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ああ、神様、犬が喧嘩をしませんように

Posted by 高見鈴虫 on 19.2013 犬の事情   0 comments   0 trackback
この冬空の下、例によってまた夜更けの猛犬パーティである。
まあこんな糞寒い夜に、わざわざ犬の散歩に来る奴などいないだろう、
と油断したのが間違いだった。

ふと見れば、入り口に人影。

あ、ちょっと待った!と言う間もなく、
いきなり走りこんできた白いピットブル・テリア。

それまでの夢中になっていたボール遊びから、
ふと顔を上げたとたん猛犬たち。

むむ?と首を傾げるが早いか、待ってました!と目にも止まらぬ突進。

ダメだ、ダメ!STOP!ときちがいのように怒鳴りながら追いかける飼い主。

そんな中、暗闇の中からいきなり走り出てきた猛犬たちに囲まれ、
なんだよ~、なんだよ~、君達は!とおどおどしながらも、そこはピットブル。
気を取り直した途端、

なんだよ、てめえら、やるのか、こら、と見る見るスイッチが入りはじめる。

はい、そこまで、と飛んで入る俺。

はい、遊びはそこまで、と猛犬どもの首根っこを抑えてこっちこい、と引っ張るのだが、
その他所者のピットブル、なにを間違えたか、俺に怒鳴られてしゅんとした猛犬どもの後ろから、
なんだよ、てめえ、やんのか、コラ、と今頃になって啖呵を切り初める始末。

という訳で飼い主。
またよくいる、俺はピットブルを飼ってるんだぞ~、というタイプ。

で、いや、大丈夫だ、俺の犬は、と来る。

だから、と俺達。
お前が大丈夫か、お前の犬が大丈夫か、なんてことは言っていない。
俺が言ってるのは俺達の犬がちょっと問題児で、
なので、できればあっち側の小さな犬用の広場で遊んでくれないか?
とお願いしてるだけんなんだよ。
俺達は、お前の犬の心配をして言ってやってるだけなんだか、
と言えば、

いや、その必要はないよ、と来る。うちの犬はタフだからね、へへへ、と笑っているバカ。

そう、これもまあ、毎度毎度のピットブル。そしてそんなピットブルには必ずこんな飼い主な訳である。

あのなあ、俺達はいまさら、犬が喧嘩が強いの弱いのなんてことを言ってるんじゃないんだよ。
俺達はただ、トラブルを避けたい、とただそう言ってるだけでさ。

だから、うるせえな、と飼い主。
俺の犬のことなら大丈夫だ。お前の犬の心配をしてろ、と知らぬ顔でタバコを咥える始末。

ああ、やれやれ、と。

という訳で、超猛犬サリーの首輪を引っ張りながら、で、なんだって?とジェニーがやってきて、
きちがいプードル・レミーを首輪を引っ張りながら、で、なんだって?とアリーンがやってきて、

俺の犬なら大丈夫だからてめえの犬の心配でもしてろ、だとさ。

やれやれ、と一同。あたしらそんなことを言ってるつもりはないのにねえ。
ただ・・そう、ただ、あんな可愛いピットブルちゃんがあたしらの猛犬に噛まれちゃうのが不憫なだけなのに。

とやってるそばから、調子こいたピットブルがいきなり乱入してきて、
よりによってサリーに向かって、おい、こら、なんだよ、てめえ、やんのか、こら、おい、
とやりたい放題に吠えまくり。

そんなピットブルから実に憎憎しげに迷惑そうに顔を背けるサリー。
サリー、いい子だ。いい子だね。怒らない怒らない、と必死で頭を撫でていると、
そんな時、普段ならそんな犬同士の喧嘩にはそ知らぬ顔のブッチ君。

ねえ、ボール遊びやんないの?ととぼけた顔でのこのことやってくる。

バカ、お前は来るんじゃない、向こう言ってろ、と言ったときにはすでに遅く、

他所者ピットブル、なんだてめえは、とそんなブー君に向かって、ガルルルと唸りながらにじり寄る。

なんだよ、こいつ、とへらへらと笑っているブッチ。

バカ、だからお前は向こうに行ってろって、と言い終わらぬうちから、
いきなりそのピットブル、よりによって、そんなブッチの鼻先で、ガウ、と吠えやがった。

なんだてめえ、とまだニヤニヤ笑いのブッチ。
ねえ、ねえ、こいつ僕に喧嘩売ってるよ~、変な奴だねえ、とばかりに照れ笑い。

だから、お前は相手にするなって、向こうに行ってろ。

おい、あんた、お前の犬、どうにかしろ、と頼み込むも、
ほっとけや、たかだか犬の喧嘩じゃねえか、へーん、とばかりに薄ら笑い。

そんな飼い主の声をGOサインと見たのか、そのピットブル、
今度は手前が相手だ、とばかりにブー君に向けて襲い掛かろうとした途端、
あらよっとばかりにひらりと身をかわしたブー君。

口のボールを俺の足元に投げるが早いか、
目にも留まらぬ速さであっと言う間にピットブルの背後に回りこみ、
一瞬のうちにその首筋に噛み付いている。

ギャン、と鳴いたピットブル、あまりのことに驚いて逃げようとするところを、
背中から襲い掛かったブッチ、まさに好き放題に噛みつき放題。
もうもうと立ち上る砂煙の中からギャンギャンギャンという悲鳴と交錯する飼い主達の怒声。

