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2012 サンクスギビング その六 まさかブッチが危篤状態?

Posted by 高見鈴虫 on 26.2012 ニューヨーク徒然
連休の最終日、ブラックフライデーの狂乱も過ぎ去った頃を見計らって、
久々にブーを連れずにミッドタウンまでショッピング。
普段の買い物の時には、
途端に勢いづいたブー君、
試着室に消えたかみさんを探しに走り出しては、
着替え中の小部屋のカーテンの中をいちいち覗きこんでは
悲鳴から嬌声からの嵐を浴びて大はしゃぎ、

なんてことばっかりされているので、
結果、落ち落ち落ち着いて買い物できない。

という訳で、本当に久しぶりにブーの居ないお出かけ、
たどり着いたは34丁目のユニクロ。

思わず驚愕、ここはまさに宝の山だ。

見るもの見るもの、痒いところに手の届く、
ああこれが欲しかったという商品ばかり。

GAPからバナリパからJCREWからBBまで、
アメリカ人向けである以上は、
あのブタのように太りきった標準アメリカ人の体型に合わせざるを得ない事情からか、
どれをとってみてもダブダブで格好悪いって言ったらない。

という訳でユニクロだ。
まさに情け容赦無い世界標準サイズ、まさに東洋人の身体にピッタリ。

いやあ、もう、着るものなんかもう、上から下までユニクロだけで十分です、
というぐらいに、
仕事用のワイシャツからちょっと羽織るカーディガンから、
上下のヒートテックから犬の散歩用のダウンジャケットから帽子から手袋からマフラーまで。
もうなにからなにまで全身まさにユニクロでOKというぐらいまで買いまくってしまった。

という訳で、一足早いサンタクロースのように巨大な袋を抱えてご帰還。

やあブッチ待たせたね。これでもう散歩の途中で寒いからもう帰ろうなんて言わないよ、
と顔を見た途端、喜び勇んで飛びかかってくる筈が、
いきなりドアに向けて走り出すブッチ。

あれ、どうした、と部屋を見ると、なんと部屋のシートが下痢便まみれ。

あれ、あれ、どうした、普段からはほとんど決して部屋でそそうをすることのないこいつが、
と、つまりこれは一大事の救急事態。

取るものも取り敢えず外に走り出た所、
ドッグランのある公園にたどり着く前に、急に立ち止まるや、
ぐっぐっぐ、の喉を鳴らし始めて、ぐへー、と黄色いゲロを吐いた。

あれまあ、どうした、お前がゲロはくなんて珍しすぎる。

で、吐かれたゲロをビニール袋にかき集めた途端、
さあ、早く早く、とまた一目散に走り始めて駆け込んだ芝生の上、
背中を丸めた途端にぶーっとばかりに緑色の下痢がしぶきを上げるぐらいに撒き散らされて。

お前、どうした?俺たちのいない間になんか食ったのか?

で、そのまま力尽きてばたんきゅう、となるかと思えば、
さあ、出すもの出した、ドッグランでボールをやろう、と走りだす始末。

いやはや、こいつ、いったいなにを考えてるやら。

で、家に帰り、なんか道でゲロ吐いて、芝生で下痢して、とかみさんに報告。
で?
で、ドッグランに寄って、
で、また下痢?
いや、一時間ボール投げしてたんだけど。

という訳で、身体を拭かれながらかみさんにじゃれつくだけじゃれついていたかと思うと、
そのまますっと、かみさんの膝の上に顎を乗せてすやすやと寝入っている。

なんかいない間に変なもの食ったのかな?
食べ過ぎじゃない?いつもくれくれってうるさいし。
でもいくら食べ過ぎたってゲロ吐くなんてあんまりないし。

という訳でブッチ君。

部屋の片付けをしている間もソファの上ですやすや。
俺たちの晩飯が始まった途端、いつものように飛び起きるや、
テーブルの横に陣取って、それなに?一口頂戴、の催促を始めるか、
と思えや、ちとっと横目で見ただけで再び眠りのなかにどぶん。

10時になってさりちゃんママからお散歩の誘い電話。
いつもならサリちゃんママ用の着メロを聞いただけで飛び上がったと同時に玄関にすっ飛んで行くはずが、
なんとソファの上で寝たまま。
ねえ、散歩行く?の声に、ふと頭を上げただけで再び枕の中に頭を落とす。

