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バカの勲章

Posted by 高見鈴虫 on 08.2013 ニューヨーク徒然   0 comments   0 trackback
いまさらながら俺はバカだった。

これまで数限りないほどの失敗を犯して来たし、
そしていまも懲りずに似たような失敗を繰り返している。

やらなくてもいいことをやってしまい、
口にしてはいけないことを口にして、
見なくてもいいことを見てしまい、
その恥の数々を思い出しては、
時として鬱々とした気持ちになったりもする。

どれもこれも、つまりは俺がバカであった為だ。

というわけで、バカがなにかを問う前に、
お利口とはなにか、と考えてみる。

俺にとってお利口とは、
椅子に座っている人、に他ならない。

言われた通りにただおとなしく、
いつまでもいつまでもそこに座っている人、

そして思う。

つまりお利口さんとは、
なにもやらないひと、なのである。

そう、日本におけるお利口さんとはそんなものだ。

そして日本はお利口さんばかりになったようだ。

誰もなにもやらずにおとなしく座っている人々の国、なのだ。



が、しかし、

お利口さんがただ来る日も来る日もただ座っているからと言って、
何一つとしてなにもしていない、訳ではないのだろうし、
頑なになにもしたくない、と思っているわけでもないのだろう。

が、しかし、
余計なことはしないに越したことは無い、
というのが前提としてある訳で、
そしてそういったお利口さんたちに共通する特徴として、

席から立ち上がってなにかをしでかしたバカが、
失敗して叱られる姿をほくそえむ。
あるいは、失敗することを待ち望んでいる。

そして物静かに目を反らす。
反らしながらぐるぐると廻り続ける思考の中でささやくのだろう。

あのバカ・・・いいざまだ。

というわけで、俺はそう、バカであった。
バカもバカ、大バカも大バカであった。

親に叱られ、先公に叱られ、警察に叱られ、

つまりはそう、お利口でなかった為だ。

おとなしく座っていればいいものを、
やらなくてもいいことをやり、
いつもトラブルに巻き込まれている俺は、
バカもバカ、大バカ。

自分でもそれが判っていない訳ではないだろうに、
それでも敢えて、席を立ち、
注意をする教師に怒鳴り返し、
教室を飛び出て、警察に追い回され、
そして家に帰って親から家を閉め出される。

まったく訳の判らない存在である。
ただ座っていればいいようなものを。
なぜそんなこともできないんだ、バカ。

がしかし、言わせて貰えば、
そんなバカの元にもやはり似たようなバカが集う。

そしてそんな俺の周りはこんな俺を遥かに上回る、
大バカの上を行く、超バカ、ばかりだった。

バカはみな、落ち着きのないガキだった。

大人しく座っていることができず、
ついついなにかをやってしまい、浮く。

浮くことは覚悟でまたなにかをやると、
叱られる。
叱られてもそれをやめないのですっかり鼻つまみ。
それでもやめない、というよりは、
ここまできてしまったらやり続けるしかない、
どうせやるなら、思いっきりやってやろうじゃねえか。

俺の周りにはつまりはそんな奴ばかりだった。

そんなバカの中にあって、
あるものは親からしてバカ。
つまり、親の教育一環として、
バカでもいいから元気良く育て、
とそのバカぶりを半ば奨励されていた輩。

そしてそう、俺。
お利口の中でも超がつくぐらいにお利口であった両親にとって、
そんなバカ息子は、まさに理解の限界を超えた化物、
と映っていたに違いない。

そしていま、俺は改めて言いたい。

なぜバカになったのか。

答えは、それが面白かったからだ。

バカとの暮らしは面白かった。
無茶苦茶面白かった。

時として思い切り心の底から辟易させられたり、
思わず頭を抱えたくなったりもしたが、
しかし少なくともそんな奴等と共に過ごした時間は、
まさに珠玉の時。

少なくともお利口さんたち、

一日中椅子に座ったまま、
触らぬ神に祟りなし、とばかりに、
怖々と首をすくめて厄介ごとをやり過ごしている
物静かなお利口さんといるよりは、
よっぽど面白かったし、

お利口な人たちの会話、
自分ではなにもしないくせに、
他人のことをああだこうだと高みの見物ばかりをしては、
皮肉な批評家面の嫌な奴等。
そしてその皮肉な批評にしても、
決まって誰かからの受け売り。
つまりは、コピぺであった訳だ。

そんな奴らの底意地の悪さに触れるたびに、
俺はもう二度とお利口な奴らと付き合うのはご勘弁願いたい、
と思っていたわけだ。

特に、うちの両親がそういうタイプであった関係上、
俺は家も学校も捨てることを選択し、
そしてそんな奴ばかりが羽振りを利かすこの日本という国さえも、

あばよ、屁つまらねえバカども、じゃなかった、お利口さんたち、

と中指を突き立ててとばっくれた訳である。

という訳で日本のお利口と決別した俺になにが起こったか。

ひとたび日本という国を出た時、そこに待ち構えていたのは
蛇でも鬼でもなく、まさにそうやって日本に中指を突き立てた、
超バカの超バカ、超々バカどころか、
まさにメガトンクラス、化物級のバカばかりだった。

地球縦十周横十周。
ただひたすらバンコックからイスタンブールまでを往復して暮らしているもの。
ジャンキー、ロリコン、過激派崩れ、犯罪者、失業者。
登山家崩れから、作家志望、自称カメラマン。

まあいろいろなタイプの輩が居たが、
そこに共通していたことはまさにバカ。
自他共に認める、大バカだった。

と言う訳でそんな大バカどもに引きずられて、
俺の人生もはちゃめちゃなまま、な訳であるのだが、
一言言わせて貰えば、それはとても面白い。

という訳で、俺はいま、廻りまわってニューヨークにいる。

お利口さんがたに自慢できるようなことは何一つとしてやっていないが、
しかし、バカだけは続けさせて貰っている。

という訳で、おかげさまですったもんだばかり。
ずいぶんとおかしなことになってはいるが、
しかし、
言わせてもらえばそれは十分に面白い。

という訳で、俺はバカだ。

あいも変わらず、
やらなくてもいいことをやり続け、
口にしてはいけないことを口に出し、
見なくてもいいことを見てしまい、

恥の上塗りを続けては
舌打ちばかりを繰りかえしているが、

まあそれもそう、バカの勲章みたいなものだ。

そして俺はバカだ。

いまだにバカだ。あいも変わらずバカだ。

そしていま、あのお利口さんたちに言いたい。

悪いが、俺はすっごく楽しい人生を生きている。

お前らはそこで一生座っててくれ。

俺は俺で勝手にやらせてもらう。

バカなりアホなり勝手にそこで言っていなさい。

俺はまったく気にしない。だってバカなんだもん。


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プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾年月。
世界放浪の果てにいまは紐育在住。
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

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