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犬のおじさん列伝 そのさん チャーリーさん

Posted by 高見鈴虫 on 24.2014 犬の事情   0 comments   0 trackback
寝起きの髪にいつも二日酔いの顔をしたチャーリーさんは
実は某米系巨大金融企業に勤務するスーパーエリートだそうである。
がしかし、そんなスーパーエリートであるチャーリーさんが、
どういう訳かシンさんやらジミーさんの大親友。

日曜の朝、いつも大あくびをしながらサンダルの踵を引きずってドッグランにやっていては、
ベンチの二人の隣りに顎をしゃくると、おい、ヤニ、と二本の指をかざす。


そんなチャーリーさんを見ると、このヒトがまさかスーパーエリート、どころか、
まるっきりカタギにさえも見えないのだが、
「会社のジム」に通って鍛え上げたその見事なマッスル。
まるでその腕は棍棒どころか土管のようで、
盛り上がった筋肉に首が埋まってしまってまるで亀のようである。

シンさんの話ではそんなチャーリーさんもその昔はなんとかとなんとか、であったらしく、
つまりはこのヒトも昔は危ないヒトであったらしい。

このチャーリーさん、実はそのほっぺたに立て筋の傷があって、
まさにドスで割られた喧嘩傷、かと思えば、
それはこのドッグランでピットブルの喧嘩を止めようとした時の残り傷、
だという話である。

おまえ、そりゃねえ、自分の犬を守るためならそれぐらいのことはするわなあ、普通、
という話で、そういうチャーリーさんに、そうそう、と頷いている二人を見ると、
どうもこの人たちはやはり同種の人間たちのようである。

そんなチャーリーさんの姿を見つけた途端、
やはりドッグラン中の犬が「挨拶」を入れに駆けつけてくる訳で、
マスティフが、アメリカンブルドッグが、ピットブルテリアが、ドーベルマンが、
見るからに物騒な面構えの犬たちが、
三人の間に割って入ってはその隣りの特等席に身体をねじ込んでくるのである。

そんな猛犬たちに囲まれた三人。

両脇の犬の肩に腕を回しては、その鼻先にちゅっちゅとキスを繰り返し、
足元の子犬を膝の上においては、どうしたどうした?とその顔を覗き込んではまたぶちゅっとキスの嵐。

犬はいいよねえ、とチャーリーさんが笑う。
ほんと、人間もなんで犬みたいに素直に生きられないかねえ、
とはまさに心の篭った言葉なのである。

とそんなところに、よお、とノブさんがやってくる。
いやあ、大将、お出ましですね、と三人が笑う。

でさあ、そう、さっきの話。
なんでほら、昔悪かった奴ってさ、歳食うと犬にはまるのかなって。

誰が悪だって?俺は悪かったことなんかいちどもねえよ。
またまたあ。
いや、本当だって。俺はもういたってまじめ子。タバコだって吸ったことないぐらいだし。
タバコ吸わない悪だって山ほどいるじゃないの。
あのなあ、てめえら俺を一緒にすんなよって。俺はもう優等生のバリバリ。まじで。まじで優等生。
そう言えば俺もIQだけは高いんだよな。クラスで一番どころか文部省から視察が来たぐらいでさ、まじ、本当の話。
わったわった。はいはいって感じで。
信じてないでしょ?
え?信じてるよ。天才なんでしょ?もう見るからに天才だよねえ、そのモンモンとかさあ。
これはモンモンじゃないよ。タトゥーって言うの。誰かさんといっしょにしないで。
俺は馬鹿だったなあ。自慢じゃないけどすっげええ馬鹿。いまでも99が言えないもんねえ。たぶんうちの犬より馬鹿。
犬が99覚えたら凄いよね。
いや、犬も足し算引き算ぐらいならできるよ。まじで。
本当かね。
本当。まじでうちの犬、おやつの勘定とかできるもの。右手に3つ。左手に四つ。はいあわせていくつ?
八つ。
やっぱり犬より馬鹿かもね。
そう言えばさ、カツさんって馬鹿って言うと本当に怒るよね。
そうそう。
こないだ壁に馬鹿って書いてあったら、誰が馬鹿じゃこらっ!て怒り狂ってたよね。
馬鹿って書いてあるとみんな自分のことだと思っちゃうんだろうね。
刺激しないであげてくれる?おねがいだから。いちおうおともだちだし。
そういうノブさんなんかさ、人殺し、とか言われると、すいませんっ!なんてついつい謝っちゃうでしょ?
まっぽに職質なんてくらったら一撃だよね。
結局はさ、自分で自分のことをどう思ってるかってのがまあ問題な訳でさ。
犬ってそういう自意識ってないよね。
ないよねえ。あるのかも知れないけどさ。ひねくれてはないよね。
うん。自意識がないってのが魅力だよね。

とそんなたわいもない話を続ける4人のおじさんたちの前に、
ねえねえ、とやってくる犬たち。

ねえねえ、おじさん、ボールで遊んで。

うっしゃあ、と立ち上がるシンさん。
よしよし、やるか、と立ち上がるチャーリーさん。
その開いたベンチに、隙あり!とすかさず座る犬たち。

なんで不良って犬が好きなんだろう。
なんで犬って不良が好きなんだろう。

つまり彼らは、どこかで似ているから、な訳である。


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プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾年月。
世界放浪の果てにいまは紐育在住。
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

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