Loading…

AMERICAN BITE その十一

Posted by 高見鈴虫 on 16.2014 日々之戯言(ヒビノタワゴト)   0 comments   0 trackback
そんな中、街の目抜き通りに大きな楽器屋がオープンすることになった。

その開店祝いの際に、ダチのギタリストとつるんで、覗きに行ったのだが、
広大な楽器場にずらりと並んだぴかぴかの楽器たち。

思わずデモ用に設置されたドラムを眺めているうちに、
そのひとつ、つまりは、そのもっとも目立つ場所に展示されていた、
ラディックのクリスタルクリア。

思わず、思わず、ちょっと、ちょっと、だけで良いから、ってな感じで店員の目を盗んで叩き始めたのだが、

店をそぞろ歩きしていた連中。

なんだあのチャイニーズ、いったいなにを始める気だ?シンバル二つ渡してちゃかちゃかやらしていたほうがいいんじゃねえのか?ってな感じのいかにも小馬鹿にした薄笑い。

おい、邪魔だどけ、と言う店員の前で、思わずちょっと切れた。

うるぜえ、がたがた言わないで、チューニングキーを持って来い。

という訳で、始めたのはWALK THIS WAY。

誰でも知っている、誰でも入れる、白人も黒人も誰でも踊れるこの単純明快な曲。

そして待ってましたとばかりに売り場の向こうからダチのギタリストがリフを被せてきた途端、店中に電気が走った。

ヘッドフォンを被って試し弾きをしていたギター野郎がいきなりマーシャルのアンプにシールドをぶち込み、
ベース野郎は慌てふためいてチューニングを始め、と見る見るうちに一人二人三人四人。
あっという間に店中のアンプというアンプに火が入り、ギター30本、ベース20本、ドラム十台、がいっせいにWALK THIS WAY!

いったいなんの騒ぎだ、と道行く人々が集まってきてたちまち満車状態になった駐車場に溢れた人々がビール片手にWALK THIS WAY と大合唱。

カーボウイが黒人がメキシコ人が、老若男女が、まさに街中の人間が集まってきては、
店が揺れる、車が揺れる、街中がゆれるような一大ジャムセッション。
挙句に新聞社からFM局からが駆けつけて生中継を始める始末。

その中心にいたのがまさしく俺。
ドラムソロ!と呼ばれたときには思わず調子に乗ってジョンボーナムをしてしまった訳で、その時ばかりはまさに本領発揮、思い切り度肝を抜かせてもらった。

その後、曲はHONKEY TONK WOMENから、BROWN SUGARから、SWEET HOME ALABAMAから、夜の更けるまでBLUES JAM。

という訳で一夜明けてみれば俺は街中の有名人。

それからというものどこに行っても、WALK THIS WAY!
遊びに出れば頼みもしないのにビールが並び、信号待ちの交差点でいっせいにクラクションを鳴らされ、
全ての音楽関連のパーティではまさにVIP待遇。
挙句にスピード違反をつかまった時にも、おお、WALK THIS WAYか、という訳でお咎めなし。

改めて言う。芸は身を助く、なのである。


  • password
  • 管理者にだけ表示を許可する

trackbackURL:http://shumatsuwotohnisugit.blog.fc2.com/tb.php/1948-929b5224

プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾年月。
世界放浪の果てにいまは紐育在住。
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

©終末を疾うに過ぎて...
無断丸々転載・そのまま転写はご勘弁ちょんまげ

月別アーカイブ

検索フォーム