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失業ハイパー ~ 図書館の同胞たち

Posted by 高見鈴虫 on 21.2014 とかいぐらし   0 comments   0 trackback
寒くなるに連れて、図書館にホームレスたちの姿が増え始めた。

この白髪髭を生やし初めてからというもの、
俺もそんなホームレス達をとやかく言えないぐらいに立派なホームレス風情、な訳だが、
そんな俺のまわりにいつしか集まってきた本ちゃんホームレスの方々。

そうこうするうちになんとなく顔ぶりも覚え、
そしていつしか、顔見知りには会釈なんぞをしたりもするようにさえなっていた。


という訳で改めてこのホームレスである。

言っちゃなんだが、臭い。

その匂いの根源、さすがに、体臭やら、アンモニア臭、とまではいかないまでも、
その身体から発せられる得も言えぬ匂い。
つまりはそれ、ゴミ箱の匂いな訳である。

そんなホームレスたちの匂いを避ける為に、
俺は毎日、図書館に出かける前、
身体中にこれでもかとイッセー・ミヤケのコロンをふりかける訳だが、
聞ところによれば、この必要以上にコロンを振る、というのからして、
実はホームレス予備軍の方々に共通する特徴であったりもするらしい。

そう、ホームレスに近づけば近づくほどに、
本ちゃんホームレスたちがうざったくなってくるというのも本当のところ。

がしかし残酷なのは、傍から見れば誰がどうみても立派なホームレスである筈の正真正銘のホームレスが、
実はその内心では、自身をホームレスであるとは自覚していないところであったりして、
俺は違う。俺はまだまだホームレスじゃない。この臭いホームレス野郎たちめ。
俺はこうはならないぞ、俺はこいつらとは違う、まだまだ違うぞ、と思っていたりもすることも知っている。

という訳でこの図書館の机。

人のあまり来ない、つまりは一番邪魔が入らない隅っこのテーブルなんてのを定位置にしている訳だが、
人と関わり合いたくない、あるいは、人目を避けているのはホームレスも一緒。

という訳で、周りはホームレスだらけになる訳で、
そしてこの白髪髭を生やしてフードを被った俺。

なにやら、難し顔をしながら、一心不乱に訳の判らない分厚い本に顔をうずめている訳で、

あーあ、あの東洋人のホームレス、完全に頭行っちゃってるぜ、のまさにその風景そのもの、
であることも自覚している訳だが、

がしかし、そう、俺がホームレスでないことは俺が一番良く知っている。

家はある。しかも人も羨むアッパーウエスト。
仕事はしていないが、ついこの間まで、全米は疎か世界に轟く一流企業の社員であったこの俺。
そしてそんな俺が、いまはこうして浪人をしながら、実はさらなるキャリアアップを目指して資格勉強中な訳である。
そう、つまり、見た目は同じでもホームレスとはその志が違うのである。

そう、俺はホームレスとは違う。違うのである。
自分でもちょっとその辺りが不安になってきたりもしてきたが・・・

が、ふと見ればそんな俺の周りにいるホームレスの人々。

なんだかんだ言いながら、そんな俺にちょっと気を使っているのが判る。

そんなホームレスたちの中にあって、
そっとしておいてやれ、その人はホームレスじゃない。俺達とは違うんだ、という共通の認識があるようなのである。

という訳で、改めて果たしてホームレスとはなにか、あるいは、彼らのその後ろめたさの根源とはなにか、と考えるに、

つまりはぶっちゃけ、やること、なのである。

ホームレスにはやることがないのだ。
やることがないから居場所がみつからない。
居場所がみつからないからホームレスになるのである。

あらためてホームレスはなにもやっていない。

日がな一日図書館に居て、追い払われないようにと格好だけでも適当な本を広げていたりするが、
その目的はと言えば、居眠り、そして時間つぶし、である。

このホームレスたち。見る限り徹底的にやることがない。

日がな一日、あるいは、人生のそのほとんどが、暇つぶしなのである。

それに気がついた途端、ちょっと本気でこのホームレスたちに嫌気が刺した感がある。

お前ら、日が一日、こんなところで臭い醜態を晒しながら、何一つとしてなにもやることがないのかよ・・

ホームレスの悲しさとは、つまりはそのやることのなさにある訳だ。

とそんな中、そんなホームレス連中にちょっとした知り合いが出来た。

サルバドル人のエリアルドである。

スペイン語訛りだがそれでも必死で英語を話そうとするエリアルドは、
ホームレスの中にあってしかししっかりと髭を剃っている。
そして身なりもそれほどホームレス然としている訳ではなく、
俺と並んでどちらがホームレスか、と言えばもちろん俺。

