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AMERICAN BITE その十五

Posted by 高見鈴虫 on 16.2014 日々之戯言(ヒビノタワゴト)   0 comments   0 trackback
ニューヨークの日系企業、それはまさに長屋であった。

このニューヨークという街で、日本人が日本人の顔をして日本語で会話をしていた。

駐在員という人々がいた。

彼らは彼らの意思に関係なく日本から送り込まれたまさに客人。

英語も喋れず、ビジネスの習慣も判らず、
仕事的にはなにひとつとして糞の役にも立たなかったが、
給料だけはひと一番、どころか、現地社員の10倍もの金額を受け取っていた。

日本において彼らがどんな位置にいたのかは俺たちは知らない。

ただ少なくともこの日系長屋の中にあって、彼らは貴族。
まさに、特権階級に当たる人たちであった。

それに引き換え、現地社員という人々がいる。

俗に言う「現地雇い」である。

このニューヨークにおいて雇われたというだけで、
同じ日本人でありながら、駐在員とは比べ物にならないような、
まるで冗談のような安い賃金で雇われている人々。

しかしながら、まるで使い物にならない駐在員たちの仕事の一切を抱え込み、
そして、まったく日本人のメンタリティそのものに、
残業を厭わず、会社に盲従し、そして会社の中ではまさに家族であった。

テキサスで孤軍奮闘をしてきた俺にとっては、
そんな日系社会はまさにぬるま湯もぬるま湯、
まるで冗談のように思えていたのだが、
これまでの禁欲生活のたがが緩んだがとたん、
まるで堰を切ったように遊びの虫がうずき始め、
さっそくできた悪仲間とつるんでは、
連日連夜、まさに夜が明けるまで遊び狂っていた。

クラックの煙の充満した地下の密室から、
いきなり転がりでた朝の街。

そのまま会社のトイレでスーツに着替え、
何食わぬ顔してあくびをかみ殺しては仕事する振りをしていたのだが、
日系会社員といえども現地雇いはすべてニューヨーカー、
身体にしみこんだハッパの匂いもクラックの匂いもすぐにピピンと気づいて、
いまだにハウスの轟音に耳鳴り状態の俺の耳元で、
どこで遊んでたの?と悪戯げにささやいたりもした。

そんなニューヨークの現地雇い、つまりは日本部落の日系長屋の住人たち。

昼休みにはみんなでつるんで日本食屋で定食を食らいながら上司の悪口を言い、
夜は夜でおしゃべりをしながら残業三昧。

そして日系の居酒屋に飲みに行き、カラオケ屋での二次会の後に、
帰りがけに立ち食い蕎麦屋でてんぷら蕎麦をすする。

そんななんともおかしな集団と連れ立ってマンハッタンの街をそぞろ歩きする姿、
まさにカルチャーギャップ、
あるいは、ミックスカルチャーの真髄。

そのあまりにニューヨークらしくなく、しかしニューヨーク以外にはありえないその姿、

無性におかしかった。



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プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾年月。
世界放浪の果てにいまは紐育在住。
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

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