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犬の無償の愛?嘘だなそれは

Posted by 高見鈴虫 on 04.2013 犬の事情   0 comments   0 trackback
犬はいついかなるときにも主人に忠誠を尽くし、
主人の身に危険が迫ったときには身を投じて主人を守り抜く、
なんて美談が語られているが、

まあたまたまそういうことがあったから話題になるわけで、
この世に生存するすべての犬達がすべてそんな名犬か、と言えば、
そんなこともないだろう。

かく言うブー君も、おまえ、なんかあったら自分の身を挺して俺を守るか?
というと、なんかあまりそんな雰囲気じゃない。

逆に、こいつが車に轢かれそうになったら、俺がその前に飛び込んで身を挺して犬を守る、
なんてことを半ば当然視しているところがあって、
先のドッグランでも、身の程知らずにもとんでもなく凶暴な面構えのアメリカン・ブルドッグ、
なんて奴に喧嘩を売って大立ち周り。
で、案の定、しまった、これは相手を間違えた、とけつをまくった途端に・・・
一目散に俺のところに逃げ帰ってきて後ろに隠れやがる。

で、俺。俺?俺が?この子牛のようなアメリカン・ブルドッグをどうしろと言うのだ。
が、しかし、みすみす我が家のブー君を見捨てる訳にも行かず、
そこは火事場の馬鹿力。
てめえ、この化け物。来るなら来い、と立ち向かってしまう訳で、
まあ、しかし俺も一応人間様である以上はそこはやはり姑息な悪知恵を駆使して、
はいはい、いらっしゃい。はい、これ特上のトリートですよ、どうぞ召し上がってください、よしよし、
とやって無事お帰り頂いた訳だが・・・いやはやである。



IMG_2461.jpg




と言う訳で我が家の駄犬である。

普段からかみさんのそばをひと時も離れない。それは俺も判る。
俺もこいつが来る前にはそうであった。
かみさんが帰ってきた途端にケツに張り付いてはでれでれとやっていた訳なので、
まあこの駄犬の気持ちも判らないではない。

こいつが来てからはすっかりそのお株を奪われて、
へん、俺が犬の真似をしてなるものか、と妙に片意地を張った途端に、
その地位をすっかりと浚われてしまった訳だが、
そんな事情でこいつはもう朝から晩まで徹底的に、
まさに片時もかみさんのそばから離れない。

あのなあ、お前をシェルターの檻の中に見出して、
そして225ドルの大枚叩いて見受けしてやったのはまさしくこの俺だろう。
喧嘩して膝を脱臼したときにも2時間もかけてお前を抱えて医者に連れて行ったものこの俺。
半月に一度の肛門腺絞りだって俺の仕事。
あのくっさい汁を顔にぶっ掛けられたって、よしよし、と可愛がっているこの俺を差し置いてだ。

とそんな時、事件は起こった。

みんなしてアップステイトの山にハイキングに出かけた際、
崖あり沢ありのまさに絶好の冒険コース。
思わず、あの渓流を飛び越えてあの岩棚をよじ登って
そんであの崖の上まで登ってみたらさぞかし眺めが良いだろう、
と思いついて、よしブー君、一緒に行こう、男の子冥利に尽きるな、
とやっていたのだが、ちょっと年甲斐もなく遣りすぎてしまって、つまりは登るだけ登って行き止まり。
おまけに履いて来た靴は山登りどころか、その辺の公園でも不自由するようなぺたんこシューズ。
つるつると滑ってまるでローラーブレイド履いて山を登っているようなものだ。
てなかんじで無様にも崖の途中で下りれなくなり進退窮まってしまった、訳なのだが・・・
さて、そんな時に頼りになるのはブー君。
よし、お前、その身軽なところでこの岩をよじ登ってだ、とやれば、

足元から、いったいこいつはなにをやっているんか?と首を傾げていたブー君。
おい、ブー君、助けてくれ。このロープ持って、あの、あそこの、岩の上にだな、
とやるのだが、曖昧な顔をしてへらへら笑うばかりで一向に行動に起こさない。

挙句の果てに、ちょっと岩場を登ってみて、あ、やばい、これ駄目だ、と勝手に諦めて、
で、そのままひらりひらりと岩から岩へと身を翻すと、じゃね、とばかりに帰ってしまった。

んだよ、おい、おい!おーい、帰って来い、ってか、だれか助け呼んで来い!

