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すわ、愛死すがドッグランを襲撃か!?

Posted by 高見鈴虫 on 11.2015 犬の事情
この糞寒さの中、何が辛いと言って夜の散歩な訳だ。
ダウンジャケットを二枚重ねにして完全防備、なれど、
川沿いにあるドッグランに向かう道、
体感温度、マイナス30℃。
ハドソン川から吹く凍った風が、
これでもか、とまるで叩きつけてくるようで、
衣服に覆われていないところはたちどころに氷りはじめる。

一番辛いのは顔である。

零下30℃の突風がまともにぶちあたるこの顔。
途端に鼻の先から口の周りからがぴりぴりと痺れ始め、
垂れた鼻水がマジで凍りついている。
やっぱ、髭剃らなければよかったかな、
と今になってからでは遅いわけで。

まあ確かに、スピーワックのシュノーケルのフードを最後まで閉めれば、
まさにそれは潜水艦の潜望鏡、完全防備となる訳だが、
そうなると、目の前の穴、コヨーテファーの隙間からしか外部を確認できず、
このつるつるに凍りついた路面、あるいは背後から音も無くかっとんでくる自殺ちゃりんかーたち、
まじで危なすぎる。

という訳で、ちょいとアマゾンで探したスキー用のフェイスマスク。

アトピー肌にも優しいメリノウールのものを探したら、
なんと、大安売りの逸品。
100%メリノウールが5ドル。
頭から首まですっぽりと包む大きな毛糸の袋に、
ポストの口のように目の部分だけ穴の開いた奴。

が、しかし、色が黒なんだよね、まあいいか、安いしな、
とポチッと購入した訳で、
届いたものをさっそく被ってみれば、うーん、暖かい。
そしてこの肌触り。

うっし、完璧、と表に出たわけなのだが、
アパートのロビーの鏡に映ったその姿、
なんかなんか、どこかで見たことあるぞ、
と首を傾げながらドッグランへ向かう道。

すれ違う人たち、その誰もが、まさにぎょっとして俺を振り返る訳で、
下手をすると、唇のタバコを、あるいは手に持ったコーヒーを取り落としてしまう、
なんていう驚愕振りである。

んんん?なんで?俺ってそんなおかしい?とは思いながら、
そう、この世で唯一自分自身の姿が見れないのは自分自身。
知ったことじゃねえや、とそのまま歩を進めれば、

あらまあ、ブッチ、と先に犬に気付いたご近所の犬仲間。
が、俺の姿を見て、おおおお、と大仰天。

なにあんたその格好、と大笑い。

もしかして・・・・ 愛死すの真似?やめなよ、悪趣味すぎ、
だそうだ。

愛死す?俺が?なんで?

と言われて、ほら、と出されたIPHONE、それを鼻先でパシャ、

ほらみて、と見せられたその写真、おおおお、愛死す!

黒いスキーマスクを被ったその姿、まさに愛死す、そのもの。

愛死すが犬の散歩してる、なんてすごくおかしい、と笑われながら、
じゃねえ、と別れたとたん、
角のモスクでの礼拝を終えたイスラム教徒の方々が、
三々五々に川からの坂道を上がってくるのだが、
そのイスラム教徒の方々が、
まさに目を見開いて、じぇじぇじぇじぇじぇじぇっ!

ぬ?いや、違う違う、俺は愛死すじゃないって、と。

やっぱりこれ、失敗だったかな、とは思いながら、
この世で一番寒いリバーサイド・パークの入り口、
普段ならここで、がつんとパンチをくれられるようなあのハドソン川の氷風、
これを完全ブロックのスキーマスク。
うんうん、良い感じ、とドッグランに向かえば、

じぇじぇじぇじぇじぇ、とドッグランの人々。

なんだお前、というよりも、まさに洒落にならないようなパニック状態。

すわ、愛死すがドッグランを襲撃か!?

下手をすれば、逃げ回るような人まで現れて、
やばいな、これ、下手すれば撃たれる、と思いきや、

やっほー、と一斉に集まってきた犬たち。
とたんに前から後ろからじゃれ付いてきては撫でて撫でての大騒ぎ。

それを見た人々、
なあんだ、ブッチパパかあ、と大笑い。

誰かと思ったよ、まじで。

という訳でこの黒いスキーマスク。
凄く暖かいんだけどそんなにやばいかな。

やばいわよ、時が時だし、だそうで。

がしかし、犬はそんなことまったく知らん顔。

愛死すだろうがなんだろうが、とりあえずはじゃれつくなめる飛び掛る。

だからやめろって、と顔を背けながら、
あ、そうか、このスキーマスク、犬の舐め舐め避けにもちょうど良いな、
と、好き放題に舐めさせていれば、

ぬぬぬ、なんか、うんこ臭いぞおお。さては・・・またレミー、うんこ食ったなあ。

うんこ食いの犬に舐められたスキーマスク。
買ったばかりだというのに、もう呼吸のすべてがうんこ臭くてうんこ臭くて・・

駄目だこりゃ、と思った訳なのである。

プロフィール

Author:高見鈴虫
日本を出でること幾年月。
世界放浪の果てにいまは紐育在住。
人種の坩堝で鬩ぎ合う
紐育流民たちの日常を徒然なく綴る
戯言満載のキレギレ散文集

*お断り 
このブログ記事はフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係ありません藁

©終末を疾うに過ぎて...
無断丸々転載・そのまま転写はご勘弁ちょんまげ

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