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摩天楼下の懲りない面々 ~ 離婚の功罪

Posted by 高見鈴虫 on 14.2014 ニューヨーク徒然   0 comments   0 trackback
どもども。

なんか俺も完全燃え尽き状態で、頭がぼーっとしております。

風邪とか引いてないですか?
ニューヨークでがんばりすぎて、熱でも出しているじゃないか、とちょっと心配しておりました。

で、例の話、


IMG_8009.jpg



実は昨夜、夜更けのドッグランでジェニーと話しました。

ジェニーというのは、例の72丁目ドッグランの三人の魔女の一人で、
還暦も疾うに過ぎて猛犬のピットブル・テリアを飼っているユダヤ人の婆さん。

もともとは娘がアダプトした子犬を預かったところが、
本来は闘犬として有名なこのピットブル・テリアという犬種。
その後、あれよあれと成長するごとにみるみると猛犬化の一途を辿り、
いつしか誰の手にも負えないような怪物犬。


それ以来ジェニーは毎日まるで水上スキーでもするようにこの猛犬に振り回されては、
交差点で引きずられ、階段から転げ落ち、喧嘩に巻き込まれて身体中傷だらけ。
住んでいるアパートでもすっかり鼻つまみ。
と、そんな時、
ひょんなことから知り合った我が家のブッチと彼女のピットブルが大親友になってしまい、
そんなこんなでジェニーのピットブルが悶着を起こすたびに、
俺が呼ばれてはなんだかんだと世話をしているという付き合い。


でこのジェニー。
いまでこそ鬼瓦のような顔をした絵に描いたような「ユダヤ人の糞婆」ですが、
その昔は舞台女優兼演出家としてニューヨークのブロードウエイ界ではちょっとした顔役だった人、らしい。
古くは、いちご白書のモデルにもなったコロンビア大学の学生運動の闘士だったという話で、
いまもバリバリの民主党運動員であると同時に、
60年代70年代のニューヨークのサブ・カルチャーの生き証人。


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で、このジェニー、実は筋金入りのシングル・マザーだった人。

旦那の浮気に業を煮やして離婚を決意し、
女手ひとつで娘を育てながら生き馬の目を抜くニューヨークで人生の荒波を泳ぎ続けて云十年。
その後、コロンビアの修士課程を卒業し、いまは客員講師をやっている、という猛者。

還暦も疾うに過ぎてなお自身の犬が巻き起こした悶着では、
相手の犬の飼い主と掴み合いの大立ち回りをするようなどうしようもない婆さんですが、
そういうキャラクターが幸いしてなんだかんだで俺とは妙に馬が合います。

と言う訳で昨晩、また例によって夜更けのドッグランのベンチで
犬にボールを投げながら話し込んでいました。

親の我侭で離婚だなんだで迷惑をかけられる子供はたまったものじゃない。
少なくとも子供が大学に入るまでの間は嘘でもなんでも仮面夫婦の関係を続けるべきだ、
それが親の責任というものだろう、との俺の意見に、
ジェニーは、「Bull Shit! Totally Disagree」だそうです。

女を舐めるんじゃないよ、とジェニーさん。

そして親が果たすべき一番大切な責任、つまりは、子供に教えるべき最も大切なこととは、

「人間は自分に正直に生きるべき」ということ。

そして、「どんな状況に陥っても前に進み続けること」

ジェニーは、自身の生き様を通してこの人生で最も大切なことを娘に教えることができた、
それをとても誇りに思っている、と胸を張っていました。

がしかし、そういうジェニーの言う彼女の生き様がまさに尋常ではない苦労に継ぐ苦労の連続で、
しかもその七転八倒がいまも現在進行形であることを知っている俺としては、
つくづく懲りない婆さんだな、と思わず苦笑い。

ただ、お話したとおり、先日ジェニーの育て上げた娘・マイキーの結婚式が行われ、
その際には、別れた旦那も招待されて、ついに三人で写真を撮った、とのこと。

あの馬鹿男のしみったれた顔、本当に見せてあげたかったわよ、ガハハハ、だそうで、
ジェニーらしいと言ったらまさにジェニーらしい逸話。


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そんなジェニー、夫婦喧嘩のたびに愚痴をこぼすうちのかみさんにまで、
あんな甲斐性なしの駄目男、さっさと別れて新しい男を見つけないさいよ、と離婚を焚きつけ始める、
というまったくもってどうしようもない糞婆である訳なのですが、
まあそんなところも、いかにもニューヨーカー。

