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真夏の夜のトラビアータ

Posted by 高見鈴虫 on 24.2013 犬の事情   0 comments   0 trackback


朝の散歩の途中、またいつものようにボートハウスのカフェで朝食。

ベーコンエッグのサンドイッチと、アップル・ターンノーバー。

ドッグラバーたちの集うテーブルで犬談義に花を咲かせの合間を、
ねえ、お腹すいた!そのベーコン頂戴!とアンアン鳴きの大合唱。
なんともまあ騒がしい朝食だ、と苦笑いしながら、
まあこれこそがドッグラバーたちの至極の時であることは誰もが知るところ。

で、帰って掃除と洗濯を終わらせて一息ついたところでDVDでも観ようか、
と思ったとたんにソファで転寝。

犬に起こされて昼過ぎ。
散歩がてらリンカーンセンター隣りの図書館に出かけたら、
メトロポリタン・オペラハウスの前の広場に仰々しくも椅子が並んでいる。

なにこれ?と聞いたところ、夜にオペラのフリー公演があるという。

なに?野外でオペラのコンサート?

いやいや、HDの映像を流すんだけどね、と言う訳でふと見上げると正面の壁一面に白い巨大な天幕。

オペラの映画鑑賞という訳か。

で、演目は?と聞けば、椿姫=トラビアータ。
で、よくよく聞いてみれば、なんとビオレッタはナタリー・ディッセイ。
もしかして、それってこないだ俺たちが観た奴じゃないの?
あの時はもう、観客一同涙が止らなくて大変な騒ぎだったが。。。

と言う訳で、うっし後でまた来るか、とリンカーンセンターを後にしたとたん、
またまたいきなりリーシュを引っ張り始めたブッチ。

なにがなんでも公園に向かうと言ってきかない、というのもまあいつものこと。

と言う訳で、緑の芝生の上で、図書館で借りた本を読みながら、
パークポリスの目を盗んでボール遊び。

その後いったん家に帰ってシャワーを浴び、
ブーにちょっと早めの夕飯をやってから、
クッションと水と読みかけのペーパーバックを持ってリンカーンセンター。

さすがに犬連れというのもあって通路沿いの席を探すが既に一杯。
しぶしぶずっと後ろの方か、と思うが、
えいやあ、とばかりに最前列。
ここなら窮屈な思いをさせなくてもいいわけで、ちょっと見上げる首が痛いぐらいがなんだ。

と言う訳で、ヨガに行っていたかみさんから、どのへんに座ってるの?
ってな電話があって、一番前!と答えてさすがに呆れられた。

割と涼しいから羽織るものと、あとブーの水と、俺たちの晩飯。

とかなんとかやっているうちに、かみさんが到着した頃にはすでに超満席。
開いた席があれば「買います!」ってな人まで現れる始末。
だが、ちょっとずるをして、ブッチ用に抑えていた一席。
つまり警備員に犬が邪魔だと言われたときにブッチを座らせる用の席なのだが、
ぶーの奴も知ってか知らずか、
そこに人が近づくたびに、ブッチの奴、ウー、グルグル、と喉を震わせて怖い顔。
しまいには、無理やりに座ろうとしたロシア人のおばさんを相手に
ギャンギャンと鳴き始める始末で、平謝り。

くそ、やっぱこいつ連れてこないほうが良かったかな。

と言う訳で、立ち見人がずらりと並ぶ超満員の中、
なんとそのブッチ用の一席だけがポツリと空いているわけで、
ここまで人々の白い視線にさらされるとさすがにちょっとばつが悪い。

とそうこうするうちに、ふと前を通りかかったラテン系の美少女。

怪訝な表情で見上げるブー君の顔を見てにっこり。
で、あらためて、ここ良いですか?と聞かれるのだが、
いや、実はこの馬鹿犬が、と振り返れば、
当のブッチはお姉さんを見上げてさかんに尻尾を振っている。

あ、はいはい、こいつが問題ないなら全然大丈夫、と席を空けてあげて、
ラテンの美少女は思わずイェイとガッツポーズ。
いやあ俺もなんとなく重荷から解き放たれたような気がして・・

そう世の中にはこういう幸運な人も居る訳だ。
そしてそういう幸運な人は、当然のことながら美女が多い訳で。

というわけで、最前列で鑑賞したナタリー・ディッセイのトラビアータ。

字幕の見易さもさることながら、その出演者たちが歌だけではなく確実に演技をしているのだ、
というその事実が、音楽の見事さとまさに相乗効果となって、まさに身を引き絞るような大熱演に
食い入るように魅入る人々。
ライブでみるのとはまた違った趣きがあって、これはこれでまさに大成功だったな。
いやあ、メットオペラ。やることなすことまさに当りまくっているな。

と言う訳で、そう、ブー君。

人々の異様な熱気にてらされてか、予想を反してずいぶんと良い子、にしていた筈が、
第二幕目のアルフレッドとお父さんの掛け合い、のあたりで、
いきなり、オンオンオーン!と調子はずれの吠え声。

思わず映像の深刻さとのギャップに一同シーっと苦情に被せて大爆笑が巻き起こり。
バカ、おまえ、やめろ、と慌てて席を離れようとするが、
かみさんをおいては嫌だ、とかみさんの膝にしがみついて離れない。

で、お菓子でも食ってろ、と上げるのだが、
暫くするとまた、オンオンオーン!とやるわけで、まさに万事休す。

さすがに焦ったかみさん、頼みの綱だったお菓子も底を付き、
ねえ、もう帰ろうか?とため息。
やっぱ無理だよ、こんなところに犬連れてくるなんて・・
くそ、こんな素晴らしいイベントを、こいつのおかげでまたスキップか、と深い深いため息。
まったくお前が居るとどこにも行けやしない、と恨めし気に見つめるブー君。

まあな、確かにお前にとってはオペラも糞も関係ないからな。

ま、しかたがない、引き上げるとするか、としたところ、
ふとすると、隣に座ったラテン系の見るからに美少女のお姉さん。

ねえねえ、とブー君の背中をつついて、目が合ったとたんにニマーと甘い笑顔。
で、
ほら、こっちおいで、と招き寄せて、で、そのミニスカーとの膝の間にブーの頭を軽くはさむと、
いきなりその鼻先にぶちゅーっとキス。
で、はい、撫で撫で撫で撫で、とマッサージを始める。

したところ、普段はどんな人にも身体を触らせないはずのブーが、
まさに魔法にかかったようにうっとりと目を閉じてはその膝の頭やら指の先やらをぺろぺろ。
まさに夢の中といった感じ。

あ、あのすみません、とお礼を言ったところ、
この子は大丈夫だから、オペラ観ましょうよ、と余裕の笑顔。

と言う訳で、それから先の一時間ばかり。
まさにブー君はまるで夢の中。
お姉さんの膝の上で白目を剥いてはうっとりと目を閉じて過ごしていた訳で、
うーん、この謎の美少女、なかなかできる!

とそんなわけでこの世紀のイベント、無事に最後まで鑑賞できた、という次第。
思えばなんという幸運なことか。

いやあ、ラッキーだったな、あの子、なんなんだろう、と話しかけたかみさん、
なによ、糞ブー、大嫌い、とすたすた先に帰ってしまった。


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プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾年月。
世界放浪の果てにいまは紐育在住。
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

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