう、一度パートナーと決めた飼い主には、一生の間、なにがあっても忠誠を尽くす。一度それが壊れると、もう誰にも手がつけられなくなってしまう、ということで。

ワン・オーナー・ドッグなんです。一人の飼い主以外には絶対になつかない。

本当に情が深い犬なんだよ。

それがオーストラリアン・キャトル・ドッグの魅力でもあり、そう厄介な点でもある。

つまり、そう、オーストラリアン・キャトル・ドッグはそういう犬なんです。

ただ、犬を飼う、という意味では、この犬にまさる犬種はありません。

もしあなたが心の底からこの犬を愛してあげれば、この犬はまさにあなたにとって最高の犬になる。

という訳で、

まったく問題がありません。こいつのためなら俺の人生なんていくらでもくれてやる。
一日4時間、まったく問題なし。死ぬまで散歩してやる。
もうこいつなしでは俺の人生はありえない。絶対に離せない。一生添い遂げてやる。

と言い切ってしまったのだが・・・・


そして4年が経った。

その間に起こったこと・・・

まずは引越し。そして転職。
始終腰痛に悩まされ、テニスもバンドもできず、
夜遊びはいっさいできず、友達も減り、愛人は去り、
まさに犬以外では、自分自身の生活はなにもなし。

それだけでも十分だろう。
という訳で、まったくこの犬が来てからというもの、本当にろくなことがない。

まさに、悪魔。悪魔の申し子ではあったわけだが・・

この犬の最も悪魔的なことと言えば、そう、
もうこいつ無しでは生きて行けない、こいつがいなくなったらもう生きていく気がまるでないだろう、
とまで思わせてしまうところなのである。

そんなことを書いている俺の、その頭の下で、枕代わりにされたブーが、うーん、と唸っている。
いや、もうちょっと待って、もうすぐ終わるから。
その代わりに、という訳で、また耳からほっぺたからを舐めまわすのだが。

という訳で、オーストラリアン・キャトル・ドッグ、
まさに、ベスト・バディ、ソウル・メイトそのもの。

どこに居る時も、いつなんどきでも一緒である。
いつでも一緒にいたい、片時も離れたくない、と心底思う。

どんな犬、おろか、どんな人間にだって、これほどまでに心を分かち合える存在を俺は他に知らない。

つまりはそういうことなのである。

という訳で、このオーストラリアン・キャトル・ドッグ。

日本ではどう紹介されているかは知らないが、まさにそういう犬なのである。

人間辞めますか?キャトル・ドッグを諦めますか?

覚悟されたし、と言わせてもらう。


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プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾年月。
世界放浪の果てにいまは紐育在住。
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

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