いくつになってもタフでビッチで狡猾で、そして妙に人懐っこくお喋りの世話焼き、
転んでもただでは起きない、まさに摩天楼の下の懲りない面々そのもの。

離婚した後、しばらくは途方に暮れて泣いてばかりいたんだけどね、
持っていた服が全部ぶかぶかになってしまって、
で、とりあえずと思ってジーンズを買いに出かけたのよ。
したらね、いつのまにか20キロも痩せていた私、
スリムのジーンズを履いた姿がすっごく格好よくてさ。

うへえ、私、すっごくセクシーじゃない!!

その時、離婚して本当に良かった、と思ったの。
私の本当の人生はあのリーバイスのジーンズから始まったようなものよ。

子供を舐めちゃだめよ。
子供の前で嘘をつくなんてできる訳がない。
子供は親の嘘だけはぜったいに見抜く生き物なのよ。
だから親が一番肝に命じなくてはならないことは、
子供の前では決して嘘をつかない、ということ。

私はマイキーの前で嘘だけはつかなかった。
ため息ばかりついていたし、泣きもしたし、たまには癇癪も起こしたけど、
でも嘘だけはつかなかった。

子供に一番伝えなくてはいけないことは、まさにそのこと、なのよ。

ちなみにジェニーの娘・マイキーは、現在世界に轟く超一流企業のエグゼクティブ。
とんでもない額の給料を稼ぐバリバリのキャリア・ウーマンな訳ですが、
そんなマイキーが結婚した旦那はどこかぽよぽよとしたナヨ系のおぼっちゃま風の抜け切れない
まさにとっちゃん小僧。
この結婚を契機にマイキーにお金を借りて大学院に行きなおす、とのことで、
パーティの席でもそんなジェニーとマイキーにハッパをかけられながら、
えへへへ、と頭をかいてはベッドルームに逃げ込んで、そこで隠れてハッパを吸っている、
というまったくやれやれな輩。

まったくうちの家系は男運が悪くて、と笑うジェニーとマイキーは、
しかし少なくとも男などいなくても十分にやっていけるだろうパワーの塊り。
そんなユダヤ人パワーにうちのかみさんまで感化され始めて、
ますます扱いづらくなっているというのが実情です。


IMG_8218.jpg




長くなりました。

と言う訳で、ジェニーとの夜更けの討論の結果、
うーん、と考えて、やはり俺は、少なくともここニューヨークにおける基準で言えば、
ジェニーの考えの方が真っ当であるかと思う。

でもさあ、世の女がみんなあんたみたいなドラゴン婆になったら男たちはそれこそ嫌になっちまうぜ、女は可愛くなくっちゃ、
と言う俺に、ジェニーは、けっ、と鼻で笑ってはニヤニヤ笑い。
私が可愛くないって?へえん、あんたが知らないだけで、こう見えてもいまだに現役なのよーん。

人生短いのよ。楽しまなくっちゃね。
楽しむっていうのは、つまりは自分の本当にやりたいことをやる、ってことなのよ。
その為には自分に正直であること。自分のやりたいこと、やるべきことを見失わないこと、
それこそが自分を大切にする、ということなのよ。
判った?

というジェニーは、現在、不動産取り扱い資格を取ろうと勉強中。

これまでの人生で一度もお金持ちってのをやったことがないからねえ。
最後にお金持ちとやらをやってみたくなってさ。
だそうです。
見てなさい、4~5年も経てば、あんたに家ぐらい建ててやるわよ。

つくづく懲りない婆だな、とは思いますが、そういうジェニーを見ていると、ニューヨークに来て本当に良かった、と思います。

と言う訳で、どう?ニューヨーク素敵な街でしょ?

今回はまさに駆け足でしたが、行く行くはそんなどうしようもない真のニューヨーカー達をご紹介できれば、と思います。

これに懲りずに、気が向いたらちょくちょくと遊びに来てください。

では。


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プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾年月。
世界放浪の果てにいまは紐育在住。
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

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無断丸々転載・そのまま転写はご勘弁ちょんまげ

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