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「喫煙家と嫌煙家の狭間で」

Posted by 高見鈴虫 on 15.2014 ニューヨーク徒然   0 comments   0 trackback


昔タバコを吸っていた頃、
タバコの煙りを嫌がられるたびに、
うっせえバカ、と思っていた。

吸殻のポイ捨てを見咎められるたびに、
ああ、わあったわあった、と手を降りながら、
さりげなく中指一本。

そんな俺はいちいちタバコなんてものに目くじらを立てる嫌煙家のやつらを、
なんとも狂信的且つヒステリックな、環境至上主義のアホ、
つまりは、嫌な奴ら、と思っていたもので、
タバコを嫌がる奴らは嫌がる方が悪い。
タバコが嫌ならさっさと向こうに行きやがれ、
あるいは、タバコに文句を言う前に
てめえの神経症なり性的欲求不満なりをどうにかしろ、
と思っていた訳だ。

そんな俺が、タバコを辞めて早二ヶ月。
いや、辞めたという訳ではなくて、
それまでの火をつけて煙りを吸う、という動作から、
なんてことはない電子タバコ、
つまりは電気的に水蒸気を発生させて、
ニコチン入りの水蒸気煙を吸引する、
という方法に切り替えただけなのだが。

と言う訳でこの電子タバコ禁煙。
思っていたほどにそれほどの不満も不自由もない。
まあ確かに、生ピとシンセぐらいの違いはあるが、
まあ好き嫌いは別にしてシンセにはシンセで便利なところもある訳で、
煙りが出ない、つまりはばれにくいという特性を悪用して、
場所に捉われず仕事中でも電車の中でもスパッと行ける。
電池が続く限り、あるいはフィルターに味が残っている限りは
際限なくこのまやかしニコチンを吸い続けることもできる。

当初感じた喉へのイガイガ感もじきに慣れて、
気がつけば赤ん坊のおしゃぶりのように、
四六時中これを咥えている訳で、
下手をするとその中毒度は本ちゃんタバコよりもずっときついような気もする。

がしかし、ここに来てどうにも本ちゃんタバコの匂いが鼻につくようになってきた。
喫煙者が近くに寄るだけで、その焦げ臭い据えた匂いがツンと鼻につく。
地下鉄の中、混んだ車内でそんなタバコの口臭をまともに吹きかえられたりすると、
おもわずうっとして顔を背けてしまったりもする。
そして街の雑踏。
人ごみの中、特に犬を連れている時など、
先行く人の指の間にタバコが揺れているのを見ると、
思わず、この野郎、邪魔だなあ、と思う訳だ。

てめえ、俺の犬にタバコの火先なんて押し付けやがった日にはただじゃおかねえぞ、
とちょっと身構えてしまったりもして、
事前に身体を避けながら、ついついきっとした眼で睨みつけてしまったりもする。

と言う訳でここに来て、俺はなんというか、立派な嫌煙家になりつつある。

喫煙者が眼に付くたびに、臭え、邪魔だ、目障りだ、とカツンと来てしまうところもあって、
まさかそれだけで後ろ頭をどつく、という訳でもないが、
犬の歩くところに吸殻のポイ捨てなどしやがったら、
おい、てめえ、それ拾えや、犬が食っちまったらどうする気だ、
と文句の一言も言いたくなるぐらいに喫煙者がうざったくなって来ている。

つくづく人間ってのは自分の立場でしか物が見えないものなのだな、
と痛感する訳で、今になって昔の俺、
つまりは嫌煙家を心底子バカにしていた俺がいかに嫌煙家に嫌われていたか、
という事実なのであつた。

と言う訳でこの電子タバコ。
身体に良いのか悪いのかは別としても、
そんな意味でちょっと新しい世界を覗かせてもらった、という意味では感謝している。



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プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾歳月
世界放浪の果てにいまは紐育在住
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

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