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「日本を出たとき」

Posted by 高見鈴虫 on 09.2014 旅の言葉   0 comments   0 trackback

初めて日本を出たとき、実は腹巻きの中に20万円持っていた。
全て友人達から借り集めた、あるいは騙し取った、脅し取った金。
つまりは香典代わりに毟り取った金であった。

そして実は、その後の数年後に日本に帰りついた時、
その20万はほとんどまるまる腹巻の中に残っていた。

つまり旅の間、ほとんど金を使わなかった、
あるいは、なんらかの方法で金を補充をしていた訳だ。

が、そんな金も、日本に帰り着いてから友人達に返す間もなく、
帰国後半月もたたないうちに嘘のように無くなってしまったのだが。

と言う訳で、俺が旅の間中、いったいどうやって無銭旅行をしていたのか。

コロシ以外はなんでもやった、とまえはいかないが、
なんだかんだでかなり肝の冷える思い、
時として完全に万事休す、諦めた、思いも何度かしたが、
びた一銭も失くして路頭に迷い飢え死に寸前、とならなかった理由は、
とどのつまり、旅の間中、俺は人の情けにすがって生きてこれたからだ、
と今になって思っている。

香港では残飯漁りに近い形で屋台の残り物を食らっていた覚えがある。
バンコクでは安い娼婦の部屋に居候しながら屋台のソバばかり食べていた。
カルカッタではストリートパフォーマーとして宿代と飯代をまかない、
カトマンズでは道中でひっかけたツーリストの女に寄生し、
ポカラでは地元で知り合った不良仲間の家に転がり込み、
再び舞い戻ったインド、
バラナシでは適当ないんちきアシュラムに紛れ込んでは結構ぬくぬくと暮していた。
デリーではひょんなことから手に入れたブツをさばいて割りとでかい金を手にし、
その金を元手にパキスタンに入り、ラホールからイスラマバッド、
そしてペシャワールまでヒッチハイクして上り、
アフガン系のハザラ族のキャンプに転がり込んでそこのお世話になり続け、
その後もハザラ族のコネクションでなんとか戦時中のイランを生き延び、
そして無事にトルコに渡ることができた。

が一度、準文明国であるトルコに入った途端、
生命の危機なんてものからは遠ざかったのだが、
これまでの後進国、あるいはアジア諸国では当たり前のように通用した人の情け、
あるいはバクシーシに頼った方法が早々に破綻を来たし、
ことギリシャに入ってからは、人の情けなどまったく期待できず。

がそんな俺の前にも、なんとも幸運なことにひっかかって来た地元の不良グループ、
かつあげされそうになったところを逆にかつあげ返してやり、
そんなこんなでなんだかんだと客人扱いされては美味しい思いをさせてもらった。

と言う訳で、まあ相変わらずと言ったら相変わらず。

世界中どこに行っても最低最悪の連中に囲まれ、
最低最悪の宿と最低最悪の食い物ばかりであったが、
それは日本においても同じこと。

その後、なんとか命からがら日本行きの切符を手に入れて
どうにかこうにか日本の土地を踏むことになった。

逆に日本に居たときよりもすっかりと健康的になって帰りついた。
つまりは、元気になって帰って来た、ということだ。

今だから言えるがほとんどただの犯罪行為のようなことも多かった筈だが、
少なくとも日本に居たときよりも心身ともに健全であったように思う。

がしかし、そう、日本に帰った途端に、
旅の間に培った元気もパワーも活力も、
一瞬のうちに吸い上げられて干上がって蒸発してしまい、
残ったものはなんとも居心地の悪い違和感とそして再び嵩み始めた借金の山。

その後、なんとか職にありつくも24時間徹底的に虐め抜かれ息も絶えだえ。
挙句に警察に呼ばれるヤクザに追われる共産党に泣きつく、
と散々な思いをさせられた挙句に、ついに我祖国日本での居場所を完全に喪失。
旅行者というよりは旅人、
というよりはほぼ喰いつめ移民、あるいは夜逃げに近い形でアメリカに渡った訳だ。

そんな訳で、今にして思うと、そんな最悪最低野郎にとって、
日本こそが一番きつい土地であったな、と思っている。

もうすでに日本を離れて20年にもなるが、いまでも日本には帰りたくない。

あれほど心の底から冷え冷えとする思いはなかった。
そしてそんな日本の記憶はいつになってもあまり思い出したくない。

日本は冷たい場所であった。

特に東京のあの冷たさ、意地の悪さは半端ではない。
許容量が極端に小さいというか、つまりは町に包容力がない。
あるいはそれが旅行者と在住者の違いなのか。

つまり旅人とは甘えで生きているだけの話なのだな。

旅にでれるうちに旅にでておいたほうがよい。
人に甘えて生きられるうちはそうするに越した事は無い、といまになって思う。


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プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾年月。
世界放浪の果てにいまは紐育在住。
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

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