Loading…

AMERICAN BITE その十三

Posted by 高見鈴虫 on 16.2014 日々之戯言(ヒビノタワゴト)   0 comments   0 trackback
そしてニューヨークである。

そこには全てがあった。

バンコックのカオサンが、カトマンズのダルバール・スクエアが、パラゴンの中庭のカフェのテーブルが、
シャンゼリゼがウンターデンリンデンが、歌舞伎町が竹下通りが表参道が、
都市の魅力のすべてがこの街に集約されていた。

そんな中、物は試しと足を踏み入れたミッドタウンのサッポロ・レストラン。

そこはまさに、日本。日本の駅裏の安いラーメン屋、まさにそのもの。

それはまさにタイムスリップだった。まさにミステリーゾーン、まるで四次元に迷い込んだようだった。

いきなり深い穴の底に落ちたような、まるで深い井戸の底を覗き込んだら、気味の悪い虫がうじゃうじゃいるようなそんな気がした。

じぇじぇじぇ、これはまさに日本。まさに日本そのものじゃないか。

がしかし、その深い井戸の底、つまりは日本そのもののその空間。

へい、いらっしゃい、なんにしやしょう、と言われた時、思わず耳を疑った。

いやはや、であった。

世界中を這いずり回った末に、俺はついに日本にまで帰ってきてしまった訳だ。

日本語が出てこなかった。思わずスペイン語で、ウン・モメントと言っていた。

あの、という言葉が口に出たとき、思わず自分で耳を疑った。

俺にはこの人たちの言葉が判る。喋れる。

つまり、日本語。そう、日本語なのだ。

チャーシュー麺に、半チャーハンに、餃子と、あとはあとはあとは。。。面倒くせえ、店中のもの全部持って来い、と言いそうになった。

ニューヨークであった。つまり世界中の全てが集まる街。そこに日本がない訳がないのであった。

日本。。日本か。。

まるで身体中の力がへなへなと抜けてしまった気がした。

これまで背負い続けてきたものが一瞬のうちにふっと軽くなってしまった。

もしかして、もう俺は英語もスペイン語も喋る必要がないのではないのか。

もうタマーレスもエンチラーダもブリトーもタコスもポリョデアサダも、
マクダーネルスもジャックンンザボックスもワタバーガーも、
Tボーンステーキもフライドグリーントマトもオックステールシチューもマカロニンチーズも
すべて食べる必要がないのではないのか?

という訳でラーメンであった。やたらと塩っ辛い、味の素満載のラーメンであった。
そしてチャーハンであった。そして餃子とそしてサッポロビールであった。

馬鹿やろう、と思ったとたんに涙が滲んだ。俺の今までの苦労はなんだったんだ。

そして店を一歩出た途端、そこにあるのはまさにニューヨーク。タイムズスクエアの雑踏であった。

まるで夢から覚めたような、しかし振り返るとそこにはラーメンの赤い暖簾。

いったいなんなんだ、なんだと言うのだ。。


  • password
  • 管理者にだけ表示を許可する

trackbackURL:http://shumatsuwotohnisugit.blog.fc2.com/tb.php/1950-10ef0184

プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾年月。
世界放浪の果てにいまは紐育在住。
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

©終末を疾うに過ぎて...
無断丸々転載・そのまま転写はご勘弁ちょんまげ

月別アーカイブ

検索フォーム