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「安全基地になってやること」

Posted by 高見鈴虫 on 06.2013 犬の事情   0 comments   0 trackback


週末のドッグラン、
足を踏み入れたとたんにまた大喧嘩の前兆。

熱く焼けた砂埃を舞い上げながら、グルグルと本気唸りを繰り返す犬たちの中で、
悪童どもにしつこく追い回されてすっかりパニックになったコッカスパニエル。
ヒステリックな吠え声を響かせながら鼻の頭に皺を寄らせてこれでもかと牙をむき出している。

そんな騒ぎの中、よりによって飼い主は写真なんかを取っているわけで、
まったくやれやれである。

はいはい、判った判った、はい、ちょっと休憩!
と割って入ったとたんに、きょとんとした顔の犬ども。

で、窮地を救われたコッカスパニエル。ここぞとばかりに逃げ回るのだが、
それを面白がってまた追い回されて。

と言う訳で、やれやれ、と空いたベンチに座って、
おい、ブー、今日は混んでいるから早めに引き上げよう、
とは言うのだが、いや、ボールをやるまでは帰らない、
とがんばり続けられて。

そうこうするうちにさっきからのコッカスパニエル。
ベンチの下に潜り込んで防戦一方。
追い回す犬たちも思わずエキサイトして威嚇の歯をカチカチと鳴らし始め。

おい、うるせえぞ、てめえら、と思わず日本語。
うるせえ!好い加減にしろ!

突端、なんだなんだ?と振り返った犬たち。

うるせえって言ってんだよ、ともう一声怒鳴ってから、
こっちこい、とやると、みな、一斉にしゅんと肩を落として挨拶にやってくる。

なんだよお前ら、やり過ぎたら駄目だぞ。あんな子犬相手にして何やってんだよ。

と言う訳で、みんな並べて座らせて、頭を撫で撫で。
ついでに頭にちゅっちゅとキスをしていけば、みんなお友達と大喜び。

さあ、遊んでおいで、と送り出してから、ふと見れば、ベンチの下に隠れていたコッカスパニエル。
いまがチャンスだ、と走り出すや、一目散に俺のところに飛び込んで来て、
膝の上によじ登ってくる。

いやあ、助かりました。いやあ、ありがとう、とばかりに顔中を舐め舐め。

はいはい、判った判った、と撫で回してあげて、どうだ、ちょっとは落ち着いたか?
と顔を覗き込めばすっかり笑顔が戻っている。

はい。もう大丈夫。また遊んでおいで、と送り出したとたん、
なにを思ったかさっきの悪童たちの下に、キャンキャンと吠えながら飛び掛って行く。

なんだ、こいつ、まだやるのか?と途端に追回し始める悪童たちを、
へへん、捕まえられるもんならやってみろ、とばかりに逃げ回って、
いよいよやばい、と思うと一目散に俺の膝の上に飛び込んで来る。

はい休憩、と悪童ども、荒い息に身体を揺らしながら、
一人一人が俺の顔に鼻を寄せてキスキスの挨拶。
はいはい、良くできました、

とまあ、これが永遠に続く訳だ。

と言う訳でブー。

ねえ俺のボール遊びは?と一人でむくれている。

判った判った、はい、じゃあ行くよ、と始めた途端、
いきなり俺の足元に駆け寄ってくる小型犬たち。
だっこだっこ、とおねだりしては、膝に乗せたとたんに顔中舐め舐め。
これが一匹二匹から、どさくさにまぎれて大きいのから小さいのからと
いきなりの大騒ぎである。

これ、まさに安全基地だな、と。

そう言えばブーが子犬の頃も、ドッグラン中を滅茶苦茶に暴れまわっては、
いざやばいとなるといきなり俺の足元に逃げ帰ってきて、
いきり立って押し寄せてきた大型犬たち。
なんだなんだお前ら、と思わず俺が目を白黒。

はい、お座り。はい、お手。はい、キスキス、と繰り返す。
ねえ、おやつないの?とねだられては、
やばいな。ドッグランでトリートは禁じ手なんだがなあ。
飼い主に言うなよ、とはい、どうぞ、と分け与えているうちに、
いつしかドッグラン中の犬が俺の顔を覚えてしまったという次第。


まあ、しかし、うちのブーがやられるよりはましだがな、
と一人で納得しながら、いまとなっては、ドッグランに来る犬で俺を知らないものはいない、状態。

という訳で、ボール投げから喧嘩の仲裁から、
マッサージから虫歯のチェックからを、俺がやらされる羽目になった訳であるのだが。

という訳でそう、全ての飼い主に言いたい。

自身の犬の安全基地になってやること。

やばくなった時に逃げ帰ってこれる場所があれば、
犬たちも安心して遊べる訳なのだ。

どうすれば安全基地になってやれるか、といえば、
全ての犬に対して変わらぬ愛情を持ってやることである。

追う方も追われる方も可愛い可愛い犬な訳である。

追われる犬を庇ったのなら、追う犬にもしっかりと愛情を分けてやらねばならない。

こと、フェアな精神に敏感なこの犬という生き物。

しっかりとすべての犬に愛情を分けてあげれば、そうそうと無茶だってしなくなるというものだ。

自身の犬の安全基地になってやること。ご留意されたし、というところなのだが。。。
そこまでわかっている人、実はあんまりいないんだよねえ。

という訳で、今日も俺がドッグランに顔を出したとたん、
ドッグラン中の犬たちが俺の元に駆け寄ってくる、という次第。

大丈夫、俺が居る限りお前らは安全だよ。なにがあっても俺が守ってやるから。だから思う存分遊んで来なさい。

72丁目のドッグウィスパラーは実にそういう人なのである。


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プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾年月。
世界放浪の果てにいまは紐育在住。
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

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