疲れてるのかな?
珍しいね。例え死にかけててもごはんとお散歩だけはパスしない筈なんだけど。

で、連休最後の夜も更けて、
風呂に入り、明日の準備も整えて、
さあ寝るぞ、という頃になってもソファから頭を上げない。

普段なら、かみさんの一挙一動に逐一耳を澄ませていて、
トイレの時にもお風呂の時にもドアの前でずっと待っている筈のこいつが、
なんとすべてを無視して眠り続けている。

という訳で12時。いい加減俺も眠たくなって、
おーい、寝るぞ、と一声かけてベッドの中。
で、寝間着に着替えたかみさんが、ねえ、ブー君、もう寝るよ、と声をかけても知らぬふり。

おかしいなあ、いつもならいの一番にベッドに飛び込んで来て、
あたしの隣にごろーん、てやる筈なのに。

という訳で、謎々ずくしの連休最後の夜。

まさか、と、俺。
ダンテも連休明けだっただろ?
変なこと言わないでよ、縁起でもない。

そう、ブー君の大の仲良しだったロットワイラーのダンテ君。
三歳を過ぎたあたりの連休明けの月曜日の朝、
いつもの散歩道の途中でふと動かなくなってごろんと横になり、
あれ、どうしたのかな、と思っても、名前を呼んでも綱を引っ張っても動かない。
で、ようやくなだめすかして歩かせて、で、アパートに着いたとたんにバタン。
慌てて獣医さんに連れて行った時には万事休す。
そのまま手を下す間もなく旅立ってしまった。

あの時も確か連休の後。
なんかちょっとの間、下痢してて、で、その朝、ちょっと吐いて、
でもまあ、またいつものやつ、って放っておいたのが悪かった、
って言ってたっけ・・

なんて話しながらいつの間にか眠り込んでしまっていたのだが。


XIMG_8625.jpg



ふと嫌な予感に目が覚めて2時。

寝静まった部屋の中、ふと、あれ、なにかおかしい。
なにかが決定的に足りない。
ふと見る足元、あるいは、かみさんの股の間、あるいは、俺の枕元、
いない、ブーがいない。
慌てて寝室を走り出るが、廊下にもキッチンにも玄関にもいない。
あるいは、俺がこれだけ走り回っていれば、
どんな時にも喜んで跳ね起きて来るはずのブッチ。
果たして途方もなくなにかがおかしい。

で、恐る恐る覗いたソファの上。
まるで石のように丸まったまま。

あれ、お前、こんなところでなにやってるんだ?
と聞いても頭も上げない。

具合悪いのか、と頭に手を乗せてみて、初めて薄目を開けて生欠伸。
どうした?
と聞いても身体も起こさず、涙の浮いた目でじっと俺をみつめるばかり。
具合悪いのか?まさか・・
普段元気な姿に見慣れているから、そんなブッチの姿、まさに異様なもののようで、
思わず背筋がぞぞぞとするぐらいにまさに恐慌状態。

おい、どしたよ、ブッチ、どうした?立てよ、ほら、散歩行こう。

耳元で散歩用の手綱を振られてようやく身体を起こしたブッチ、
しかし、そのまま重い足を引きずりながら寝室のドアの向こう。
どさっと音がするぐらいの勢いでかみさんの隣りに倒れ伏し、
再びすっと寝入ってしまう。

こいつ、もしかするともしかして・・・

とそんなブッチの寝顔を見ながら、なにかあったらすぐに救急車だな、
救急獣医の電話番号だけでも控えておくか、と考えると眠れなくなり、
そのまま寝入ったブーの手を握ったまま隣りに添い寝。

ブー頑張れ、死ぬなよ、がんばれよ、と胸の中に念じながら、
もしかして、こいつが歳をとった時には、こんな夜がずっと続くことになるのだろうか、
と縁起でもないことが頭に浮かんでは寝付かれず。

