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吹雪の夜に「大地の子」を見尽くした。

Posted by 高見鈴虫 on 28.2015 読書・映画ねた   0 comments   0 trackback


と言うわけで、史上空前・猛吹雪騒動のニューヨーク。

この振って沸いたような大騒動。
地下鉄もバスも止まり、学校も会社も休みになって、
断末魔の市当局の苦労を尻目に、
わーいわーいとはしゃぐ回る人々。

と言うわけで、この大吹雪の缶詰の中で、そう言えばと、
こんな時じゃないと観る事もないであろう大作ドラマってやつに挑戦することになった。

「大地の子」である。



とうわけでこの「大地の子」
もう20年も昔になるが、当時日本で放送されたこの作品が大した話題だ、という話は聞いていた。
そして、日本のドラマ史上最高傑作、ドラマ界の金字塔である、という評判も聞いていた。
が、そう、このアメリカ在住の不便さの中、
名作の噂ばかりを長く記憶することになってしまっていた。

のだが、そう、山崎豊子である。

どういうわけか、山崎豊子は鬼門であった。

なぜか、と言えば、やはり、ニホンキョーサントーであったからなのか、という気もする。

最初の山崎豊子が、あの「運命の人」であったのがいけなかったのか。
クミアイ、やら、赤い旗、やら、ついつい、なんだよまたあのニホンキョーサントーの喧伝映画かよ、
とついつい拒絶反応が起こってしまう訳で、
人に貰った「沈まぬ太陽」の全巻を、読まぬままに本棚の隅に積まれたまま、
表紙をめくられることなくそのままBOOKOFFに持っていってしまったり、
となにかと不運続きの山崎豊子だった訳である。

がしかし、そんな山崎豊子の中でも、ちょっと気になっていたのがこの「大地の子」である。

「大地の子」

中国の話だと聞く。
戦災孤児が主人公だと聞く。

いまさらながらの満州開拓団。
いまさらながらの中国残留孤児である。

あの時、日本に大挙としてやってきた、
これ以上ないほどに貧乏臭い爆裂頭の人々。

そんな姿が信じられないぐらいに、
いまや中国は世界最強を自負する経済大国。
いやはや、時代も変われば変わるもの、と思いながら、
そうこうするうちにこのご時勢。なにかとキナ臭い日中情勢なのである。

そんな中、いまになってこそこの「大地の子」を見ることに面白味があるのではないか、
と、例によってヨコシマな天邪鬼の虫が騒いでいた訳である。

で、ありがたいことに21世紀。
そんな「大地の子」がすべてYOUTUBEに上がっていたりする訳で・・



常々、最近の日本はどうなっちまんてんだよ~、と文句ばかりを言いながらも、
こういう作品をアメリカで観れてしまうってのは確かに最近の世の中はすげ~と言わざるを得ない。

で、そう、この「大地の子」

全11巻の超大河ドラマな訳であったのだが、
史上空前の大吹雪に見舞われたニューヨーク、
吹き荒れる雪嵐の音を聞きながら、全12時間、夜を徹して一挙に見尽くしてしまった。

と言うわけで、このドラマ。
その本流にながれているのはまさに中国大陸。
まさに大河、隆々と広がる茫漠たる大地にたゆたうあの壮大過ぎるほどの歴史観。

そんな中国の大地に、そしてそこに流れた三千年の歴史の中で、
たかだか戦後70年などほんの鼻くそ。
日中戦争から国民党から毛沢東から、
挙句に大躍進政策の大失政で餓死者4千万人、やら、
文化大革命で大陸ごとがしっちゃかめっちゃか、であろうとも、
なあに、ハオハオ、で済まされてしまうのか、と唖然としてしまう訳だが、
いやはやこの大地の子。
まさに、そんな雄大すぎる、そして壮絶すぎる歴史絵巻に巻き込まれてしまった
島国の小心民族の激動のドラマ、
正直、腰抜かす、どころか、一生分の涙が枯れ尽きるほどに持っていかれてしまった。

ちゅう訳でそう、いまさらながらに中国である。

ちなみに中国は俺が一番最初に行った「外国」である。

日本を出た俺が、香港を経由し、そして開放してまもない頃の中国に飛び込んだ訳だが、
そこで見聞きした中国という国のあまりに衝撃的な現実。
いまも悪夢にうなされるほどに強烈な印象を残したわけで、
その後の俺の、中国、強いては、共産主義・社会主義に対するアレルギーの元、
まさしくトラウマ的な経験になったのだが、
その後、一環した俺の中国嫌いのすべてが実にこの最初の旅行の体験に基づくものであった訳だ。

