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まったく犬ってオトコに似てる

Posted by 高見鈴虫 on 28.2014 犬の事情   0 comments   0 trackback
夜更けのドッグランのベンチ。
実はブッチが自転車の人を噛んじゃってさ、と、
チェシーのママであるエレンに愚痴を零す。

判るわ、とエレン。もしかしておくさんと一緒の時じゃない?

そうそう、かみさんとボール遊びしてたときに自転車で通りかかった奴らにいきなり。

やっぱりね、とエレン。

ほら、ブッチ、こっちおいで、と抱き寄せて頭を撫で撫で。

なに、あんた、人を噛んじゃ駄目でしょ。



で、実はね、とエレン。

前に言ったわよね。昔、ブッチとそっくりな犬を飼ってたって。

ああ、雨が降るとタクシー停める子。

そうそう、それそれ。雨が降るとタクシー停めたり、
いつも私の後ろを歩いて、私が落とすものをみんな拾ってくれてるのよ。
本当に頭の良い子だったの。まさに夢のようなハンサム・ボーイでね。
もう四六時中わたしのそばを離れないで、仕事場にもデートの時にもいつも一緒に連れて行ってたの。

でもね、実はそのドリーム・ドッグが凄い問題児で。

問題児?

そう、通りですれ違いざまに人に飛び掛ったり、エレベータの中で噛んじゃったり。
デリバリの人に襲い掛かったなんてのもあって。

いやはや、どうして?

それがね、そう、つまりプロテクティヴ。私を守ろうとするあまりの過剰反応だったらしいんだけど。

男の子?もしかして・・

そう、男の子のキャトル・ドッグ。
で、相手の被害者はいつも男の人。
それがね、実は、悪く思わないでね。
その子の顔つきがブッチと生き写しなのよ。なにもかもがそっくりなの。
特にほら、あなたの奥さんといるときにはね。
ああ、ブッチはあの子に似ているな、っていつも思っていたの。

で?

そう、それでね、もうどれだけお金払ったか。
警察を呼ばれたこともあったし、アパートからも追い出されそうになって。

いやはやだね。

そう、いやはやだったのよ。まあ私には本当に夢のような良い子だったんだけどね。
ハンサムでね。灰色の毛並みがいつも青く光っていて。本当に綺麗な子だったの。
でね、そう、心理カウンセラーにも行ったのよ。

犬の心理カウンセラー?

そう、犬の心理カウンセラー。
で、そこでは、愛情の裏返しってだろうって。だから、もうちょっと突き放した方がいいって言われたんだけど、
いまさらそんなことできるわけないじゃないねえ。あきれてすぐに帰ったわ。

で、どしたの?そのキャトル・ドッグ。まさか殺処分?

まさか。私がそんなこと許す訳ないでしょ。
もう近所中で平謝りに謝り続けて、治療費と一緒に慰謝料だなんだでお金払って。
本当に、あの子のためにどれだけお金使ったか判りはしないわよ。
あの頃は私も大変な時期で、もう本当に、二人してホームレスになろうか、なんて思ったりしてた。

あれまあ。その時には結婚の話とかなかったの?

あったわよ。いくらでも。でもね、それがそう、つまりはその子なのよ。

犬?

そう。その子が、もう男の人を寄せ付けないの。

噛んじゃったり?

そう。紹介した時にはニコニコしているんだけど、私がちょっと目を離した隙に飛び掛ってガウガウガウって・・

あれまあ。

そうなのよ。デートの最中にいきなり病院に行くことになったりもしたのよ。

でも家に残していく訳にはいかないんでしょ?

そりゃそうよ。いつも一緒だったし。家に一人でおいたことなんて無かったわ。そんなことできない。

あれまあ。犬と彼氏どっち取りますか?って奴だ。

そうなのよ。で、私が選んだのは・・・

犬。

もちろんよ。犬に決まってるじゃないの。オトコなんていくらでもいるけど、私の犬は私だけなんだから。

やれやれだね。

そう、やれやれだったけど、可愛かったなあ。本当に。夢のように可愛い子だったの。

そう、だから言ったでしょ?あまり犬を可愛がり過ぎちゃ駄目なのよ。辛くなるばかり。

という訳で、ちょっと話しが湿っぽくなったところで、

さあ、昔話はこれまで。もう帰りましょう、と立ち上がるエレン。

さあ、チェシー、帰るわよ、と言ってみるのだが、
当のチェシーはさっきからフェンスの向こうのリスの影を追うことに夢中で、エレンの声に振り返りさえしない。

ねえ、チェシー、もう帰るわよって。置いていくわよ、と声を上げるのだが、チェスはまったく知らん振りである。

やれやれ、と苦笑いのエレン。

甘やかせばがんばり過ぎて事件ばかり起こすし、突き放せば呼んでも来ないし・・・

まったく・・犬って本当にオトコに似てるわ。


夜更けに聞くドッグランの名言がまたひとつ増えた。


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プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾年月。
世界放浪の果てにいまは紐育在住。
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

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