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大戸屋の出現でニューヨークもついに完成を見た

Posted by 高見鈴虫 on 20.2012 ニューヨーク徒然
ニューヨークで日本食が大人気だ、
なんて見出しに、馬鹿か、と思うほどに
いまやニューヨークにはジャパレス、つまり日本食屋が乱立している。
が、しかし、
厳密にはこれは、ただ日本食も扱う、
という意味であって、
実際に店内に足を踏み入れてみると、
やば!ほんちゃんが来ちゃったよ、
と店員達に緊張が走るような、
日本食とは名ばかり、
蓋を開ければ実はチャイニーズやらコリアンやらの経営する
なんちゃって日本食屋がほとんどである。

酢飯に人口甘味料がどっさり入っていたり、
味噌汁に桜海老が入っていたり、
太巻きにポテトチップが入っていたり、
ぐらいだったらまだ良いが、
親子丼を頼んだらパラパラご飯の上にパンケーキが乗っていたのはちょっと衝撃だった。

こんな風だから、
作るほうにしても日本食などろくに、というよりも
生まれて一度も食べたこともないのであろう。
ただ、店先の蝋細工の見本を見て、見よう見まねで作ってみた、
というにしても余りにもお粗末。
フュージョンというにはあまりにお粗末ななっちゃって系ジャパレス、
ニューヨークに列挙する日本食屋のほとんどがこの程度、
もどき、と言うのもおこがましいようなゴミジャパレスばかり、というのが実情であった。

が、しかし、そこはニューヨーク、
まあ別にそんなこといいじゃない、という風に勝手に進化してしまうところもあって、
かの「モモフクらーめん」のように、
ラーメンとは名ばかり、
食べたとたんに思わずうえ、と吐き出してしまいそうになるような
まがい物というよりも残飯以下、うどんを下水で煮込みました、
なんていうラーメンを出しながら、
連日連夜行列のできるような大ヒットを記録する例もある訳で、
人間の味覚、本当の本当に判らない、とつくづく首をひねりたくなる。

まあね、食の好みなんて人それぞれ、
食べたいもの食べればいいんじゃない?
とは言いながら、
しかし、いざ実際に自分が金を払うのであれば、
そんななんちゃって系でおちゃらけてばかりはいられない。

という訳で、大戸屋である。

ニューヨークに大戸屋ができた!
と聞いただけで、最近日本から来た人々は、
げー、興ざめ、なんでわざわざニューヨークまで来て大戸屋?
というほどに近代の日本人には一般的になりすぎた大戸屋であるのだが、
先にも述べたように、
これまで散々なほどに怪しいなんちゃって系の日本食に
心の底からうんこざりがにこいていたニューヨーク在住の純日本人にとって、
この大戸屋の、その妥協を許さぬ頑なな姿勢、
つまりは日本人の日本による日本の食材を使った純日本食、という姿勢は、
まさに、涙が出るほど、思わず手を合わせて拝んでしまうほどに嬉しかった訳だ。

店を開けたとたんに、
おっと、これは、もしかしてクラブ?
と思わせるほどに、定食屋とは思えないほどにシックな内装。
やばい、高そうだ、帰ろう、と思い切り物怖じしながらも、
その店内から漂ってくるあの一種不気味な生臭さ、
おおお、これはもしかして、昔懐かしい和食系ドライブインのにおいじゃないのか!
と思わず、これは本物だ!身体中が反応してしまう。

焼き魚、醤油、カツとじ、カツカレーにハンバーグライス、
おおっと、これはもしかして豚肉しょうが焼きじゃないか!

これは日本食だ。これこそが日本食というものだ。

おい、お前ら、良く聞け、良く見ろ、よく味わえ、
寿司だ、てんぷらだ、なんてしゃらくせえ、
いいか、これが本当の日本食というやつだ、参ったか!
お米一粒でも残しやがったらただじゃおかねえぞ!

おい、てめえ、そこの毛唐、ろくすっぽ箸が使えねえぐらいならとっとと帰れ、

などと、なんともジャパネスクな気分にさえなってくる。

という訳で、開店早々から大戸屋、大盛況である。

毎日、開店前から行列ができ、それを損なうと1時間待ち2時間待ちはあたりまえ。

口数の減らない近日本人からは、
たかが定食に1時間待ち?ありえない!
やら、
んだよ、たかが大戸屋にこの値段?ぼったくりも良いとこじゃないか、
などと舌打ちが聞こえてくるが、
おまえら!頭が高い!
あんたらは判ってない!

俺たちがこれまで、どれだけあのなんちゃって日本食屋の手痛い裏切りに打ちのめされて来たか。

俺などは、思わず皿を投げつけテーブルをひっくり返してあわや警察沙汰、なんて修羅場を何度も潜り抜けて来たんだぞ。


なんだこれは!?これのどこがカツどんなんだよ、おい。
フライドチキンに山盛りのシイタケにキャベツを入れて、
みりんの代わりに醤油にスイートンローに照り焼きソース?
となりに目玉焼き乗せて、っておいおいおい。
これが人間の食い物か!?作ったお前がこれ自分で食えるのか?
あんまり頭来たから店中の床にゲロ吐いてやる。

そんなこんなの幾たびにも渡る紆余曲折の後にたどり着いたこの大戸屋、
これでもう、日本には徹底的に帰らなくても良くなった。

ついにニューヨークも完成に近づいた、と思った次第だ。

プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾年月。
世界放浪の果てにいまは紐育在住。
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

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