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ドッグランの怪

Posted by 高見鈴虫 on 25.2014 大人の語る怖い話   0 comments   0 trackback
以前にも書いたと思うのだが、

うちの犬はちょっと胃腸が弱いところがあって、よく深夜に下痢で起こされる。

寝静まった夜更け、耳元でキュンキュンと切ない鳴き声がして、
ふと目を覚ますと、切羽詰まった表情で玄関とベッドとの間を行ったり来たり。

なぬ!?下痢か?と飛び起きて、取るものも取り敢えずに表に走り出ては、2ブロック先の公園へと走る。




で、その夜、
時間は2時過ぎ。

折からの低気圧で外はまさに嵐の状態。

雨こそ降っていないものの、吹き荒れる暴風に公園の木々もまさに踊りを踊るように、
右へ左へゆさゆさと揺れ動いている。

でそんな夜、寸でのところで公園の芝の上にたどり着いた我が犬。

駆け込んだ途端に、うひゃあ、間に合った、という訳でいつもの体制でうんち。

思った通りビチビチ状態で、なんだよ、また変なもの食べたのか、
あるいは食べ過ぎ、または水の飲み過ぎ・・

で、ようやく出すものを出して、さあ、帰ろう、こんな天気だし、と引き返そうとすれば、

え!?と目を見開く我が犬。まさか・・・

なぬ?

嫌だ、と犬。せっかく来たんだからボール遊がしたい!とそのままドッグランへの入り口へと走って行く。

あのなあ・・夜中の二時だぜ。。
まあしかし、元気があるってことは良いことだから、と、しぶしぶと後を追ってドッグラン。

24時間眠らない街、とは言うものの、この時間のこの天気。
いつ風にへし折れた枝が頭の上から降ってくるとも知れず、やれやれこんな夜にボール遊びかよ、
と我ながら苦笑いをしながら、ボール投げ。

まるで風に乗るように鮮やかなダッシュを繰り返す我が犬、
なのだが、もう眠くて眠くて・・
おーい、もう気が済んだか?だったらそろそろ帰ろうぜ、とやっていたところ、
風に踊ったボールを取り逃がした我が犬、猛ダッシュで追いかけたところ、
ふと顔を上げた状態で凍りついた。

なんだよ、早くボール持ってこい。もう帰るよ、と声をかけるが、なんか犬の様子が変だ。

で、近づいてふと見れば、そんな暗いドッグランのその一番奥のベンチに、なんと人が、座っている・・

吹き荒れる風に髪をかき乱した老婆がひとり。

ガウンの裾をバタバタとはためかせながら一人で深夜のドッグランのベンチに座っている。

まさか・・とは思えど、現実問題としてこの状況からするとその人影はまさしくこの世のものとは思えない。

がその姿、犬にもしっかりと見えているようで、

よりによってそんな怪しい老婆の足元に転がったボール。

犬はこれをどうしようか、と考えている訳である。

おっかなびっくりへっぴり腰でボールに近づくのだが、いやいや、やっぱやめた、と後ずさりしては、

へへへへ、と照れ笑いを浮かべて俺を振り返る?

なぬ?俺に?ボール取って欲しい?バカ言うんじゃないよ。それはおまえ、犬の仕事だろ。

とは言うものの、犬に妙な物の怪が憑いてしまってはそのほうが一大事。

そら、もういいよ、そんなボール放っておいて早く家に帰ろう、とそのまま出口を目指したところ、

いきなり、オンオンオン、と犬の激しい吠え声。

なんだなんだ、と見れば、どうもその幽霊の老婆が、よりによってうちの犬に手を伸ばしたらしい。

ほら、ボール投げてあげるから、こっちにおいで、と手招きしているではないか。

おい、馬鹿、そんなもの相手にするな、こっちこい!と必死に呼べど、犬はボールが惜しいのか、その幽霊が気に入らないのか、

跳ね回りながら、オンオンオン、と火の着いたようじ吠え立てている。

おい、ばか、やめろ、こっち来い、と俺も必死。

としたところ、なんとその幽霊の婆さん、よっこらしょと立ち上がってボールを拾い、
そして、ほら、取ってこい、と投げたボール、それが風に煽られながら俺の足元にコロコロと転がってきた訳だ。

という訳で、引き返してきた犬。

なんだよ、あのババア、とやれば、犬も首を傾げるばかり。

で、恐る恐る近寄ってみれば、その幽霊の老婆。いちおう足はあるようだ。

私の犬がね、と老婆は言った。私の犬が、私の犬がね・・・

ああ、ペットロスか、とぴぴんと来た。

つまり可愛がっていた愛犬に死なれて、その悲しみのためにちょっと頭のネジがたがってしまった、と。

まあすべての愛犬家にとってペットを失うことは非常な悲しみな訳で、そう他人ごとではない、とは思いながら、
この時間のこの天気、そうこのシチュエーション。あまりにもちょっと気味が悪すぎる。

が、まあ、よい。理由は分かった。つまりそう、ペットロスだろう、と。

まあ、気持ちはわかるが雨が降り出さないうちに早く帰ったほうがいいぜ、とそのまま帰って来た訳だが、
いやはや、ちょっと肝が冷えた。

なんて話をドッグラン仲間にしたところ、

げげげ、とドッグラン仲間。

な!?怖いだろ?と言う俺の顔を、まじまじと見つめる人々。

実はね、そのお婆ちゃん、という訳で後日談。

そのお婆ちゃん、いまはすでにお亡くなりになっているらしいのだが、どうも近所に住んでいたアルツハイマー病の人であったらしい。

で、夜な夜な近所を徘徊しては、私の犬が、私の犬が、と犬を探していてらしいのだが、
家族の話ではそのお婆ちゃんは、犬を飼っていたことなどない、という話なのだ。

つまり想像上の犬を探して深夜の街を徘徊していた、というらしい。

あるいはそう、子供の頃に飼っていた犬ってことなのかもね。

で、あんた、そのお婆ちゃんに会ったの、いつの話?

え?ああ、先週の水曜日の夜、

と言ったところで再びみんなして、ゲゲゲ、である。そのお婆ちゃんが亡くなったのはすでに半年も前。

なんだよ、だったらやっぱり幽霊だったのか?

と言えば、

幽霊だったらまだ良いじゃないの。
またひとり、似たようなアルツハイマーが現れたか、と思ってそれを驚いていたのよ、という話で、

怖いわよねえ、アルツハイマー、
ほんと、他人ごとじゃないわよねえ、
なのだそうだ。

いやはや、やはりところ違えば人も違い、幽霊話の落とし所もかなり違うな、と思った次第。



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プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾年月。
世界放浪の果てにいまは紐育在住。
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

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