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色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 ねたばれそのご

Posted by 高見鈴虫 on 09.2013 読書・映画ねた   0 comments   0 trackback
4.沙羅

沙羅にはもうひとり男が居た、との描写で、あ、それはね、お父さん、
というのはなんとも陳腐過ぎる読み。

だって、もともとそれがお父さんで後ろめたいものがなにもなければ、
水曜日に返事する、なんて回りくどいこという訳ないし。

まあねえ、そこそこにいい女が40近くで未婚、となれば、
ま、それ、不倫でしょ、というのは世の常識。

なのでこの沙羅もずっとその歳まで生娘であった筈もなく、
つまりはファザコンの不倫女、となるわけだな。

が、この沙羅は、人生の先輩。つまり姉。

シロであり、またクロであり、そしてホモの弟を優しく包む「姉」でもある、という設定。

つまり、この世で一番まともな人、信頼できる常識人、という便利な役割ではある。

ご存知のように女の成長は男よりも早い。
そもそも生理学的にも差をつけられたところを持ってきて、
しかも年齢的にも上、となればその成長差はまさに歴然である。

つまり、年上の女は必ずと言っていいほど年下の男に対しては上から目線である。

既に自分よりもきつい現実にしっかりと向き合ってきた経験があり、
色々な男も見てきているわけだ。

この話で言えば、
シロである時期を行き抜き、クロのような人物も知っていて、そしてクロの役割もそつなくこなせる。
つくるのような男も、アカやアオや、あるいは不動産屋の社長や、産婦人科医のすけべおやじ、のような大人たちも、しっかり「男」として査定してきた経験があるのだ。

そんな自身の経験から、
男が実はそれほど強くもなく、理屈だけで生きている訳でもなく、
女のことだけで頭が一杯な訳でもなく、がしかし、女の子の気持ちについては驚くほどドンカンで、
そして性欲というのはまったく絶対的な力として彼らの存在を牛耳っている、
という現実をしっかりと判っている。

あるいはこれが判っているような女でないと年下の男としっかりと向き合ったりはしないし、できない。

つまりは沙羅はこの物語中唯一のちゃんとした常識人である訳だが、

現実問題としては、
不倫の深みに嵌って焦り始めた年増女が、
ちょろそうな年下の中年童貞もどきのとっちゃん小僧をひっかけてこの辺りで落ち着こうか、
と考えているのは誰の目にも明らか。

と言う訳でこの話。

哲学だ、巡礼だ、喪失だ、傷心だ、と眠たい御託を並べているが、それはすべてはったり。あるいは刺身のツマ。

この本に書いてあることといえば、

「童貞でなんにも知らない僕は高校時代、ホモのだちとおばちゃんねえちゃんに横恋慕されて、
で、本気でやりたかった白雪姫は実はオヤジにやられてすっかり男性不信。
ジョックの友人はくっそお俺はこんなに格好いいのになんでナヨ系に勝てないかな、
とやっかみながらも性欲むんむんでラグビーで発散、という関係を完璧な調和、だと思っていた。
で、そんな地方都市のしがらみにがんじがらめの奴等をぶっちして東京に出た途端、
それを逆恨みした白雪姫からレイプ疑惑をでっち上げられて仲良し友達にハブにされて傷心。
自殺を考えるがようやく立ち直ってできた友達は実はホモで寝ている間に一本抜かれたが、
ホモじゃないと判ったとたんにどっかに消えた。
そんな傷をぐちぐち悩み続けるとっちゃん小僧を、
不倫疲れの年増女が見事にたらしこんでハッピーハッピー、と」

とまあ、その程度の話だった訳だ。

果たしてこれのどこが巡礼なのか、という訳だが、
そうか、色がついてない、のか。

色彩の色とはつまり、色っぽいの色、俺の色が、と小指を立てるなんて表現方法が昭和には存在したわけで、
つまりは色彩の無いとはぶっちゃけ「童貞」ということだったんだよな、はいはい。

青春をはるかに過ぎてから、なああんだ、あんときのあれってそういうことだったのか。
くっそう、そうと判っていればやってりゃよかったな、なんてのは誰もが思うこと。

つまりは、童貞でなにもちんぷんだった少年が、16年も後になってあのときっていったなんだったの?
と聞いて回って、なあんだ、君も僕としたかったのかあ、俺は童貞だったから全然判らなかったよ、で終わる話なのであった。

つまりさあこれ、まあ誰もが通る道なのだろうが、それを40前になるまでくよくよし続けていたこのいたいけなとっちゃん小僧。で、そのとっちゃん小僧ぶりを「喪失」やら「傷心」やらと勘違いしてしまうことこそが、
まさに村上春樹ワールドの真髄であるなあと。

これが村上龍だったら・・・

クラブで知り合った高校生同士がエックス食っては乱パー狂い。
らりらりの陶酔の中でこの俺たちって完璧な調和、とか倒錯してるうちに
穴さえあれば前も後ろもあるいは男でも女でも同じだ、と三つ巴四つ巴。
面白半分のSMごっこが癖になっていまはしっかりその手のお店でがんばってます、
なんて話になるのだろうがな。

と、そんな話がノーベル賞?ありえないでしょ、と細く笑うのであつた。

じゃな


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プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾歳月
世界放浪の果てにいまは紐育在住
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

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