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Happy New Year ~ 戦いは終わった ひとまずは。。

Posted by 高見鈴虫 on 01.2015 ニューヨーク徒然   0 comments   0 trackback
あけおめである。

前述した通り、歳も押し迫ってから資格試験なんてのがあって、
という訳で、クリスマスは疎か、その前のサンクスギビングからハロウィンから誕生日から、
実はなにをやっていたかまったく記憶がない訳で、
という訳で、いきなりマンホールから顔を出してみれば世の中は年の瀬。

今日ってもしかして、大晦日?
とかみさんに聞けば、そうだよ、さあ、オペラに行きましょう、
といきなりシャワーに打ち込まれた。

OPERA?
そう、言ってたでしょ?大晦日はOPERAに行くって。
え?知らなかった。
知らなかったじゃ済まないわよ。
さあ、早くこれ着てこれ着て、これ着て・・

という訳で大晦日の夜に連れだされたMetropolitan OperaHouse。

おいおい、これって図書館の隣じゃねえか、
なんだよ、試験に受かった途端にまたここに逆戻りか、と苦笑い。

がしかし、そう、俺はもう、歩きながら勉強テープを聞くことも、
信号の待ち時間に単語帳をめくることも、
ましてや迫る試験日に腸をよじり続けることもなく。

そう、年末ぎりぎりの資格試験。
まさにこのオペラの為だった、と言っても過言ではない。

大晦日のMetOpera。
今日の出し物はMarry Widow。
なぬ?なんか聞いたこと無いな、と思いながら、
そうか、Renee Flemingかあ。

米国オペラ界の大御所・レネーフレミングと、
ブロードウエイの超スーパースター・ケリーオハラの大共演とあって、
New Year EveのMetOpera、
その後のガラ・ディナーに出席するタキシードとナイトドレスの方々が犇めいている。

まさにこれ、世界の最高峰、という奴で、
おいおい、俺はついこの間まで、この隣りの図書館で、
ホームレスたちに囲まれて明日をも知れぬ浪人暮らしをしていた筈なのだが・・

という訳で、Marry Widow。

どうだったか、と言われると、実はまったく記憶がない。

寝ていた訳でも、周囲を囲むタキシード・ナイトドレスの紳士淑女に見とれていた訳でもないのだが、
ただ、ずっと隣りのかみさんの手を握っていた。

ふと見ればかみさんである。
正直、老けたな、と思う。

出会った頃、あのバブルに沸き立つTOKYOの、まさに花のようだった彼女が、
その後の俺との逃避行の中、世界ドサ回りの果てに辿り着いたこのニューヨーク。
この半年間、土壇場の失業状態の中で試験勉強を続けていた俺は、
そんなかみさんの姿に気をやることさえも無かったのだが、
いまこうしてみると、この半年間の土壇場の間、
最も気苦労していたのはつまりはこのひとなのだな、と今更ながらに気づいた訳だ。

そうか、俺達は歳を取ったんだな。

ふと思い出すのは、知り合った頃、先輩の言った言葉。

いろはにほへと、じゃないけれど、花という花はいつか色褪せる。
お前はそのひとを、色褪せた後でも愛してやるつもりはあるのか?
色褪せた後にポイしてしまうつもりなら、
悪いことは言わない、遊びのうちに別れておいたほうがいい。

そうね、別れましょう、とあの時、かみさんは言った。
遊びは遊び、結婚は仕事だからね。
あなたといると楽しいけど、
でも、結婚は楽しいだけじゃ済まないから。
だからわたしも結婚するのならもうちょっと実入りのいい男を選ぶつもり。
庭にプールのある家に住みたいの。
あなたと一緒にいて、いつかそんな家に住めるようになる?とは思わないけどね。

だったら、という訳で、別れる前に旅行にでもいきましょう、
という訳で出かけた香港。
そのままヨーロッパにでも行って、ぱっと美味しいものでも食べて帰りましょう、
という筈が、どういう訳かタイからマレーからジャワからと東南アジアのヒッピー村をドサ回り。

どうだ、庭にプールどころか、窓を開けたら純白の砂浜じゃねえか、どうだ、思い知ったか。
窓を開けたらどころか、これってだた浜辺に立ってる掘っ立て小屋ってだけの話じゃないの。トイレもないのに家なんて言えないわよ。
と、
そんなすったもんだの貧乏旅行の中、喧嘩ばかりの道中であったのだが、
いつしか赤坂で一番決まった女、であった彼女は、
東南アジアのドサ回りの旅の中で、いつのまにか立派なパートナー、つまりは相方、となっていた。

たどり着いたバリ島、深夜のビーチで、結婚しようよ、と俺は言った。

ここまで一緒だったんだ。きっとこれからもずっと上手くいく。こう見えて俺達はすごく気が会うよ。
結婚してどうするの?と彼女はいった。
結婚してずっと一緒にいるんだよ。こうしてずっと旅を続けるんだ。
だったら結婚なんてすることないじゃない。ただこうしてずっと一緒にいればいいんだから。
ババアになった君が見たい、と俺はいった。
君が皺くちゃのクソババアになるまでずっとずっと一緒にいたい。
わたしが皺くちゃのクソババアになってからも同じセリフが言えるとは思えないけど。
言ってみせるぜ。君が皺くちゃのクソババアになるまで一緒にいるよ
それまでずっと喧嘩ばかりなのね。
そう、ずっとずっと喧嘩しながらずっとずっと一緒にいよう。

