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戒厳令の夜 ~ Walk on the WEST Side

Posted by 高見鈴虫 on 27.2015 ニューヨーク徒然   0 comments   0 trackback



という訳で史上空前の大吹雪である。
夜11時を過ぎて一般車両の通行止めが宣言され、
ニューヨーク・シティは実質的な戒厳令状態。

ガラガラと通りを行き交う除雪車の音に耳を澄ませながら、
ねえ、なんかちょっと止んできたみたい、と覗く窓の外。

とそんな後ろから、ねえねえ、とそわそわと落ち着かないブッチなのである。

でもなあ、と俺。
この猛吹雪で、しかも戒厳令だろ、
とまあそんな事情とは知りながらも、
やはりなにがあったとしても犬の散歩だけは出ない訳にはいかない訳で、
そして、そう、
ここはニューヨークなのだ。
大吹雪であろうが戒厳令であろうが、
何があっても知ったことか、そう、なんでもありの街なのである。

という訳で、うっし、なら出かけるか、と。
実は秋口に買っておいたベースキャンプ仕様の犬用ダウンジャケット。
これまでの暖冬の中、着せる機会もなかったこの特別仕様の一張羅、
さっそく犬に着せては吹雪の夜に出動となった訳なのだが。








大通りからまるで人通りの失せた街並み。
舞い散る雪の中、心細そうに風に揺れる信号の明かりの下には、
普段ならひしめき合っている筈の車が一台もいない、まさに別世界。

積もった雪に足元を取られながら赤信号の大通りの真ん中を斜めに横切り、
走りこんだのはリバーサイドパーク。
歩道も並木も金網のフェンスも、すべて雪に埋もれてまさに広大なる白い平原。
とそんな中、まさかこんな戒厳令の夜に、見渡す限りの犬ばかり、なのである。

うひょひょ~、と飛び上がる我が駄犬。
リーシュを放したが最後、まるで鉄砲玉のように平原の真ん中に向けて一直線。

ぎゃははは、雪だ雪だと無茶苦茶に走り回ってはあの丘からその先まで。

あれれ、見えなくなっちゃった、と思ったとたん、雪煙りを立ち上げながら駆け戻ってきたブッチ。

顔中どころか身体中がまさに雪まみれ。

へっへっへ、と荒い息を弾ませながら、後ろから追いついてきたラブラドールからピットブルやら、
シェパードからハスキーからチワワからポメラニアンから、その後ろから顔だけ覗かせるダックスフンド。
犬種に寄らずもうとんでもないぐらいのはしゃぎよう。
おい、またひとっ走りだ、と再び雪の中にがむしゃらな猛突進を繰り返す。

としたとたん、むぎゅっとなにか踏んだぞ、と思えば、なんと雪の中に埋まった巨大なゴールデンリトリーバー。
自分で雪の中に穴を掘ってはカマクラよろしくその中から鼻の先だけ覗かせていて、
おい、おまえ、まじでこんなところにいたら危ないぞ、と言えども、赤い舌を出してへらへらと笑っているばかり。

とそんな中、いきなり飛びかかってきた黒い塊り。

おおお、チェスじゃねえか。

ブッチの悪がき仲間、ボーダーコリーのチェス。
既に身体中がまさに雪まみれの雪団子状態。
身体中の毛先から耳から髭から眉毛から顎髭から、これでもかとぶら下げた氷粒のつららだらけ。

駆け上ったばかりの丘の上から、おお、チェスだチェスだ、
と見つけたブッチがまたまたとんでもない勢いで駆け戻って来ては、チェスの背中にいきなり飛び蹴り。
わーいわーい、ともんどり打っては再び吹雪の中に猛突進な訳である。

やれやれ、と顔を見合わせる飼い主たち。

あのなあ、戒厳令の夜更けだぜ、とそんな俺たちの後ろから、
へいへい、そこどいて~、とやってきたスキーの隊列、とその後ろからは、
見るからに不穏そうなスノボー野郎たちが、吠え掛かってくる犬たちをものともせず、
やいやい、どいたどいた犬ども、ここは俺たちのシマだぜ、
とざっくざっくと吹雪の丘を伸し歩いていく。

まったくなあ、と思わず。そう、ここはニューヨークなのである。
戒厳令だ?知ったことか。例え何があろうと街中が俺たちの遊び場なのである。

とそんな中、まるで冷蔵庫のような巨大なバックパックを背負った男の二人連れ。
あろうことかそのバックパックからザイルやらピッケルからがぶら下がっている。
救助隊の人たち?まさか、誰の救出?このままエベレストにでも登るつもりなのかしら、
と目を丸くした向こうから、なんと上半身裸の男たちが、頭にかぶったバニーちゃんの耳を揺らしながら、
えっさほいさ、とジョギングをして通り過ぎていく。

という訳で、荒れ狂う吹雪の中、戒厳令の街はまさに犬たちと、
そして悪ふざけに関しては筋金入りのニューヨーカーたちの土壇場。
はしゃぎ過ぎで死人が出ないことを望むばかりである。







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プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾年月。
世界放浪の果てにいまは紐育在住。
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

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