と叫べば、ひょっこりと藪の中から顔を覗かせて、やーい、へへーん、とばかりに尻尾を振って、
そしてふっと姿を消してしまった訳だ・・・

あのなあ、と。

思わず、呆気に取られる俺。

そう言えばあいつ、前のピクニックの時にも木立の中を颯爽と探検に出たら案の定道に迷って。
まあ大丈夫、ブー君がいるから、と後ろを振り返ればその姿がない。
えええ、嘘だろ。あいつ、一人で帰っちゃったの、と思わず焦って、
口笛は鳴らす手は叩く、挙句におもちゃのピコピコボールを、
まさに気が触れたようにピーコピーコと鳴らし続けても一向に姿は見えず。
で、どうにかこうにか、IPHONEのTRACE機能を駆使して帰り着いた訳なのだが、
なんとそのときにはブー君、一緒に探検に出た俺の存在などすっかりと忘れて、
湖畔のピクニックシートの上。かみさんの隣りにのうのうと寝そべって、
はいもう一個頂戴、おやつをねだっていやがった訳で。

そう、うちの駄犬、もしもの時にはまったく頼りにならない。

と言う訳で、そう、そう言えば俺は危機に強い。

こう見えても云十年前には江ノ島でこの人ありといわれた曲芸箱乗りの帝王。
たった一人でヒマラヤのなんとか山に登ってはセルフタイマーで証拠写真を撮って帰ってきたり、
その後、アフガンの禿山をRPGの弾頭を担いで地雷原を抜けて、
なんてことをしていた男なのだ。
クソッたれ。誰がこの後に及んで犬の助けなど頼るものか、と一念復帰。

と言う訳で、火事場のバカ力。邪魔な靴と靴下は背中に背負ったブー君のおもちゃ入りばっぐに押し込んで、
裸足一丁、えいやあと岩から岩へと猿飛びジャンプ、を繰り返し、
運良く垂れ下がっていた小枝をロープ代わりにかなり際どい大岩を乗り越えて、
やった、着いたぞ、と辿り着いた崖の上、なんてことはない、ただのハイキングコース。

なんだこれは!、と呆気に取られていたところ、
なんと麓の方からぴーちくぱーちくお喋りしながら歩いて来るのは、
かみさんとそのお友達連中のご一行。

で、その足元で、ルンルンルンとスキップを踏んでいるご機嫌な馬鹿犬の姿。

おい、と怒鳴り声を上げたとたんに、よおよおよお、元気だった?と走り寄って来たのだが、
ふと、俺の鬼の形相を見るや、あ、やべ、とそのままくるりと後ろ周りしてかみさんの後ろへ。

あれ、あんた、どこ行ってたかと思ったら先回りしてたの?と間の抜けたことを言うかみさん。

あのなあ、俺はだなあ、この崖、ほら見ろよ、この急な崖をだな、危機一髪よじ登ってだなあ、
と言おうとしたが、逆にそれがばれたら怒られるかも、と思って、いや、あの、ははは、と照れ笑い。

しながらも、なんだよお前、と睨みつけるブー君。

え?なにが?ととぼけた顔をしながらも、その後ろめたそうな顔、しらばっくれようとしてもそうは行かねえぞ。

と言う訳で、犬の無償の愛?嘘だなそれは、と一蹴させてもらう。


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プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾年月。
世界放浪の果てにいまは紐育在住。
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

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