餓鬼の頃に吐く言葉など、ただの言葉、つまりは戯言。
そこに現実感やら、理屈や根拠も責任もまるでない。
ただ、俺はあの時、本当の本当にずっとずっと、ババアになるまで一緒にいたい、と思っていたことは確かだ。
そして俺の想像の中では、そんな皺くちゃのクソババアになった彼女は、
それでもしっかりと魅力的に思えたものなのだ。

という訳で、あのバリ島の夜の浜辺からいったいどれだけの月日が流れたのだろう。

信じられないことに、本当の本当に信じられないことに、俺達はまだこうして一緒にいる。

相変わらずなにをやっても食い違い、喧嘩ばかりの毎日なのだが、
それでもこうして、俺達はいまだにこうして並んで座っている。

あの時は、ガンジャの香りの染み付いた髪をバンダナで縛り、
タイで買ったヒッピーパンツに、バリ猫のTシャツにサンダル履き。

そして今は、白髪だらけ、シワだらけになりながら、
こうして、メトロポリタン・オペラハウスのオーケストラ席で、
タキシード・ナイトドレスの人々に囲まれてふんぞり返っている訳なのだが、
そう、こうしている俺達は、
しかし、不思議なことに、あの時、
深夜のバリ島の浜辺でマリファナを吸っていたあの頃から、
実はなにも変わっている気がしないのだ。

そして改めて振り返るかみさん。

こいつ、しっかり皺くちゃのクソババアになりやがって、と思う。
そういう俺も、伸ばした髭は白髪で真っ白。

長かったな、とふと思う。
そして、こいつにも苦労をかけたな、としみじみと思った。
本当に苦労ばかりをかけてきたな。

という訳で、このまま一緒の棺桶に入ることになるのだろうが、
まあそれまでの間は、ちょっとは良い思いをさせてやろうか、とも思っていた訳だ。

という訳で、ブラボーの拍手喝采の中で幕の下りたMetOpera.
帰りの人混みに押されて赤絨毯を歩きながら、

ねえこれからどうする?まさかタイムズ・スクエアでカウントって訳でもないでしょ。
それよかなんか飯を食わねえか?
わざわざ年越しそば食べに行くのも面倒だし。
と言っている側から、
なんかピザ喰いたい。
ピザ?いきなり?
そう、ピザ喰いたい。ニューヨークなんだから、やっぱ大晦日はピザでしょ、
とかなんとか、言いながら、立ち寄ったいつものイタリアン・レストラン、
おお、開いてる開いてる、と言ってみれば、今晩はギャラ・ディナーの予約で一杯です、
と断られ、だったらこの辺りで旨いピザ食わせる店はどこだ、とウエイトレスのお姉さんに聞けば、
ちょっと歩いて68丁目のコロンバスにフランチェスカってお店があるから、そこに行けば?
と言われて、寒空の下、やばいな、オペラ用に気張った格好したのは良いが、
これ、外を歩く用には作られていない。
そう、紳士淑女は真冬の夜の街をプラプラ歩いたりなんてしないものなのだ。
クソッタレ、寒くて死にそうだ。金持ち面も楽じゃねえな、とぶーたれながら、
だから、とかみさん。
ちゃんと予定を立てないからよ。
なにをやっても行き当たりばっかりで、ほんと、いつになってもこんなことばっかり。まったく嫌になるよ。
うるせえ、予定通りの人生なんて糞食らえだ。俺はバンドマンなんだよ。ギグにハプニングはつきものだ。
大丈夫、そのフランチェスカ、きっととんでもなく旨いピザ屋だぜ、

とかなんとか言いながらようやく辿り着いたそのオススメピザ屋。

なんだよこれ、ただのスライス・ピザ屋じゃねえか・・・
と思わず目がテンテン。

パーティ帰りの、あるいは、パーティに出動する前の餓鬼どもがたむろしては、
紙皿一枚にスライスの齧りついているそのクソ貧乏そうなピザ屋。

これ?これがフランチェスカ?
そう、これらしい、と思わず顔を見合わせて苦笑い。

んだよ、大晦日の夜にスライス・ピザかよ。
いいんじゃない、これでも、とかみさん。
美味しいかもしれないし。

という訳で、新年までの間、パンカーやクラブキッズや、
かみさんに逃げられた失業者やら、ホームレス一歩手前から、
あるいは、緊急対応の救急車の救助隊員たちに囲まれて、
熱々のペパロニ・ピザにハフハフ言っていた訳で、

うーん、旨い、
うん、美味しい、と思わずニンマリ。

という訳で、
なんともまあ、俺達らしいと言えば、これ以上に俺達らしいシチュエーションもないな、と。

としたところ、いつの間にかざっと、人気の失せたピザ屋。
どうしたの?もう閉店?と聞けば。

ああ、今日は12時で終わりだ、とモップで床を吹き始める。

12時?もう12時なの?

そう、あと5分で新年だぜ。おめでとう、と先に言わせてもらう。

あと5分、といきなり立ち上がったかみさん。

まだ間に合うよ、急いで急いで、と72丁目をセントラルパークへ走る走る。

3-2-1、Happy New Yearの声と同時に打ち上げられる花火。

Happy New Year~!!!

くっそ、間に合わなかった、と車道の真ん中を走りながら、

ははは、と思わず笑ってしまった。

まったくなにからなにまで俺達らしいな。

そう、俺達はまったく変わっちゃいない。

例え白髪おやじに皺くちゃババアになっても、
俺達はあの夜、バリ島の深夜のビーチに座っていた、
あの頃と、なにひとつとしてなにも変わっちゃいないのだ。

Happy New Year、改めてことよろ。









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プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾歳月
世界放浪の果てにいまは紐育在住
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

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