という訳で、連休明けの月曜日、
寝不足で頭がぼーっとしながらも、今日の日だけは休むわけにも行かず。
部屋を出るときにもブーは寝たまま。

朝の散歩の準備にとりかかったかみさんに、
何かあったら、というより、ちょっとでも元気がなさげだったそのまま医者に行ってくれ、
俺も昼までに急用を終わらせて、午後には帰ってくるようにするから、
と後ろ髪を引かれるようにして地下鉄の人。

オフィスに着いた途端、
休日明けの間延びした空気をぶっ千切って、
朝一番から気が触れたように仕事をこなし、
昼12時を回ったところでかみさんに電話。

まあ医者には行かなかったけどさ、
そう言えばあんまりボールボールもしたがらなくて・・
念のためご飯は上げないで来たんだけど・・・

ばかやろう、あれほどなにかあったらそのまま医者にいけって行ったのに。
普段あいつは100回でも200回でもボール遊びしてるんだぞ。
あいつがボール遊びしないなんて、それこそ異常だ。
途端に一切合切のものをカバンに詰め込んで再び地下鉄の人。

まさかな、まさか、まさか、と悪い予感ばかりが胸に広がって、
もう仕事どころではない。

乗り換え駅の階段を一挙に駆け上がり、
アパートのエレベーターに飛び乗るや、神様、お願いとお祈りをしたい気分。

という訳で、息を切らせながら部屋のドアの開けた途端、

おっと、どうした!とソファの上から飛び上がったブッチ、
そのまま一目散に廊下を走ってくるや、
有無を言わさず仕事用のコートの上から飛び蹴り一発。
そのままベッドに飛び乗るや、前足で俺の首にしがみついたまま舐める舐める、猛烈な舐め舐め攻撃。

あのなあ、と。お前、今朝までの死にそうな面はどこへやら、まるで元気、元気の塊。

で、いきなり、さあ、なんか食わせろ、腹が減って死にそうだ、とばかりにおねだりの嵐。

あのねえ、ブー君、俺は会社をぶっちしてだねえ、とそんなため息もどこへやら、
飯が後、と判ったとたん、それなら散歩だ、とばかりに玄関にすっ飛んで行って、
さあ、散歩だ、ボールは持ったか?リーシュはどこだ、と大はしゃぎ。

思わずそのままドッグラン。仕事着のままボールボールを10回20回。

普段見慣れた犬達が、スーツ姿の俺を不思議そうな顔で見上げては、
何を間違えたかワンワンと吠えかかる奴までいる始末。

あれまあ、ブー君パパ、どうしたんですか?と普段から毎日顔をあわせている犬の飼い主も目を白黒。

あれええ、普段から犬の散歩の姿しか観ていないものだから、誰だか判らなかったわ。
あなたも普段は一応ちゃんと仕事している人だったんですねえ、と失礼この上ない。

という訳で、一息ついたお昼過ぎ。

机の上のゴミを一切合切床の上に叩き落とし、
その上から仕事用をLAPTOP、
VPNを繋いでをつなぎブラックベリーをつないで緊急用の自宅勤務体制。

あの、まあ、そういうわけで、申し訳ない、と言い訳メール。
という訳で、午後は自宅で仕事させてください。

で、返答は、NPの一言。
で、しばらくして、で、犬は大丈夫だった?
それが・・と、言い訳を書くのも脱力し過ぎ。
はい、お陰様で・・ありがとうございます、とメールに向かって思わず頭を下げている俺の隣りで、

おい、腹が減った、なんか食い物を寄越せ、と催促しているブッチの姿。

くそったれ、こいつの下痢にはもう二度と騙されないぞ、と舌打ちをひとつ。

あのなあ、お前、頼むからもうおとなしくそこで寝ててくれ、5時になったらまた散歩に行くから!

という訳で、仕事用の資料作成が一段落した時に、ふと後ろを振り返ると、
ソファの上にごろんとお腹を出したブーの姿。

思わずため息。

まあな、お前が元気でいてくれるに越したことはないんだけどね。

思わず昨夜のベッドで思った言葉、

こいつが死んだら俺も長く生きようとは思わねえな。

まさにブッチあっての俺なんだよな、はいはい、判ってますよ。

プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾年月。
世界放浪の果てにいまは紐育在住。
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

©終末を疾うに過ぎて...
無断丸々転載・そのまま転写はご勘弁ちょんまげ

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