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自画自賛人生

Posted by 高見鈴虫 on 13.2014 今日の格言   0 comments   0 trackback
ここだけの話、実は俺はわりとすっげえ面白い奴である。

ガキの頃から放浪癖があって全国を転々とした。
その後バンドマンになってライブハウスでドラムを叩き、
不良ではないがいつも不良のダチとつるみ、
生まれ持ってのお祭り男で、
切った貼ったの騒ぎには必ず首をつっこんだ。
勉強はできないが誰よりも沢山の本を読み、
喧嘩は弱いが場数だけは踏み過ぎるぐらいに踏み続け、
ちんちんは小さいが女が好きで好きでたまらず、
が、女か野郎同士の遊びか、と言えば必ず野郎を選んだ。

ホームレス同然の暮らしをしていたこともある。
大学生をしていたこともある。
プロのバンドでドラムを叩いていたこともあり、
その後、世界を貧乏旅行。

世界中の街でドラムを叩き
世界中の女とやりまっくって、
世界中のドラッグでぶっ飛びまくり、
世界中のおもしれえ奴と、
世界で一番美しいビーチを探し、
世界で一番おもしれえ遊びを探し続ける

ってなことをやっていたら、
そうこうしているうちにどういうわけかここニューヨークに落ち着いていた。

最高の経験もしたが最悪の経験もなんどもした。

死にかけたこと、殺されかけたこと、
そして本気で人を殺しかけたことも何度かあった。

ゴミでもなんでも食ってやる、
というぐらいに金のない経験もすれば、
金だったら掃いて捨てるほどある、
だがこんなものいくらあってもしかたがねえ、
という経験もした。

100円拾ったらっきー、ぐらいの乗りで寝た女は数知れず。
ろくに眠れず飯も喉を通らないぐらいに恋しながら、
その手にさえも触れられない女もいた。
考えうる限りこれ以上の女はいないという女と恋に落ち、
死んだほうがましだというほどに哀しい思いもした。

やさしい女、可愛い女、小悪魔も悪女も魔女も
白いの黒いの半分づつから黄色いのちょっと黄色いの、
と並べれば綺麗なグラデーションになるほどの女と知り合った。

数限りなくご機嫌な奴らとつるみ、
笑い泣き怒り、時として憎み合いしかし愛し合い、
助け合い頼りあい縋りあい求め合いそして互いに足を引っ張り合い、
そのうちの何人かはすでに実にあっさりとこの世を去り、
そして奴らはいまも俺の胸のうちでしぶとく生き続けている。

世界最高のシェフの作った最高の料理を最高のレストランで、
それも貸切で食べたこともある。
キャビアの食いすぎで下痢をしたこともある。

これを食らうぐらいならゴミの方がまだましというぐらいに
ほとんど食物としての限界を越えているゲテモノさえも、
なんども口にしてきた。

実はいまでも現役のドラマーである。
いまこの瞬間にでも、さあマジソンスクエアでドラムを叩け、
と言われればほいほいとプレーできる。

テニスラケットひとつ担いで公園に行けば、
そのあたりのたいていの奴とは互角に打ち合える。

犬磁石、と言われていたこともあって、
世界中どこにいってもどこからともなく現れた犬が
俺のお供を申し出た。

いまでもひとたびドッグランに足を踏み入れれば、
犬と言う犬がとたんに駆け寄ってきては顔中を嘗め回す。

イルカと泳いだこともある。
鳥がよく肩にとまる。
猫がいつのまにか膝の上で寝ている。

ストーンズとコルトレーンとチェットベイカーとルーリード。
ジャズとサルサとオペラとロックンロール。
テニスとスキューバと自転車と
詩人でアーティストでドラマーで、
類のないぐらいの女好きながら、
ゲイにはもてもてのプリチーボーイ。

そんな俺が面白くないわけない。

事実俺の体験談は、某出版社に勤めるダチ経由、
ネタにつまった作家や漫画家の手によって、
いくつもの作品として世に出回っているらしい。

つまりそんな俺の話を、あんたも知らぬうちにどこかで見聞きした覚えがある筈なのだ。

そんな俺なのだが、だがしかし、会社ではそんなそぶりは、これっぽちも出しはしない。

会社とプライベートは別人。
それが俺の絶対のポリシーだ。

なぜかと言えば、仕事とプライベートを混合してろくなことになった試しがないからだ。

という訳で、俺はいくつもの名前を持っている。

仕事場での俺と、
ステージでドラムを叩く俺と、
テニスコートでジャンピング・ボレーを決める俺と、
ターミナル5でステージからダイブする俺と、
ブルーノートのカウンターで温いビールを啜る俺と、
パンクバンドで8ビートを叩く俺と、
場末のバーの三角ステージでブラシを回す俺とは、
すべて、違う名前。
SNSのアカウントがいくつあっても足りないぐらいだ。

そんな訳で、テニス仲間は俺のドラムを知らず、
音楽仲間は俺が犬を飼っていることを知らず、
犬仲間は俺がなんの仕事をしているのかさえ知らない。

そんな俺は、実は昼の時間、
つまり、ドッグランにもテニスコートにもジムにもプールにも、
ドラムの前にもいない時には、
米系大手会社で自称一流勝ち組リーマンの面を装って生きている。

そんな風なので、会社での俺は、つまりはまったくそれ用の俺、
つまり、生まれてこの方一瞬たりとも道を外さずに、
陽の当たる場所を日向の人々に囲まれて生きてきた、
という顔を崩したりしない。

それはつまり、なぜかと言えば・・・

そう、たぶん、もったいないから、
あるいは、ちょっとした復讐でもある。

俺の本当のことは、俺の本当に好きになった奴にしか見せたくない話したくない。
そしてそんな俺が本当に好きな奴に出会えることはほとんどない。

が俺はこの孤独が心地よくもある。

これがつまりは、大人の余裕という奴なのかな、と思い始めている。

が、しかし。。。。飽きた。
つくづくクソッタレと思い始めている。

そしてまた新たな自分をでっち上げたくなってきている。

次はどんな面をしてみようかな。

この春からはまた別の人生を始めよう、とひそかに画策している訳だ。


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プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾歳月
世界放浪の果てにいまは紐育在住
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり
実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

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