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ニューヨークは連日の大雨

Posted by 高見鈴虫 on 01.2014 ニューヨーク徒然   0 comments   0 trackback
ニューヨークは連日の大雨である。

四月も終わりだというのに、冬の底冷えを残したまま、
熱帯雨林のスコールを思わせるような豪雨が、
一日中絶え間なく降り続いている。

春の嵐、というにはちょっと酷すぎる。
桜も咲く前に散り切ってしまう、
どころか枝ごと折れそうな風が吹き荒れている。

この冬に大雪、大吹雪、はいくらでもあったのだが、
この大雨、というのも本当にたちが悪い。

雨はなによりも可愛げがない。

大吹雪はいくらうんざりした、と言っても、
そう言いながらいそいそと喜び勇んで公園に向っては、
凄い凄い!くそったれだ、やーい!と実は大はしゃぎ。
降り積もった雪の中に飛び込んで、
一番乗り!わーい、なんてのを楽しんでいたのだ。

あの時はあの時でこの糞雨よりはましだったのだな、
と今になって思い出すこの情け容赦ない土砂降りの雨。
つくづく生きていることにうんざりしてくるような、
そんな冷たい雨なのである。
という訳で、この雨、

当然のことながら犬は不機嫌である。
何故ならばボール遊びが出来ないからである。

黄色いレインコートを着せて完全武装である訳なのだが、
アパートを出たところで空を見上げるや、
いきなり腰が引けて、ええ?こんな天気で外に行くの~!?
とまさに不満気なお顔つき。

お前なあ、雨でもなんでも出すもの出さないと困るのはお前だろが。

そう、犬を飼うものにとって、雨の日も風の日も
やはりおしっことうんちには外に行かなくてはいけないのだが、
この雨風である。そしてこの寒さである。
まさに犬を飼うものの試練がいっぺんにやって来た
という具合な訳である。

がしかし、とは言うものの、さすがにこれほどの土砂降りの中、
飼われ方の犬としても、身体中を雨の礫に叩かれながらではやはり出るものものでない。

という訳で、家の前でことを済ませてすぐにUターンの筈が、
なんだかんだで大雨の中をリバーサイドパークへ。

公園の舗道はまさに大氾濫。
新緑が芽を吹いたばかりの草原はまさに一面に大海原で、
ハドソン川へと続くスロープは濁流が流れ落ちその先にある階段はまさに滝の様相。

さすがに逃げ込んだトンネル。
行き場を失くしたホームレスのおさんさえもが途方に暮れて濡れた毛布を持て余している。

見上げる空からはまさに底が抜けたように降り続ける雨。
その呆れるぐらいの降りざまに、やはりこれ、なにかおかしい、と思わざるを得ない。

夏の夕立ならいざ知らず、
この街で二日も三日もそんな土砂降りの雨が降り続くなど、
これまでにも経験したことがない。

そんなことは誰でも判っている。
判っているが誰にもどうすることもできない。

真冬用の冷凍庫作業員仕様のジャケットもこの雨の中では形無し。
思い切り雨水を吸い込んでずっしりと重い。
間に合わせで履いて来たスニーカーなどはもうバケツを履いているようにぐちゃぐちゃである。
濡れた身体が冷え始め途端にゾクゾクと寒気。
やばい風邪を引くなとは思いながら、この雨。
降り止むどころかますます激しく降り続く雨。

やれやれだな、という俺を、実に迷惑そうに見上げる犬。

まったく、なんで俺はこんな雨の中を連れまわされなければいけないのだ、
と明らかに抗議の表情で俺を睨みつけているのだが、
元はと言えばお前がさっさとうんちとおしっこを済まさないからだろう。
ええええ、だって雨の中でそんなものしたくないぜ。
判る。それは判るのだが、世の中早々と思い通りにはいかないもので。

そんな犬と見つめ合いながら、つくづくと嫌気が差してくる俺。

なあ頼むから早いところウンチとおしっこ、済ませちゃってくれないか?。

ふん、と横を向く犬。嫌だ。絶対に嫌だ。雨の中でなんかしないぞ。

くそったれ、ボール遊びもできないならもう帰る!
とやおら雨の中に飛び出す犬。

だからその前にウンチとおしっこ!