そんなエリアルドが俺の隣の空き席にやって来た時、いきなり机と椅子を吹き始めた。

あいつら汚いからな、と言う。
あのホームレスの奴ら、本当に汚いんだ。あんたもその椅子とテーブル、良く拭いた方がいいぜ、と言う。

エリオルドはホームレスとは言いながら、実は仕事を二つも三つも持っている。

朝一番、4時から11時までの仕事と、そして、夜の6時から1時まで。
そしてその空き時間に、この図書館で睡眠を取っているのである。

つまり、ホームレスと言うよりは、家を持つ必要がない、という訳なのだ。

夜はどうしているんだ?と聞けば、ああ、夏は公園で暇つぶしたり、
あるいは、そう、24時間営業の駐車場で寝ている、とのこと。

駐車場の警備員に金を掴ませて車の中に寝ている、というが、
どうもそれ、警備員の小遣い稼ぎらしい。

世の中にはまったくいろいろな商売があるものだ、と関心させられる。

あいつらはね、あのホームレスの奴らはゴミ箱に寝ているんだ。

あの例の、コンテナ型の巨大なゴミ箱。
あのコンテナの中にゴキブリみたいにして暮らしているんだ。

そうか、あのホームレスの連中がゴミ箱臭いのはつまりはそういう訳なのだ。

あいつらも大変なんだな、と言えば、そんな訳あるか、と吐き捨てるエリオルド。

仕事をしようと思えばいくらでもあるんだ。
確かに稼ぎは良くない。だが金を稼ごうと思ったらいくらでもある。
奴らはやらないんだ。働こうとしない。
ただただスープキッチンで配られる配給飯にすがって、
そして何もやらずにこうして図書館で寝ているだけなんだ。
問題はあのスープキッチンだよ。あれがあるから誰も働こうとしない。
あの配給をやめてゴミしか食えなくなったとしたら、奴らだってきっと仕事を始める筈さ。

とそんな話をする俺達のまわりのホームレスたち。
身を小さくしているか、といえばそんなこともなく、知った事か、という風に相変わらず不貞寝のふりをしているだけ。

そうか、こいつらやることがないんだな。

そう、やることがない、というよりも、なにもやりたがらない、ただそれだけ。
まるでゴミのような奴らだ。そうやって死ぬのをまっているだけの人生だ。
犬以下、ゴキブリ以下だ。

とそんな話を聞いてから、ちょっとホームレスたちに対して態度が代わった。

そこをどけ、とどかせる。
この汚いバッグをどけろ、と文句を言ってやる。
お前、臭いぞ、便所で身体を洗って来い、とまで言う。

あのなあ、なぜわざわざ図書館などに来る?
そのまま24時間、ゴキブリのようにあのゴミコンテナの中で暮らしていればいいじゃないか。

そういう奴らからは、時としてアルコール、あるいはクラック、あるいはシンナーの匂いがすることがある。
そう、つまりはそういうことなのだ。

図書館の同胞たちよ、言わせてもらう。
この半年、あんたたちがここでこうして惰眠を繰り返し、暇を潰していたその隣りで、
俺はこうして資格の勉強を続け、そして俺は必ずそれに合格してみせる。
そして俺はいつかミリオンを稼ぐことになるだろう。
がそんな俺が特別であった訳ではない。
あんた達にもそのチャンスはあった。
ただあんた達はそれをやらなかっただけの話だ。
あんたたちがいまこうしているこの時に、
なにか一つのことを見つけてそれを始めれば良いのだ。
ただそれだけ。
あんたたちの人生を変えるのは、ただそれだけなのだ。
それができない。
それができずに、毎日毎日、こうしてここで居眠りをしているだけなのだろう。

俺は慈善家でも政治家でもないので、はっきりとこう言わせてもらう。

このクズども、生きるのが面倒なら早く死ね。そんなゴミのような奴らは見たくない。

世間から身を潜めるホームレスたち。
実は彼らは、やることのない自分、なにも初められない自分をただただ恥じているだけなのだ。

かわいそうな奴ら、などと言うつもりもない。

お前らはただ甘えているだけだろう。

とそんな俺の姿を、便所の鏡に映して省みる俺。

うーん、やはりどこからどうみてもホームレスな訳で。

違いがあるとすればその目だな。

俺の目はまだまだいかれちゃいない、と思う。

そう、俺はホームレスとは違う。違うのだ、と必死になっている自分が自分でもおかしい。

おいおい、そろそろまじで試験に受からないとやばいぞ、と自分に言い聞かせる訳である。




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プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾年月。
世界放浪の果てにいまは紐育在住。
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

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