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「こともあろうにあいつの名前」

Posted by 高見鈴虫 on 06.2014 日々之戯言(ヒビノタワゴト)   0 comments   0 trackback


ひょんなことから、
よりによって会社の他の部署にいる人間から、
こともあろうに高校時代のダチの名前を聞かされた。

ご出身が一緒なんで、もしかしたらご存知かと思いましてね、いっひっひ。

と皮肉交じりの慇懃さでそいつの名前を聞かされたのだが、
思わず顔がこわばるのを感じながら、無理やりに辛うじて、いや、知りませんねえ、とだけ答えていた。

あいつはいま西海岸にいるらしい。

がしかし、この期に及んでよりによってあいつの名前をこんな会社の中で聞くことになるとは。

まさに因縁を感じざるを得ない。

ただひとつ、その名前を口にした奴。
あいつがてめえなんざの前でどんな面しているか知らねえが、
少なくともあいつは高校二年の夏、地回りの本ちゃんさえもが避けて通るような
とんでもねえ反グレ野郎を、たったのパンチ一発でノックアウトした、そういう男なんだぜ。

その後も、あれしてこれして、なにしかにして、とまあ、
まさしくとんでもない男としてとんでもない人生を送って来たのだろうが、
つまりは、そう、少なくともてめえみてえのようなオカメミジンコのメガネ猿野郎なんかが、
良いの悪いの言えるような輩じゃあ、全然ねえ、ってことなんだよ。

と、かくなる俺も、つまりはまあ似たような者、つまりは同じ穴のムジナ。

いまとなっては、こんなこましゃくれた会社でこましゃくれた面を下げて、
虫も殺せぬおぼっちゃまたちに調子を合わせては、
餓鬼の時分から何不自由なくぬくぬく暮してきましたマザコンのとっちゃん小僧でごじゃります、
みたいにかまととぶっていはいるが、

蓋を開ければちーぱっぱ。

やらずに後悔するぐらいならやってしまっててんぱりこいた方がまだまし、
という、
あのカリフォルニア・ドリーミングにあった貴重な逸話をもっとうに、
人生たかが二万日、どころか、例に及んであのノストラダムスの大予言、
どうせ1999年の夏に終わる世の中。
やりたいことだけをやりたいようにやりつくすのがお天道様へのけじめだろ、
とばかりに暴走を続けた結果。。

伝説や、逸話、というよりは、つまりは恥の上に恥を重ねるような、
とんでもない大失態を積み重ねてきた俺の人生。
つまりはそう、あいつも似たようなもの、そうであったに違いない、
というよりも、ほぼ確信をもってそう言い切れる。

そして今、この齢を過ぎて、そんな悶着からようやく一息。
そろそろ猫を被ってはカタギの間に潜り込もう、と変装ごっこを始めた矢先、

いきなりあいつの名前を聞かされるなんざ、これはまさに血の轍。
まさに因縁と言わずとしてなんと言おう。

しかもあいつである。
よりによってのあいつである。

俺たちはその互いの大失態人生の、その幸先であり、きっかけであり、
そして、これまでの人生の中でも飛び切り、一番どうしようもなかった時代、
つまりはその高校時代を、互いに共有しているという訳なのだ。

と言う訳で、あのオカメミジンコの口からあいつの前で、

もしかして、なんとかさん、ってご存知ですか?
うちの会社の別の部署にいるものなんですがね。ご出身が同じならしくて、

なんて言われた日には。。その光景を思い描いただけで、あちゃあ、と思わず頭を抱えてしまう訳だ。

ええええ、あいつがああああ!! 
あんた、それはとんでもない、すぐに逃げた方がいいですよ。
いまはどんな顔しているかは知りませんが、
なんてったって、あいつはね。。。。

と言う訳で、あいつの名前を聞いたとき、
いまになって身の回りに仲間ができない理由がよく判った。

あの頃のダチのようなやつらが、この歳になって回りにいる訳がねえじゃねえか。

そしてあの頃のダチのようなダチ以外、わざわざ欲しいとも思わない訳だ。

と言う訳で、こんなちんちくりんなおぼっちゃま連中に囲まれることの代償で、
まあそれなりの月給を貰うこともできているわけなのだが、
がしかし、
だからと言って俺の人生がそんなおぼっちゃま連中と同化できるか、
と言えば。。。思わず鼻で笑ってしまうわけだ。

という訳で、そう、そうなんだよ、あいつのことだよ。

西海岸にいるらしい。

あいつらしい、と言えばあいつらしいが、
いったいどんな面して暮らしているのやら、
なんか、まじで、全てを放り出して会いに行きたくなったりもした。

日曜の朝にいきなり単車で乗り付けて、

よお、悪い、悪い。ちょっと遅れたがしっかり迎えにきたぜ。さあ冒険の旅に出かけよう。

世界中の女とやりまくって、世界中の生意気な野郎をぶちのめしてやんだ。

そう言って、途方に暮れるあいつをけつに乗せて、そのままメキシコの国境まで走り去ってしまいたくもなる訳だ。


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プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾年月。
世界放浪の果てにいまは紐育在住。
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

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