いや、それはもういい。もう帰ろう。この雨、ダメだこりゃ。

ダメだじゃなくて。お前また夜中になって外に行きたい、なんてぴーぴー泣いても知らねえぞ。

そんなこと知った事か。もういい。うんこもおしっこもいい。すぐに帰りたい。今すぐ帰りたい。

あのなあ、と。なんのためにこんな雨の中を出てきたやら、とつくづく悲しくなる。

くそったれ。この糞雨、止め!止まれ!雨なんか一生降るな!

思わず空に向けて怒鳴り散らしたくなる雨。
もう交差点の信号の灯りさえ見えないぐらいだ。
そのまま突っ切ろうとするや、いきなりクラクションを浴びてうるせえ、とファックマーク。

あのなあ、俺達はこうして土砂降りの雨の中で立ち往生してるんだぜ、
ちょっとは気を使って運転しやがれってんだ。

とは言いながら、そう車に乗っている時には乗っている時で、

なんだこの貧乏人が。こんな糞雨のなかのこのこ犬の散歩なんかしやがって。
どけどけ、死にてえのか、轢き殺すぞ、と思っているに違いないのは俺もよく知っている。

という訳でようやく辿り着いたデリの軒先。

さあ、もうあとワンブロックだ、と言った途端に、ハタと座り込む犬。

いやだ、もう雨には濡れたくない。雨がやむまでここを動かないぞ。

強情な犬である。

一度言い出すともう始末に負えない。

雨であろうが雪であろうが、いちど動かない、となるともうにっちもさっちも行かない。

あのなあ、と思わず地団駄を踏みたい気分である。
ジャケットをぐっしょりと濡らした雨がじわじわと下着の中にまで広がり初め、
くしゃんくしゃんくしゃんくしゃん、とくしゃみを連発。

そんな俺を、馬鹿かこいつは、と横目で見る犬。

呆然として見上げる空。降り止むどころかますます激しく振り続ける雨。
アスファルトに叩きつけた雨が飛沫となってはもうもうと舞い上がり風に流れていく。

ああ神様、俺はこんなところでなにをやっているのですか?
こんな馬鹿犬のために、高い家賃を払わされ、将来を棒に振り、
おまけにこんな豪雨に叩かれながら風邪を引きかけてている。

おい、なあ、もう早く帰ろうぜ・・・

犬はそっぽを向いている。まだまだ機嫌が直りそうにない。

この世の中はいったいどうなってしまうのだろう。

誰のお陰でこの世の中はこれほどおかしくなってしまったのだろうう。

がしかし、世の中がどうなってしまおうが、欲張りな奴は尚更にがっつき、
正直者はどこに行ってもどんな状況でも貧乏くじばかり。

大地震が来ようが津波が来ようが、あるいは世界が滅亡の前日になったとしても、
その原則は決して変らない。

そしてこの俺。

世界の終わりの日になったとしても、
たぶんここでこうして、犬と一緒に雨を眺めているであろううこの俺。

まったくなあ、とつくづくため息をつく。俺っていったいこんなところでなにをやっているんだろう・・

とふと見れば、ようやく機嫌のなおった犬。

さっきまでの強情さから豹変して、いきなり、さあ行くぞ、と何事もなかったかのようにすたすたと雨の中を歩き始める。

うっし、行こう行こう、おい、その前に、ピーピーとプープー。

という訳で雨である。

情け容赦無く振り続ける土砂降りの雨である。

今日もそして明日も、この雨が永遠と続くそうだ。

全身にバタバタと音を立てて弾け飛ぶ雨粒。

ああうちのシャワーもここまで威勢よく出てくれればいいんだがな、と思っていたりした。



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プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾年月。
世界放浪の果てにいまは紐育在住。
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

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