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「朝の傷心」

Posted by 高見鈴虫 on 05.2013 犬の事情   0 comments   0 trackback
朝の一番からブー君は傷ついている。
何故かと言えば、朝一番の楽しみであった、
おはよう舐め舐めをさせて貰えなくなったからである。

と言う訳でこのおはよう舐め舐めである。
最近は自分用のクリブで寝るようになったブー君であるが、
目覚ましがなったとたんにうっしゃあ、とベッドに飛び乗って来て、
で、朝だよ、朝だよ、朝だよ~!と、いまだに寝ぼけた我々の顔を、
滅多やたらと舐めまくる、ってのを無償の愉しみとしていた訳だ。

で、むにゃあ、まだ眠い~、と逃げ回るかみさんの顔を、
まさに両手両足で羽交い絞めにしては、
もう逃がさないぞとばかりにべろべろべろべろ。
目から口から鼻から耳からと舐めまくり、
うっひょおお、口臭っせええ~と跳ね回っては、
また飛び掛ってぺろぺろぺろぺろ。

で、俺はその騒動にいち早く気づいて、
頭からシーツを被りながら脱出のチャンスをうかがう訳だが、
そうはさせじと知恵を使ったブー君。
やにわに足元からシーツの下に潜り込み、
そこからぬんぬんぬんと歩伏前進で競りあがってくると、
ぎえ~、やみちくりい、という俺の悲鳴も聞かずに、
いきなり鼻の頭に強烈な頭突き。
ガードの下がったところをボディースラムで飛び掛ってくるや、
さああ捕まえた、とばかりに、顔中、しかも、俺に限っては、
口の中、の歯の裏側の、舌の根元まで、
べろべろべろべろ~と有無を言わさぬディープキス。

臭い臭い臭いぞおお、寝起き口臭、臭すぎ~と大喜び。

がしかし、そうするブー君もつい今しがたまでは熟睡していた手前、
そう、こいつの口だって寝起き臭い訳だ。
バカ、お前だって臭いぞ、このやろう、と必死に押しとどめようとするのだが、
このときばかりはブー君、謎の狂犬と成り果てて、
まさに気が違ったおっとせい。怒涛のように襲い掛かってきては、
なにをどうやってもどうしても防ぐことができない。

という訳で目覚め直後に進退窮まった俺、思わず、
俺じゃない、こっちだこっち、とかみさんのかぶっていたシーツを引っぺがすと、
それ行けとばかりにかみさんの上に飛び掛り、
そしてまたまたべろべろべろべろ、と顔中を嘗め回し始める。

じぇじぇじぇじぇ~、と悲鳴をあげるかみさん。
やめちくり~、窒息しそうだあ。
そんな断末魔の隙をついてひらりと身を翻す俺。
ややや、しまった、と飛び起きた時にはすでに遅く、
トイレに駆け込んだ俺はよだれまみれの顔を洗うのももどかしく、
いきなり歯を磨き始める訳だ。

と言う訳で、へへーん、どうだ、とブー君の鼻先で、はーっと息を吐きかける。
むむむ、とブー君。そして、ちぇっと、舌打ちをするように顔を背ける。

と言う訳で、すっかり顔を洗って歯も磨いたかみさん。
ほら、ブー君、はーっと鼻先に息を吹きかけて、
ちぇ、こっちもか、と思わずがっくりと頭を垂れる。

昔はもっともっと、心行くまで顔中を舐めさせてくれたのに・・・

と見るからに不服げ、である。

と言う訳で朝からがっくりときてしまったブー君。
顔舐めさせて貰えないならもういいや、とばかりに、
かみさんの枕に顔を埋めて二度寝の体勢である。
なんだよ、おまえ、お散歩いかないの?
と言っても返事もしない。

と言う訳で、すっかりとお出かけ準備整った人間連合。
改めて、不貞寝するブー君を、おいおい、とひっくり返して胸とお腹をこちょこちょ。

不服そうながらも、ちょいちょいと舌先で鼻の頭などを舐めながら、
ねえ、なんでもっと顔を舐めさせて貰えないの?
と実に悲しげな表情で訴えかけてくる。

なんだお前、傷ついているの?

なんてやってたら、はい、準備できた、とお散歩装備完了のかみさん。
ブー君お散歩行くよ、

おっと、そうだった、といきなり飛び起きて、ブルブルブル、と身体を震わせ、
うっしゃあ、お散歩だ~、と息せき切って玄関に飛び出して行くわけである。

犬の傷心は長続きしない。
それが良いところでもあり悪いところでもある


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プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾歳月
世界放浪の果てにいまは紐育在住
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

©終末を疾うに過ぎて...
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