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オーストラリアン・キャトル・ドッグと言う犬。その十 「「愛の代償」」

Posted by 高見鈴虫 on 03.2013 犬の事情   0 comments   0 trackback


ちょうど去年の今頃の時期、

土曜の朝のセントラルパークで、

さあ、ボール遊びでもやるか、
とはじめたところ、
おっと、いきなり目の前を、目にも止らぬ速さで走り抜けていく青い塊。
で、その後を、まさに気が触れたように追いかけるラブラドールからハスキーからドーベルマンから柴犬からの一団。
その先頭を走る子犬。まさに、ブッチ切りの早さである。

なんだあのすばしっこいのは、と見れば、それはまさに、オーストラリアン・キャトルドッグ。
まさにピンボール。ロケットドッグ。

おい、ブー、ほら、なんかお前の子供の頃みたいなのがいるぞ、と言った途端、
よし、俺も、と飛び出したブッチ。
あっという間に他の犬たちを抜き去って、で、そのロケットパピーと共に俺の元に帰ってきた。

で、挨拶もせぬうちから、いきなり飛び掛ってきたその子犬。
あっという間に胸の上に飛び乗って来て、あとは揉みくちゃ。
顔中を嘗め回してはシャツのすそをうんうんと引っ張り始めてと大奮闘である。

まさにこれ、子犬の頃のキャトルドッグ、そのもの。

で、ようやく追いついてきた犬たち。

へっへへ、と赤い舌を出しながら俺にご挨拶。

どうだ、可愛いだろ、キャトルドッグのパピーは本当に可愛いな。

さ、行っておいで、と行ったとたんに、ターボが爆発。

あっという間に丘の向こうに消えている。

という訳で、飼い主のジャネットさん。

ども~、とご挨拶した後、

いきさつを聞いてみればまさにうちと同じ。

土曜日の朝にジョギングの途中で雨に降られて、
雨宿り代わりにアニマル・シェルターに足を踏み入れた途端にこの子と目があって、
で、胸に抱いたらもうぜったいに離せなくなっちゃって。

そうそう、その通り。うちもそうだった。

で、家に連れて帰ってみたら、家中で大運動会。

そうそう、家中を滅茶苦茶にされて。

でももう、可愛くて可愛くて、とまるでとろけそうな笑顔。

でも、この犬、本当に大変ですよ、と思わず。

一日の運動時間、4時間ですよ。

知ってます、とジャネットさん。でも大丈夫。

私、ジョギングが趣味だし。いまでも朝晩そのぐらい走ってるから。ちょうど良いジョギング・パートナー。

まあ確かに、最初は俺もそう思っていたんですがね、と苦笑い。

聞くところによると、ウォールストリートのバリバリのキャリアウーマンであるジャネットさん。
96丁目のイーストリバー沿いのハイライズのコンドミニアムに一人暮らし。

え、じゃあ、ここには?
はい、走ってきました、とのこと。
この子に引っ張られてたら、あっという間ですよ。

がしかし、と思わず。
女一人暮らしでしかも激務の金融系。
それでキャトルドッグと暮らすのはちょっと無理じゃないのかな、
と懸念しながらも、そんな話を知ってから知らずか、
いきなりジャンプして胸に飛び込んできたキャトルドッグ。
5ヶ月のマックス君。

こいつこいつ、と俺の腕の中で無茶苦茶に暴れまわった挙句、
次はこっちだとばかりにジャネットさんに飛びつくや、
もう顔から首からを嘗め回し。

やめてやめて、こら、やめなさいって、
と悲鳴を上げながら芝生の上を転げまわって、
まさにアルファー派でひたひた状態。

ほらブー、お前も子供の頃はあんなだったんだぞ。

という訳で俺が交代。さあ、マックス君こっちおいで、
と言ったところ、
なにを間違えたかブー君、いきなりよいしょ、と俺の腹の上に座り込んでびくとも動かず。

ははは、嫉妬してるんだ。
いやあ、そんな筈ないですよ、男同士だし。

という訳で、ブー君をご紹介。
で、これまでにあったことをかい摘んで。

ああ、なんか本当に判ります。自転車ですか。判りました。
ボール遊びとフリスビー。アジリティですか、そうですね。そういうのが必要ですね。

まあ3年ですね。3年はこんな感じです。でもそのあと、
まるで魔が落ちたみたいに落ち着きますよ。だからあと3年、がんばってください。

という訳で、念のために、なにかあったら何でも聞いてください、とメアドを交換したのだが・・・

とそんなジャネットさんからメールが届いた。

すっかり青年犬に成長したマックス君の肩を抱き、
ショートヘアーになったジャネットさんが、
本当に幸せそうに微笑んでいる。

やはり仕事を変わったのだそうだ。

いまはなんと国連で働いている、とのこと。

やれやれ、犬のためにキャリアを変更ということだろうか。
どこかで聞いた話だな、と再び苦笑い。

という訳で、まあその間に何が起こったのか、大体想像もつくというもの。

お給料も下がって、部屋も小さいところに引っ越しましたが、
その分休みも増えて、マックスとの時間も十分に取れるようになりました、とのこと。

なので、マックスと一緒にいれてとてもハッピーな毎日です。

思わず・・・・そう、苦笑いしか出ない。

とりあえずこいつが3歳になってちょっと落ち着いたら、
改めて今後のキャリアパスを考えようかなと思ってます、で締めくくってあった。

という訳で、いやはやである。

これも愛の代償という奴か。

キャトルドッグとの出会いから、人生がひん曲がってしまったひと、割と多いのではないだろうか。

がしかし、とわが身と、そしてこのブーを振り返って。

悔い無し、と言わざるを得ないよな、と思わず苦笑い。

まさに愛の代償である。そして現世のしがらみを捨てて得たものはと言えば、

と、目が合ったとたん、おい、ボール投げろ、と鼻をしゃくられる訳だ。

まったくやれやれである。


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プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾年月。
世界放浪の果てにいまは紐育在住。
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

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