ブッチ、やめろ、やめろ!と怒鳴る俺の横から、
スパイキー、やっちめえ、やりかえせ、スパイキー、
などとまったくもって本当にどうしようもないことなこの飼い主は。

したところ、そんな騒ぎを聞いてもう辛抱溜まらん、とばかりに、
飼い主の手をぶっち切ったサリーとレミー、
まさにロケット状態でピットブルに殺到するや・・・

三匹の犬に襲われたピットブルのスパイキー君。
これは溜まらんとドッグラン中を追い回されては追いつかれるたびにど突かれ転がされ。
たちまちドッグランは怒声とうなり声と飼い主達の怒鳴り声の中、巻き起こる砂埃でもうもう。

と、そんなところを、やーやーやー、こんばんわ、どもども~と踊りながら駆け込んできたチェシー。

なにも知らずに、あれあれ、なんですか?プロレスごっこ?とのんきな顔で、
追いかけっこに飛び入りしては大はしゃぎ。

で、ベンチの裏に追い詰められたピットブル。
ぐるぐると牙を剥き出しながらも、腰は引けまくり尻尾は丸まりまくり。
そんな断末魔のピットブルの鼻先に、よりによって、
やあやあ、どうもどうも、こんにちは、あんた誰?
などと能天気に挨拶などしている始末。

そんな極楽トンボ面のチェシーに断末魔のピットブル。
おっと、こいつなら勝てる!まずはこいつからだ、とばかりにいきなり襲い掛かって・・

じぇじぇじぇ~、と驚くチェシー。

なんだよ、こいつ、何考えてんだよ、と困惑しながらも、
がしかし、チェシーも元はと言えば野良犬上がりのシェルタードッグ。
今はまさに仏様のような優等生なれど、子供の頃から切った貼ったはお手の物。

ピットブルの第一撃を見事に交わすや、
いきなり何すんだ、このやろう、とばかりに反撃に出てねじ伏せて得意顔。

と、そんな可愛い弟分を襲われた猛犬ども、
このやろう、思い知らせてやる、とばかりの火の出るような総攻撃。

哀れピットブルのスパイキー、好き放題に追い回され跳ね飛ばされてはサッカーボールのようにごろごろと転がって、
ついにはキャンキャン鳴き。丸めた尻尾でお腹を出して、降参、降参です、降参、
と子犬のようにキャンキャン鳴き続ける始末。

という訳で、ようやく犬達に追いついた飼い主。
はい、GAME OVER。

なんだよこの狂犬どもは。こんな狂犬をドッグランに連れてくるなんて非常識だ、
などと、今更何をおっしゃるうさぎさん、のたわ言をわめき散らしている。

だから、俺達はお前がどうの、お前のの犬がどうの、なんて言った覚えはないんだよ。
こうなることが判っていたから忠告したまでだろうが。バカか、と吐き捨てながらも、

そんな俺達にとっては、俺の犬もあんたの犬もない。
例え飼い主がどんなバカでも、それは犬の責任ではなく、
よって、ここに来る犬はみんな私達の犬。平等に可愛がられる権利がある。

という訳で、おい、スパイキー、こっち来い、と呼んで、
そんあ猛犬たちの飼い主連合、慣れた手つきでIPHONEのライトを合わせて照らしながら、
噛まれたところはないみたいだね、足も挫いてないようだよ、と身体中を撫でさすり、
そんなピットブル、へへへ、くすぐったいなあ、と尻尾を振っている始末。

という訳で、ようやく他所者君には小さい犬用のドッグランにご移動頂いた途端、

いやあ、面白かった、とまさに満足げな猛犬たち。
顔中これでもかというぐらいに満面でがははは笑いしては、
ドッグランの砂の上をごろごろとお腹を出して転がっている。

あのなあ、とつくづく呆れ顔の飼い主達。
この寒空の下、シャツの下はもう冷や汗でぐっしょりである。

大事にならなくて良かったねえ。この間のブルドッグ、なんて言ったっけあの子。
ブルータス?
そうそう、そんな名前だったよね。
あれはもう、あっという間にぼろ雑巾みたいにされちゃったもんな。
さすがピットブルだねえ。怪我しなかっただけでも立派なもんだよ。

で、言っとくけどね、とジェニー。
今夜の悪い子大将はブッチだからね。今日に限ってはうちのサリーはなにもしなかった。
ほら、良い子だったねえサリー、と頭を撫で撫でしながら、まるで勝ち誇ったように顎をしゃくってみせる。

で、ブッチ。
さっきからへらへらと笑ってはいるが、ちらちらと俺の顔を盗み見ているところを見ると、自分の仕出かしたことはちゃんと判っているようだ。

あのなあ、俺の居るときだからまだいいけど、かみさんと一緒の時これやったらまじでOUTだからな。警察呼ばれるか救急車呼ばれるか。
いずれにしろろくなことにはならねえぞ。判ってんのかお前。
と言ってるそばから、抱きついてきて顔中舐め舐め。
だめ、そんなことしても許してやんない。絶対にダメ。喧嘩はぜったいにダメだよ。

そういえばさ、とジェニー。
こないだ見た映画の中でさ、神様がたった一つだけ子供達の願いを叶えてくれるって時に、
子供達が話しあった末に出した答えってのがさ、犬が喧嘩しませんように、だって。笑わせて貰ったけど、まさにその通りなんだよね。

という訳で、やめろって言うのにいまや必死の形相で抱きついてくるブッチ。
顔中ぺろぺろ舐められながら、ああ、神様、お願いだから犬達が喧嘩をやめてくれますように、と心の底からお祈りしてしまった訳だ。



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プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾年月。
世界放浪の果てにいまは紐育在住。
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

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