そんな俺がこの「大地の子」を見るにあたって、
実にもう云十年は経とうかというあの開放間もない頃の中国の姿を、
まさにありありと思い出した訳である。

そう言えば、飯が美味かったな、と思い出した。

そう、俺が中国で食べた飯はすべてとてもおいしかった。

と言うのも、考えてみると、俺は中国で飯に金を払った覚えがない。

つまり、すべてが奢りであったわけだ。

だれに?と考える。そう、中国の人々にでである。

そう言えばタバコもただだった。いつどこにいっても、さあ俺のタバコを吸え、と一本どころか、
まるで雨後のたけのこのように俺の周りにタバコが差し出された。

人々は貧しかった。これ以上なく汚かった。
これだった新宿のホームレスのほうがずっとましだ、という人々が町中に溢れ返っていた。
町はまるで戦後の焼け跡の記録フィルムを見るようにどこもかしこも大混乱。
バスには人があふれ、ひしめき合う人々がそこかしこで怒鳴りあい掴み合い。
信号無視どころか、車道にまではみだした屋台と、
縦横無尽に走り回る自転車と、そして津波のような人の渦。
トイレは糞まみれ、水を飲めば下痢、
人ごみを歩けば必ず飛んでくる、手鼻、痰つばの雨あられ、
そんな表通りを一歩でも中にはいればそこはまさに爆撃直後の町。
舗装もされていない剥き出しの土手道に、レンガの崩れかけた窓ガラスもない家々が
まるで敷石の下の虫たちのように蠢いていた。

まさにケイオス、というか、
瞬時にこの地の社会システムがなにからなにまでまともに機能していないのが一目瞭然であった訳だが、
それでも、そう、俺は飯を奢られ、人々のこれ以上ない笑顔に囲まれ、
時としてそんな人々の親切心にうんざりまでするぐらいのもてなしを受けながら、
しかしそんな中国の悪口ばかり言っていた覚えがある。

そして今になって思う。

あの時、俺の奢られた飯は、まさに、当時の中国の人々のできる精一杯の善意であった筈だ。
あの時、俺に向けられた笑顔は、まさに、当時の中国の人々のできる限りの精一杯の好意であった筈だ。

それを俺は、日本との比較、つまりは徹底的な上から目線ですべてを批評し、そして見下していったのだ。

俺はそんな中国の人々の精一杯を、これでもか、と踏みにじってはあざ笑い、
地球上最悪の国、などとしたり顔で吹聴していたのだ。

それはまさに、関東軍の横暴そのもの。
そして、あの中国がもっともつらかった時代に、援助と称して乗り込んだ日本企業人たちの、
ったくどうしようもねえなあ、こいつら、の苦笑いであり、
そして、民度が低いの高いの、という、最近の中国蔑視にもつながる、残酷すぎるほどの選民思想。
最低だな、と思わずつぶやいてしまった。
あれだけ親切にされながら、そんなことを言っていた俺はまさに最低の最悪の糞蛆虫みたいな男だ。

そして今、長い長い動乱の末にいま中国たどり着いた、
まさに天下を取ったような驕った態度こそは、
あの耐え難きを耐え忍び難きを偲んだ長い長い屈辱の末に、
ようやくたどり着いたひとつの光明なのだ。

そんな中国にようやく灯った光が、
しかしいまになって皮肉なことに、
中国と、そして日本、というこの近親憎悪の歴史の暗部と、
そこに蠢く双方の蛆虫たちの姿を、煌々と映し出しているかのようだ。

改めて言いたい。
要は相互理解なのである。

互いが互いを知り、そしてそれを踏まえた上で、分かり合い、そして愛し合うこと、愛し合おうと努力することだ。

この忌々しき近親憎悪の嵐の中で、似た顔をして似たような飯を食い似たような言葉を使う俺たちが、
互いの些細な差異をあげ連ねては、どっちが上だ下だ、とやっていることからしてまさに茶番なのだ。

少なくともニューヨーク、この世界の箱庭の中では、俺はチャイニーズのひとりであり、
そのへんの中国人のほうが、日本の最新トレンドにずっとずっと詳しかったりもする。

ちゅう訳で、そう、俺たちはたかが人間だ。
そしてそんなたかが人間は、そんなたかが人間だからこそ、
似たようなたかが人間には限りなく優しい。

そう、人間は本質的にとてもやさしい生き物なのだ。

それはアフガニスタンでもシリアでも、そして中国でも変わらない。

状況はどうあれ、政治はどうあれ、信じている神様はどうあれ、基本的に人々はとてもとてもやさしい。

が、そう、あえて言えば、一時の気の迷い。つまりは時勢というやつ。
社会システム、というよりは、つまりは政治なのだが、
しかし、そう、政治に永遠はない。
そして、そんな一時的な時勢に騙されてはいけない。
中国の三千年の歴史のなかで数限りなく繰り返された政変の中で、
この中国共産党の迷走もそのたかが一ページにも満たないエピソードでしかない。
あの紅衛兵の横暴も、そして近年のネトウヨの戯言も、
すべてはそう、まさに一陣の風にもみたない、ただの塵に過ぎないのだ。

と言うわけで、大地の子、である。俺は、大地の子だ、のすばらしい言葉である。
やられたなあ、と思わず枯れた涙が再び溢れ出してしまった。

と言うわけで、大地の子、すばらしい作品でした。
名作とはまさにこういうものを言うんだな、と思った次第。

改めて、日本随一のストーリー・テラーであった山崎豊子の冥福を祈りながら、
こんな作品を生み出してくれたその功労に、心からの感謝を伝えたい。


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プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾年月。
世界放浪の果てにいまは紐育在住。
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

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