Loading…

満員電車でスタバの珈琲が凶器と変わる

Posted by 高見鈴虫 on 03.2013 ニューヨーク徒然   0 comments   0 trackback

朝の地下鉄のラッシュ。

東京ほどではないにしろ、
ニューヨークでも朝夕には通勤ラッシュというものがある。

で、このニューヨークの地下鉄で最早名物にもなっているのが、
閉まりかけたドアに飛び込んでのこじ開け、無理やり乗車。

ま、俺もよくやる訳で、
下手をするとドアに挟んだカバンをそのままに走り初めてしまったり、
あるいはつっこんだ足をそのまま引きずりながら、なんてこともありえそうで、まじこわいのだが、
まあしかしこの無理矢理乗車。
まさにどさくさニューヨークにはさもありなん、というまさにニューヨークの地下鉄の名物でもある。


で、そう、その日の朝。
閉まりかけたドアに無理やり身体を捻じ込んできた白人のおばはん。

おいおい、このババア、よくやるぜ、とは思いながら、
問題はその手に持ったスタバのコーヒー。

ドアの間から突き入れられた腕、
身体を捻るたびにそのコーヒーの飲み口から、ジャバジャバと珈琲が弾け飛ぶ。
思わず手に持った新聞を翳して飛び散る黒い飛沫から身を守ったのだが。

そうやって乗り込んできたおばはん。
肩のカバンにはちきれそうな書類の束を抱えてるとこからみても、
そうそうとバカには見えないのだが、
いやあ、間に合った間に合った、とカバンをたくし上げるたびに、
これでもかとあふれ出る珈琲が床に落ちて飛び散るわけで。

思わず、あのなあ、おばはん、ちょっとは人の迷惑考えんかい、と小言を一発。

え?なに?迷惑、考えてるわよ。それを言うならこのMTAの地下鉄のバカが、

と言い訳を並べながら、

そういうそばから溢れ出た珈琲がばしゃばしゃ。
下手をすると子供の頭から降り注ぎそうで、
思わず濡れた新聞を翳して子供を守ろう、
としたとたん、

俺のカバンにもろにそんな珈琲がびしゃとぶっかかった。

いう訳で朝から思わずぶち切れて、好い加減にしろ、と怒鳴り声。

あんたねえ、本当に人のことなんかこれっぽっちも考えてねえんだろ。

え?なんだって?と言い返す婆。

あんたさあ、自分さえ良ければ、あんたに珈琲をぶっかけられた人のことなんか
まったく関係ねえってことなのか?
どうしてくれんだよこれ。好い加減にしろよ、バカたれが。

なに?だれがバカだって、と言い返す婆。
避けないあんたがのろまなのよ。バカはそっちじゃない。死ねばいい。

はあ?なんだと、と言おうとしたところ、

黙れ!と地下鉄の乗客。

あんたが一方的に悪いんだろが。珈琲かけられた身にもなってみろよ。

そうよ、あたしの子供も火傷しそうだったのよ。それをこのチャイニーズの人が守ってくれたんじゃない。

この人にお礼を言いなさいよ。バカ女。

あのなあ人の迷惑考えろよ。好い加減にしろ。

と一斉に非難ごうごう。

なによなによ、なんでみんなチャイニーズの肩を持つのよ。
あたしだって失敗したなとは思ってるわよ。でもしかたがないじゃないの。
ちょっとは私の立場にもなってみてよ、ヒステリックに叫ぶ婆。

わたしの立場?あんたの立場になってなに考えろってんだよ、バカ、

と思わず言い返そうとしたところ、

なによ、みんな大嫌い、と怒鳴った途端、おっと、ほら、まただ、と飛び散る珈琲に後ずさる人々。

おい、気をつけろよ、その珈琲。
なんだよこいつ。
頭悪いんじゃないのか?
死ね、バカ、と罵倒の限り。

あまりの迷惑にまだ読んでいない新聞を、これで珈琲カバーしろよ、と差し出すが、
それを受け取ろうとして左手に持っていたカーディガンを床に落としてしまって、
その上から自分の珈琲を振り掛ける始末。

あんた、何するのよ、と俺に向かって八つ当たり。

駄目だこれは、と思わず肩を竦めて知らぬ顔。

した途端、
ちょっと、この糞ビッチ、なにすんのよ、と子供を抱えたコクジンのおばはん。
好い加減にしないと警察呼ぶわよ。

と、いきなりおばはん、
なによ、あんたたちみんなで。わたしのことがそんなに嫌いなの?なによなによ、
と地団太を踏み始める。

あんたねえ、と思わず。
嫌いなのはあんたじゃなくてあんたの手に持ったその珈琲だよ、と。

と言う訳で、ほとほと呆れ返った人々。思わず顔を背けてむっつりと黙り込む。
のだが、おっと、そんなときに必要な俺の新聞。
いまやぐっしょりと珈琲に濡れて床に散乱するばかり。

で、しかたなく会社の書類でも読むか、とカバンに手をかけると、
べっとりと絡みつく砂糖たっぷりのミルク珈琲の雫。

やれやれだな、と思わず舌打ち。

と、そんな人々の間に、くすんくすんと鼻をすする音。

なによ、なによ、わたしがなにをやったって言うのよ、ひどいわ、ひどすぎるわ。

ふと見ればおばはん、鼻中を真っ赤にしてすすり泣いていたかと思うと、
いきなりびえーん、と漫画のような声を上げて泣き始めた。

なんだこいつ、と振り返った人々。
頭おかしいんじゃねえのか?から、
まさしく、やば、こいつまじで行っちゃってる人だったんだ、
と思わずのドン引き。

と言う訳で、そんな婆の隣りに立つ俺。
いつ手に持った珈琲を頭からぶっかけられるかと思うと気が気じゃなく。

と言う訳で、バカとキチガイには近寄らないに限る訳だ、
と判っていながら、くそついてねえなあ、と聴こえないように舌打ち。

とそんなとき、ふと泣きじゃくる婆のカバンから、今にも床にぶちまけそうになっている書類の束。

こんなキチガイでもそれなりにいい給料を貰っているんだろうな、とふと覗き込むと、
そこには・・・
まさに世界制覇を目論む巨大金融会社の名の印刷されたレターヘッドの束。

まさか!と思わず。

もしかして、この世界中の大混乱は、こんなぶっ壊れたおばはんたちの差し金なのか!

とふと振り返った婆。

さっきまでの泣き声から一転、いまやふてぶてしくガムを噛んでいる。

へん、このバカどもが。いまに観てなさい、この貧乏人どもが。全員地獄に叩き込んでやるから、
とかなんとか、呪いの言葉をぶつぶつと呟いている。

と言う訳で、そう、
かのウォール・ストリートの方々。

またに、この彼女の姿、それこそが、ここ数年にわたって世界中に巻き起こっていること、
その象徴的なことであることに気づいたのだ。

こういう人々、規制しないと、本当にとんでもないこと、
つまりは、とばっちりに頭から珈琲ぶっかけられる、なんとことじゃ済まなくなるぞ、
と思っていた次第。


  • password
  • 管理者にだけ表示を許可する

trackbackURL:http://shumatsuwotohnisugit.blog.fc2.com/tb.php/1678-87d52a58

プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾歳月
世界放浪の果てにいまは紐育在住
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

©終末を疾うに過ぎて...
無断丸々転載・そのまま転写はご勘弁ちょんまげ

月別アーカイブ

検索フォーム