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2012 サンクスギビング その一 恐怖のメイシーズ・サンクスギビング・パレード

Posted by 高見鈴虫 on 22.2012 ニューヨーク徒然
サンクスギビングの朝には、
恒例のメイシーズの巨大風船パレード。
山のように巨大なピカチューやらスヌーピーやら
ミッキーマウスやらスパイダーマンやらのアドバルーンが
アッパーウエストからミッドタウン34丁目ののメイシーズまでを大行進する。

摩天楼のビルの渓谷の狭間を、まさにモスラかゴジラかキングコングか、
というサイズの怪獣的サイズのキャラクターたちが、
それこそのっしのっし、といういか、プラプカと浮かんで大行進する訳で、
これはまあ、死ぬまでに一度は見ておいたほうがいい絶景イベント、
な訳だが、
20年もこの街に居てしまうと、そんなああまたあれか、とついつい食傷気味。

だってさ、なんといってもあの大群衆。
右も左も身動き取れないぐらいに押し寄せた大群衆を考えただけでも苦笑い。

という訳で、まあ最初の3年ぐらいで見尽くした感があるニューヨークの名物イベント。
その後は、あれあれ、まあまあ、ご苦労様なこって、と斜に見てしまうのもまあニューヨーカーならでは。

が、しかし、そう言えばそう、この風船パレード、
出発点となるのがここアッパーウエストサイド。
普段のお散歩のコースにもなっている自然史博物館のコンコースとなる訳で、
そうなればそう、朝のお散歩のついでに見物に行ってもいいかな、
なんて感じで軽く構えて出かけて見たわけだ。

という訳で、自然史博物館裏手のドッグラン。
うん、確かにここは穴場かもしれない。
行進に出発する直前の巨大バルーン達が、出番を控えてプカプカと浮いている様、
なかなか絵になる絵になる、と思わず観光客気分。

で、それなら、ちょっとばかし色気を出して、
とセントラルーパークへの道を下りはじめた所、
ふとすると前に大群衆。やれやれ、観光客、こんなところにまで押し寄せて来やがった、
と思いながら、押されるままにパレードの人ごみを進んでいた所、
ふと気がつくと見渡す限り人ひとヒト。
沿道に並ぶバリケードとの間に挟まれて、身動きのできなくなった人々と、
先も判らずに押すな押すなと押し寄せてくる群集たち。
うへ、やばい、と思った時にはすでに遅し。

つまり、前にも後ろにもびっちりと群衆が詰まっていて、
一瞬のうちに前後左右まったく身動きの取れない密閉状態。

くそったれ、やれやれだな、と苦笑いを浮かべた所、
いきなり足元で、キャン!という鳴き声。
うひゃあブッチ、お前、足踏まれれないように気をつけろよ、
とは言いながら、周囲を埋め尽くした半ばパニック状態の群衆たち、
よもや足元にうずくまる犬の姿など知ったことか、という具合。

おい、てめえ、気をつけろ、俺の犬の足踏んだらぶっ飛ばすぞ、
と怒鳴ってみても、すっかりお祭り気分でハイパーな群衆たち、
まったく知ったことじゃない、という風、
やれ押すな押すなと闇雲に押しくら饅頭を挑んでくる。

あのなあ、だから、犬がいるんだから、危ないんだから、と、
だんだんマジで煮詰まってくる。

とそうこうするうちに、
よせばいいのに、退屈したガキどもがドギードギーとはしゃぎ始め、
ヘタをすると尻尾をひっぱり始める始末。
さすがに悲鳴を上げて逃げようとするブッチ、
がまるで周囲をジャングルのように囲った足足足。
迫り来る檻の中に閉じ込められたまま押しつぶされる運命を待つばかり。
万事休すとはまさにこの事。

やばい、このまま行くと足を踏まれて病院行き、
ならまだしも、下手にブチ切れられて周りの奴ら噛みまくったりとかしたら、
病院どころか警察、下手をするとそのままガス室行きだ。。


IMG_8737.jpg



うーん、しかたがない、と万策尽きた思いで、
おいで、と手を差し伸べた途端、
まるで藁にもすがるようにいきなり胸の中に飛び込んできたブッチ。

うへえ、重い!お前、重すぎる!

子犬の頃ならいざしらず、最近のブッチ、痩せてはいるとは言いながら、
有に40パウンド以上、20キロはあるわけで、
これを両腕に抱えるというのは割りと指南の技。

人の足の檻の中からいきなり青空の下に担ぎあげられたブッチ、
さっきまでの恐慌状態はいざしらず、
いきなり子犬の頃に先祖返りか、いやあ楽ちん楽ちんと超ごきげん。
あるいはこのあまりの展望の変化に
それこそ目を白黒させて、いつものくりくり瞳が尚更の仰天顔。

しかも、ふと人間目線に出現した犬の顔、
そんなものが覗いて、へっへっへ、と赤い舌を出して笑っていたりすると、
思わずちょっかいを出したくなって、
で、わざわざ手を伸ばして頭を撫でようもうちょっとで撫でられずに駄々をこね始める子どもたち。
と、またまた押すな押すな。

で、ふと見ると、
そこかしこに覗いた犬の顔、チワワからダックスフンドからマルチーズから
不安そうな顔で鼻を鳴らしていたところ、
いきなり現れたちょっと頼もしそうな中型犬の大頭、
互いにクンクンクンと鼻を動かしては、ねえねえ、あの子と話したい、あの子のところに行きたい、
と駄々をこね始める始末。

あのなあ、お前、動くなって! ただでさえ重いんだから、と本気の悲鳴。
そんな人の気持ちも知らず、当のブッチは頭上に浮かぶ巨大バルーンを、
ほおおお、凄い凄い、ってな顔で関心しながら眺めている始末。
そうこうするうちに両腕が痺れ始め腰が軋み始め、
くっそう、ミッキーマウスもスヌーピーも知ったことか、
頼むから通りすぎてくれ、綺麗サッパリ消えさってくれ、
と祈るばかり。

やばい、まじでもう限界かもしれない、と悲鳴まじりのため息をついた矢先、
ふと気が付けば周りの家族連れの方々。
男の子を肩車したお父さんたち。
お母さんの肩に頬を埋めてすやすやと眠る子供の姿。
乳母車を放棄して一人どころか二人を両脇に抱えたお父さんお母さん。

あの・・その子たち、見るからに、まじでブッチよりもずっと重いはずなんだけど・・

とそんな驚愕に目をまん丸していたところ、
ふと顔を合わせたお母さん、肩をすくめてにっこり。
あの、重くないですか?
え?まあ、慣れちゃったから、と余裕の笑顔。

すごいなあ、母はすごい!

思わず母の愛の強さにへなへなと膝が砕けそうになった。

おい、ガキども!お母さんは凄いぞ!お前ら、その恩を一生忘れるなよ!
と、思ったやさき、
いつのまにか額に浮いた汗をぺろぺろと舐め始めたブッチ。

判った判った、お礼はそれだけで十分だから。

子供は可愛いよな。どんな苦労をさせられても。
あるいは、子供のためにさせられる苦労こそが生きる証というやつか。

生きとし行ける者全てが、実はそんな親たちの無償の愛に育まれて大きくなったんだよな。

この歳になってそんなことを思い知った次第。

HAPPY THANKSGIVING!

プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾年月。
世界放浪の果てにいまは紐育在住。
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

©終末を疾うに過ぎて...
無断丸々転載・そのまま転写はご勘弁ちょんまげ

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