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「出張の翌日」

Posted by 高見鈴虫 on 13.2014 とかいぐらし   0 comments   0 trackback


出張中、また新たなる雪嵐の到来のニュースは届いていた。

雪も降り出さないうちから遠方から来ている連中の元には
早々と空港封鎖によるフライト・キャンセルの連絡が入り始め、
ディナーの席で、やばい明日は午後には切り上げねば、
おいおい、俺の便もキャンセルだよ、どうしよう、なんて話にもなっていた。

と言う訳で、雪嵐に追われるように、会議も早々に切り上げて帰路に着いた。

予報ではあと3時間もするとこの地方は雪に覆われる。
そしてニューヨークに雪が降り始めるのは夜10時過ぎの予定。
フリーウエイをひた走りながら、背後から迫る雪雲と追いかけっこ状態。

お陰さまで無事にご帰還を果たし、顔を見たとたんに飛び掛ってきた我愛犬。

なんだよなんだよ、どこに行ってたんだよ、と顔中を舐められながら、
やはりこれ、そう、まさしくこの顔中舐め舐めの瞬間こそが、
出張中ずっと、心の底から楽しみにしていた瞬間ではあったのだ。

がしかし。。
なんか今回に限って、そのお帰りがやけにあっさりとしている。

で、なんだよ、こっちおいで、とやると、
かみさんの後ろに隠れてしまったではないか。

かみさんの後ろからそれとなく俺の姿を覗きみながら、
その表情に妙な違和感というか、ぶっちゃけ怯えが見える。


そう言えば出張前、ちょっとしたこと、
つまり、塩避けのブーツを履かせようとした時にさんざん厭々をされて、
思わず、おい!と大声を上げてしまったことがあった。

で、出張の道中、やれやれ、あんな大声を上げるべきではなかった、
ちょっと悪いことしたな、と気になってはいたのだ。

あるいは、
まあ確かに出張中はずっとかみさんと二人きりで、
甘やかされるだけ甘やかされていただろうから、
そんなデレデレの中にあって俺はすっかり乱入者ということにもなるのか、
つまりはそういうことなのか、
ぶっちゃけ、ハート・ブレイクとは言わないまでも、
なんというか、脱力感というか、
つまりはこれ、お父さんの孤独、という奴なのだろうな。

と言う訳で、
予報どおり一夜明けてみれば街は大雪、大吹雪の真っ只中。
出張の翌日ということもあって、この大雪を理由に自宅勤務。
ちょっと自分を甘やかしてずるをしてしまった気分。
がしかし、そう、自宅勤務にした本当の理由とはつまりお散歩である。

出張中、雪嵐到来の知らせを受けて、
おお、ってことはそれを口実に明日は自宅勤務。
思い切り朝から昼から散歩してやろう、とたくらんでいた訳だ。

朝の目覚ましが鳴った後、
普段ならジャケットを羽織って出かける俺をしゅんと肩を落として見送る筈が、
いきなりお散歩用の服を着始めた俺を見たとたん、
見開いた両目をらんらんと輝かせてはベッドの上を跳ね回り始める。

そうそうそうこなくっちゃ。これこそが出張後の楽しみなのだ。

おっし、大吹雪だぞ、よし出発、と喜び勇んで外に出てみれば。。。

なんと世界はまさに正真正銘の大吹雪である。
信号の灯りも見えないぐらいに世界は降り積もる雪の中に真っ白。

いちおういつものカシミア・セーターの上から黄色いレインコートを着せて、
足には塩避けブーツを履かせているのだが、
その上からみるみると雪が積もり始めて、払えども払えども一瞬のうちに身体中に雪が積もり始める。

凄いな、こんな雪見たことないぞ。

とそんなこんなで辿り付いた公園。

綱を放したとたんに待ってましたとばかりに飛び込んだ白い大平原。
がしかし、いきなりどぶんと身体中が雪の中に埋まってしまったではないか。
雪の上から頭だけ出して夢中になって雪を掻き分けるその姿、
まるで嵐の波間を行くおっとせいのよう。
せがまれて投げたボールが雪に落ちたとたんに一瞬のうちに掻き消えてしまう。

うへえ、どこだどこだ、と猛然と雪をかき始めるブー君。
顔中身体中を雪で真っ白。
それを見て走りこんで来た悪童どもが一緒になって走りまわり転げまわり。
にわかに始まった雪の中の大運動会。
まさにハッピー光線の炸裂する大吹雪である。

そんなこんなでようやく帰り着いた我が家。

危うく間に合った9時からの電話会議を聞きながら部屋中に濡れた服を干して一息。

最近残すことの多かった朝食も一瞬のうちに平らげて、
そうか、ここのところ食欲が落ちたと思っていたのは、つまりは運動不足ということなのか。

で12時までは一応仕事。ブー君はまるで死んだように眠りこけていたのだが、
正午になったとたんにいきなり飛び起きて、さあ、お散歩です!と眼を輝かせている。
相変わらずこの犬の時間認識の正確さ。まさに奇跡を見るようである。

朝の大吹雪がいつしか大雨に変わっていて、
吹き荒れる突風の中を雹交じり雨が降り注いでいる。
とたんに積もった雪がぐちゃぐちゃ。
レインコートなどなんの意味もないぐらいに犬も飼い主も身体中がぐちゃぐちゃ。
がそんなこと気にする風もなく、
公園についたとたんに集まってきた犬たちとさんざんにボール遊び。

2時に戻ってまた電話会議。を聞きながらまたまた部屋中に濡れた服を広げては乾かして、
身体を拭いたとたんにばたんきゅうと倒れこむブー君。
そのまま5時まで熟睡。
でふとするといきなり後ろにブー君。
ああ、もう五時か、と立ち上がればすたすたと玄関に。

と言う訳で大吹雪の去ったニューヨーク。
まさに街中がぐしゃぐしゃ。
交差点ごとに巨大な水溜りが広がっていて、足を突っ込んだとたんにいきなり膝の下までどぶんと水の中。
そして氷水がこれでもかとブーツの中に流れ込んでくる訳でまったくいやはや。

当然のことながらこの街はこんな大雪が降ることを想定して作られていない。
夏の台風も然り。
つまりこの21世紀になってから毎年毎年の異常気象。
つまりなにからなにまでが想定外な訳で、いやはや大変な時代を生きることになったものだ。

濡れた身体を乾かしていたらとかみさんも帰ってきて、
夕食の後にオリンピックの録画をみていたらいきなり雷が鳴り響き、
窓を叩く霙まじりの雷雨。

夜のお散歩はスキップとなった訳だが、それでも大満足のブー君。
ベッドに入ったとたんにいきなり隣りに飛び込んできて、
添い寝をしているそばからすやすやと寝息を立て始める。
そんな犬の寝顔を見るたびに、いやあ、家はいいなあ、帰ってこれて本当に良かった、
と心の底からにまにましてしまう訳である。


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プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾歳月
世界放浪の果てにいまは紐育在住
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

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