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地球防衛隊のチェス、リスを捕獲せり

Posted by 高見鈴虫 on 27.2014 犬の事情   0 comments   0 trackback
ブーの大親友であるボーダーコリーのチェス。
最近チェスは地球防衛隊である。
いったいなにから地球を守っているかといえば、
それは「リス」の手からである。
アメリカの公園にはリスがそれこそゴマンといる。
確かにあのふさふさな尻尾をした
きょとんとした顔つきのリス、
可愛くないこともないのだが、
問題はその数。
つまりここニューヨークの公園にも、
まったく凄い数のリスが生息しているわけなのである。
かつてかのブリットニー・スピアーズもこのリスに喩えられたことがある。
可愛い顔しているだけでやっていることはねずみと一緒、
という意味だ。
そんなリスたちが今日も公園のいたるところでゴミ箱をごそごそ。

で、そう、犬たち。
犬たちにとって、リスはもう、絶好の生きるおもちゃ。
のろまなリスを見つけては、そら来た、と突進する犬。
で、慌てて木の上に駆け上がったリスの姿を、
間抜け面した犬たちが、下からワンワンワンワン、
と悔しがって吼えているのである。

という訳でチェス。
ドッグランに来ればボール遊びもせず、
端のフェンスから外を向きながら、
一心不乱にリスの姿を探して過ごしている。

まるで国境警備兵ね、と笑う人々。
がしかし、チェスは真剣そのもの。
名前を呼ばれて振り返っても、
おい、うるさいぞ、気が散るじゃないか、
と実に迷惑そうである。

で、そんなチェスが、
ついについに、リスを捕まえてしまったらしい。

早朝の公園でいきなり木立の中に姿を消したチェス。
で、意気揚々と引き上げてきたチェスの口には、
クークーと苦しげな嗚咽を上げるいたいけなリスの姿。

チェスのママであるエレンはもう大驚愕。
あんた、なんてことをするの!リスが死んじゃったらどうするつもりなの!

可愛い我が子を殺人者にするわけにはいかない。
救急車!救急車!と怒鳴るも、早朝の公園に
傷ついたリスの手当てに駆けつけてくれる救急隊員など居る筈もない。

とりあえずエレンは公園管理局に駆け込んだ。

リスが、リスが死にそうなのよ。

公園の隅の公衆トイレの脇の薄汚れたオフィスで暇を潰していたパークポリス=公園警備員の三人。

なんだって?と見るからに迷惑げ。

リスがね、死にそうなの。実は、うちの犬がリスを捕まえしてしまって、それでそれで・・

今にも泣き出しそうなエレンを前に、パークポリスの面々は互いに顔を見合わせて肩を竦める。

で、俺たちになにをして欲しいと?

だから、リスが死にそうなのよ、リスが・・

とここまで来て、エレンははたと、そんなことを公園管理事務所に言うのはまったくのお門違いであることに気づいた。

で、と立ち上がった公園警備員。

で、どんな状況であんたの犬はリスを捕まえたのかな?

どんなって?とうろたえるエレン。

その場所と、時間、状況を詳しく聞かせて貰えますか?

場所って、そう、つまりドッグランよ。

ドッグラン?ドッグランの中でリスが捕まった?そんなバカな、と公園警備員。一応リスの生態に関してそれなりの知識があるようだ。

奇跡でも起きない限り犬がドッグランでリスを捕まえるなんてことが起きる筈がない。

それが起きたのよ、とエレン。つまり奇跡が起きたのよ。

で、その傷ついたリスはいまどこに?

だから、そう、ドッグランの・・

ドッグランに傷ついたリスがいる?つまり今頃さんざん他の犬に食い荒らされている訳だ。

いや、その・・・

という訳で、しどろもどろのうちに調書を取られたエレン。
つまりは、放し飼い禁止エリアで犬を放さなかったか、という、それだけに論点を集められて心底辟易。

ただこうしているこのときにも、あの可愛そうなリスが瀕死の瀬戸際で喘いでいる、と思うと居てもたってもいられず。

で、リスの手当てはどうしたらいいの?と聞いたところ、さあな、と苦笑いを浮かべる公園警備員。

我々はリスの世話をするためにここにいる訳じゃないんでね。

でも、とエレン。リスだって立派なこの公園の一員じゃないの。

食物連鎖、と誰かが言った。つまり犬がリスを捕まえるのは自然の成り行き。死んだリスを蟻が食べる。それがマザーネイチャーという奴でね。

バカバカしい、とエレン。うちの犬があのかわいそうなリスを捕まえるなんてことしなければ、あのリスは死なずに済んだのに・・

という訳で、エレンが公園管理局を出た時、後ろでバタンと閉められたドア。そしてそれを追うように、ガチャリ、と鍵が閉められた。

という訳で、罪の意識を抱えながら公園に戻ったエレンとそしてチェス。

あのかわいそうなリスのためにせめてお墓のひとつも作ってあげようと現場近くに戻って来たのだが、
ここに来てどうしてもそのリスの姿が見当たらない。

あれええ、おかしいな、確かこの当たりだったのに・・・

という訳で、業を煮やしたエレン。そうだ、チェスだ、とチェスの綱を放して、ねえ、あんた、さっきのリスを見つけて来なさい。

という訳で、うひょひょ~と解き放たれたチェス。

また新たなリスの姿を探して公園中を走り回っているのである。


という話を聞かされたのはかみさん。

で、チェスは、と聞いたらしい。

チェスは大丈夫だったの?

なにが?というエレン。チェスじゃないわよ、チェスは殺人者。被害者はリス。

違う違う。だから、チェスはリスに噛まれたりとかしていなかったの?

チェスがリスに?さあ、そんなこと考えても見なかった。リスって噛むの?

もしかしたら変な病気を持っているかも知れないし、それに、アライグマみたいに狂犬病を持っている可能性も・・・

とそれを聞いていきなり青くなったエレン。

チェス!チェシー!と悲鳴に近い大声を上げて、何事か、といぶかりながらやってきたチェスを捕まえて、
前向け後ろ向け横向けひっくり返れ、と身体中を引っ掻き回して大騒ぎ。

あんた、あんた、痛いところない?どこも噛まれてない?まさかあんた、リスなんか食べてないわよね・・・

という訳で、またまた半狂乱になったエレン。

いま何時?と聞けば、8時だったらもう獣医さん開いてるわよね、といきなり走り始めて・・・

その後ろから、いかにも楽しそうにニカニカ笑いながら振り返るチェス。

行ってきまーす!と手、の代わりに尻尾を振っていたのである。


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プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾年月。
世界放浪の果てにいまは紐育在住。
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

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